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13ページ目 エレキテルクリーナー


「ぜえ…………ぜえ…………」


「どしたんだよリネア? 疲れたメイドみたいになってるぞ」


「疲れたメイドなんです!! ったく……はぁ…………はぁ…………な、なんなんですかテメエは……ボケが多すぎて……ぜえ…………ついていけねえです……」


 リネアはツインテールを前後にフワッサフワッサと揺らしながら肩で息をしている。もともと赤かった瞳が更に充血している。


「大丈夫か? かわいそうに……掃除、俺も手伝おっか?」


「見くびるなです!! これぐらいわたし一人でできるです! すう……はあ……すう……はあ……すう……はあ……すう…………よし、いくですよ!!」



 リネアは深呼吸を数度繰り返したあとで、小さな手のひらを前方へ。


 すると、持ち手の部分に小さな雷のマークが打たれた、黄色のモップが出現した。



雷磨(らいま)歩法!! 【石火(せっか)急雷きゅうらい】!!」


 リネアがモップを握りしめると、その小さな体を激しい電撃が容赦なく包み込む。


 数秒間パワーを溜めると、リネアは地面を思い切り蹴飛ばし、まさに目にも止まらぬ速さで移動を始めた。


 首をグリングリン動かして追いかけようとするが、一瞬たりとも、その姿を捕らえることができない。


 だが、ところどころで垣間見える水色っぽい電気の残留が、リネアが今この瞬間も目まぐるしいスピードで動き続けていることを、確かに物語っていた。


 何よりの証拠として、あれだけ頑固なホコリに覆われていた教会の壁も床も机もガラスも何もかも、みるみるうちに輝きを取り戻していく。


 そして俺は、ドヤ顔で目の前に着地したリネアと、久々の対面を果たした。


「すげえ…………」


 喘息人間にとっては地獄よりも地獄だったであろうゴミまみれの建物が、ものの数十秒で結婚式でも催せそうなくらいのきらびやかな教会に姿を変えた。


 思わず溜め息とともに称賛の言葉が出ていた。



「ふふっ…………わたしのあまりの技量に、ボケることすらできなかったですね、天狗さん?」


 バカな俺でも分かる。


 コイツ…………タダ者じゃねぇな。


「わたしの技は『雷磨』。その名の通り、雷の力を全身に宿し、このモップで何もかも掃除しちまうのです。ホコリだろうと移怪だろうと…………ね」


 リネアは得意気にモップを肩に担いで、俺を挑発するような目で見つめてみせた。


「今のが『歩法』か。攻撃や防御よりも、機動面に重点を置くってわけかい。不覚にも感動しちまったよ。ヒメラからは『刃法』と『盾法』しか見せてもらえなかったからな」


「もうその名を口にするなです」



 ぬ?



「今ので確信したです。やっぱりテメエは贄薙ぎの素質がねえです。今のわたしの動きを目で追えないようじゃ、啼雲程度は倒せても、その先には行けねえですよ」


「心配してくれてんのかい? 大丈夫だよ、こっからどんどん強くなっていくから」


「わかんねえヤツですね…………! テメエなんかじゃヒメラ様と一緒に行動するには実力不足だって言ってるですよ!! テメエは何も分かっていねえです。ヒメラ様の強さも美しさも…………恐ろしさも」


 リネアが少しだけ下を向いて呟いた。


「…………んで、結局お前は何が言いてえの?」


「知れたことです! テメエ、わたしと勝負するです! テメエが贄薙ぎとしての才能がないってこと、体に教え込んでやるです!!」



「やだね」



「…………………………へぁい?」



 俺の即レシーブに、リネアはすっとんきょうな声を出して目をまん丸くする。


「何で贄薙ぎと天使で勝負しなくちゃいけないの? 歴史が始まって以来、一番ムダな戦いになるぞ。縄文人も嘲笑するわ。『オホヒッ』って笑うわ」


「ま、まさか断る気ですか!? こういうときは普通『…………上等だ』って刀を出す流れです!!」


「いやいやいや、だから疲れてんだって。さっきまで啼雲と人生初バトルしてたんだから。また新しい移怪が出たってんなら戦うけど、天使とやり合う理由はねえわな」


 それを聞いたリネアは、勝ち誇ったように笑ってみせた。


「はっ! 啼雲と戦っただけで体力に限界がくるなんて、やっぱりテメエは贄薙ぎとしての素質が…………」



「素質素質って言ってるけどさ、俺に贄薙ぎの素質があるって判断したのは、他でもない、お前の大好きなミュカレスさんなんだぞ? それにヒメラだって、俺を自分のパートナーとして認めてくれたんだ。お前は愛する二人の考えを否定するつもりか?」


「うぐっ…………そ、それは…………」


「それに素質があろうがなかろうが、初めて戦闘したあとは疲れるのは当たり前だろ。そっからどんどん強くなっていくのが普通の流れじゃねえの?」


「…………確かにそうですけど、でも…………」


「要するにお前は、ただ俺が……男の俺が、大好きなヒメラといっしょにいることが気にくわないだけだろ?」


「………………ううっ……………」


「そんな何の根拠も説得力もない自分の個人的な感情で、大好きな女たちの考え方をバッサリ切り捨てておいて『わたしは百合です』なんて………………片腹痛いわ小娘!!!」



「ひいっ…………うっ…………うわあああああああああん!! テメエなんかだいっきらいですううううううう!!!」



 リネアは俺の怒声に大きく怯んだのち、噴水のように涙を放出させながら【石火急雷】で教会を飛び出していった。



 ちょっと言い過ぎたかな。涙で感電しなければいいけど……。



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