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花弁
メリッサの服は、あのトランクにどうやって入っていたのかと思うほどに大量だった。
簡素なクローゼット二つに吊るされた服は黒を基調にしたものが多いが、フリルやリボンが大量に付いたデザインばかりで、まるで人形の服のようだ。
私の好みではないが、まぁ、悪くはないとは思う。
「アイリスも、そんな地味なワンピースじゃなくてこういう服着たらいいのに」
「……私はこのままでいいわ」
クローゼットの扉を閉める私を、少女はじっと見ている。
「私の事、嫌い?」
「え……っ、どうして?」
突然の質問にたじろいでしまった私の鼻先を掠めるようにして、光り輝く小さな花弁が一枚、飛んだ----ように見えた。
「……っ!」
咄嗟に少女から飛び退った次の瞬間、それは跡形もなく消えた。
(今のは……まさか……?)




