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特別機密事項
「はい。オリジナル体であるモルガナと比較した場合……」
不意に流暢だった声が途切れた。
「申し訳ありません、ここから先は法王庁法典第938条2項及び法王命令第904号により定められた特別機密事項となりますので管理者コードもしくは」
親しみやすさが嘘のように消え、取り付く島も感じさせない冷たい口調に変わった事で、どうやら触れてはいけない部分に触れてしまったようだと気付き、私は対話からの離脱を早々に決める。
「とりあえず分かったわ、ありがとう」
「ご協力ありがとうございます。続けてのご質問がないようですので、アプリケーションを終了いたします」
数秒前の豹変などなかったかのような明るい声でそう言い、AIはタワーのどこかへ帰って行った。
背中に変な汗を掻いている事に気付いたのは、機械室(放棄された法王庁地下のラボや現在稼働しているらしいメリッサの居たラボと混同しそうなので、今後はそう呼ぼうと思う)を出た後だった。
(メリッサがモルガナのネオテニーであるというのは分かった……でも、何かが引っ掛かる……)




