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少女の落胆


 夕食を終えたらシャワーを浴びるのだと言うので、私はメリッサを浴室まで連れて行った。


「えー、ここってシャワーないの?」


 石造りの浴槽の前で少女はがっくりと肩を落とす。

「お風呂も好きだけど……これじゃ、なんだかこう……ザ中世って感じ……」

「だって昔からほとんど変わってないからね……あ……なんか、ごめんね……?」


 四百年くらいまえからこの地下の構造はほとんど変わっていないので、少女の感想は全く正しい。

 私がここへ招いた訳ではないけれど、先に住んでいた者として心苦しいのは確かである。


「えっと、その……代わりと言ってはなんだけど、私がお風呂、入れてあげるわよ」


 そんなつもりはなかったのだが、私は腕捲りして宣言していた。

「だからお湯を沸かすの手伝って」

「やった!」


 心ならずも共同作業を行わなければ、この中世で時が止まった空間での生活はままならない。

 これもまた、他人と暮らすという事なのだ。


(調子、狂うな……)


 朝から何度目かもう数えていない溜息を吐いて、私は湯を沸かす準備をするためどこかにあるはずのエプロンを探し始めた。

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