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はじめに言葉ありき

「まず、現在の法王庁としては、魔女の存在は半分は認め、半分は認めないという立場を取っている」

「ふーん、それって、世間に対しては、あくまでも魔女の術は右脳を使った幻覚や集団ヒステリーの類いである、とかいう説明をしてるって事ね?」


 カーラは私とアンソニーの話を黙って聞いている。自分が出るほどのレベルの内容ではないと判断しているのだろうか。聖職者好みの慎ましい性格である。もし人間の姿であればベールを被り、十字架を首から下げた姿に違いない。


「そして残りの半分は、『人外としての魔女はいない』……合ってる?」

「……だいたいだがな」


 考えてみれば、法王庁も気の毒といえば気の毒な立場ではある。

 人の考え方は時代と共に急速に変化するものだが、教会としてはそれに合わせて教理だの神学だのを簡単に変える訳にはいかないのだ。


 教理も神学も、そして祈りも、その元は『言葉』だ。

 教会は『言葉』によって成り立ち、『言葉』によって動いている。


 『言葉』の意味を変えてしまうという事----ましてや、魔女狩りの過去を否定する事は、すなわち教会の崩壊をすら招いてしまうのだ。

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