法王庁のもくろみ
「それと、メリッサの『調整』は? 完了してるの?」
「この72時間で全てのデータが正常値を示しています。メンタル・バイタル共に異常ありません」
ふむ、悪くはない。
話を聞く限りは。
でも、あの少女は、モルガナのクローンなのだ。
「ただし実戦投入はまだなんでしょ? で、本番で最終調整……?」
カーラが黙ったので、私は少し意地悪過ぎたかと反省する。
いや、AIなのは分かっているのだけれど。
「当初の予測よりも作戦対象の動きが早く、シュミレーションによる訓練を行う事ができませんでした。貴女との順化訓練を優先させるべきという判断を下したのは私です」
私は下唇を噛んだ。
「……つまり時間がない、という事ね?」
「今回は精度よりも早さに重点を置いた作戦です」
モノは言いようである。
「その相手っていうのは、もしかして……」
私の嫌な予感は、だいたい外れない。
どうやら、法王庁は私とメリッサを近々どこかの狂集団に二人で突撃させる気なのだ。
そしてその予想が当たっているならば、その相手は----。
「トゥーレ協会、懐かしいだろ?」
唐突に割り込んで来た声が、私の眉間に立皺を刻ませた。




