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勇者が不死身すぎてつらい  作者: kurororon
第1部 勇者が不死身すぎてつらい
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第6話 魔王は魔法を覚えたのか

 人は暇になると何をするか。

 ろくでもないことだっ!!



 いつもの部屋のいつものタタミ八畳のいつものコタツのいつもの3名。俺と魔王はそれぞれ寝転がりながら本を読み、姫様は何やら編み物をしている。そろそろ寒くなって来たし魔王のために何か作っているんだろうなというか既に手編みのセーターみたいな衣類を魔王は着ている。もはや魔王というよ怠け癖の染み着いた若者にしか見えない。


「そういえば……」


 俺はふと気になった。


「魔王様さぁ、最近新しい魔法覚えて無くね?」

「……ふっふっふ」


 魔王が不気味に笑い、本を閉じて起き上がった。

 俺は無視した。


「実はこっそり覚えていたのさ! しかも3つも!」

「そうか」


 俺は本のページをめくる。


「1つ覚える度に自慢すると悪魔さん露骨に面倒くさそうな顔しそうだから、いくつか覚えてから披露するつもりだったんだよね」


 だんだん俺のことが分かってきたようだな。偉いぞ魔王様。


「というわけで、今から自慢するから見ててね!」


 めんどい。起き上がるのすらめんどい。


「どう?」


 まばたきした一瞬で、魔王の顔が俺の眼前に現れていた。


「!!????」


 驚きのあまり跳ね上がる俺。頭部を魔王の顔に強打し腰の辺りをコタツにぶつけ、凄い痛いわ心臓が止まるかと思ったわで悶絶しながら転がった。


「驚きすぎだよ悪魔さん」


 俺の頭が衝突した箇所を手でさすりながら、魔王がにやけた表情で言った。


「なんだよ!? 今のっ!?」


 倒置法。


「これが覚えた魔法の1つ目――超高速化!」

「超高速化?」

「他の人には時を止めて動いたようにしか見えないくらいの超高速で動ける魔法なのさ!!」

「……マジで?」

「うん。ほら」


 次の瞬間、魔王の服装が変わっていた。あとなんか上半身があったかい。

 魔王の着ていたセーターっぽいのを、いつの間にか俺が着ていた。


「マジかよ……」


 さすがに驚いた。姫様も驚いているようで、目をぱちくりしている。


「マジか……」


 驚きが抜け切らない頭で、俺は魔王セーターを脱ぐ。漫画とか映画でしか見たことねぇぞこんな魔法。


「この魔法は凄い強力なんだけど、欠点もあってね」


 俺が返したセーターを着直す魔王。セーターを着ながら時を止める金髪野郎だ。


「まず魔力の消費量が物凄い。それに使っている最中はかなり集中するから疲れるし、他の魔法を一緒に使うのは無理だと思う」

「使う必要ないだろ……」

「魔法が使えないと攻撃力に不安があるんだよね。何か考えておかないと」

「他の欠点は?」

「そうそう。一番の欠点はね」

「欠点は?」

「名前がわからない」

「……は?」

「この魔法、名前がいっぱいありすぎて分からないんだよね。伝説の魔法として色んな魔法書に載ってたんだけど、なんかみんな名前違って」

「はぁ」

「『21の世界』とか『時間歩き』とか『捻じれの時』とか『時数上げ』とか『高速時間』とか『超越駆動』とか『時の道筋』とか『一の王』とか『龍の時札』とか『時間の凍結』とか……」

「いや、言わんでいいから」

「だからなんて名前で呼べばいいのか……」


 どうでもいい欠点だった。


「そういえば他にも魔法覚えてるんだよな」


 このクラスの魔法を他にも覚えたのだとしたら、少し見てみたい。時間を巻き戻したり飛ばしたり加速させたり出来たらすげぇし。平行世界に行ったりするのもいいな。


「そうだよ。3つ覚えた内の2つ目は、その名もエレクトウェーブ!」


 めっちゃ英語っぽい。


「いくよ、えいっ!」


 次の瞬間、俺に電流走る!


「ぐおおおおおおおおおお!!??」


 全身が痺れてタタミに倒れる俺。今日は散々だな!


「この魔法は相手を痺れさせる魔法だよ。痺れた相手は素早さがいつもの4分の1になって、あとたまに行動が失敗する、って魔法書に書いてあった」


 なんだよ素早さ4分の1って。


「だけど地面属性や電気属性には効かないんだって」


 だからなんだよ地面属性って。


「それと痺れを治すには何でも治る薬が良いって」


 そっちの薬の方が便利じゃね!?


「もしくは寝れば治るって」


 極端だな。


「というわけで、悪魔さんお休み」

「ま、待った……」


 身体は重いが言葉は発せた。


「3つ目の魔法でどうにかなったりしないのか……」

「そう言われてみれば最後の1つは今の状況にうってつけの魔法だね」

「頼む……使ってくれ」

「わかったよ。じゃあ行くよ、ダークネ!」


 しかし、なにもおこらなかった!


「……何も起こらないぞ」

「ちょっと足りなかったかな。もう1回、ダークネ!」


 しかし、なにもおこらなかった!


「どんな魔法なんだこれ……」

「でも少し効果は出てるっぽいね。ダークネ! ダークネ! ダークネ!」


 魔王が連続で魔法を唱えると、明らかな変化があった。

 部屋がちょっと、暗くなってる。


「まさかこの魔法、部屋を暗くする……」

「うん。周囲を暗くする魔法なんだけど、連続で使わないと意味ないね。あんまり魔力使わないから問題無いけど」

「何の意味が……」

「勇者たちの視界を奪える便利な魔法だよ! あと眠りやすくなる!」


 つまり……


「じゃあ暗くなった所で、悪魔さんおやすみ! ボクは姫と自分の部屋でイチャイチャするよ!」


 姫様の手を取って、部屋から出て行く魔王。


「待て……おい待てよ……トイレ行きたくなったらどうするんだよ……」


 声は届かなかったらしく、俺は暗くなった部屋に取り残された。



 ……漏らしたらどうしようね。

 

 

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