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fragment 4
僕達の住む小さな町を囲むようにして、この森は広がっている。
広大な森は起伏を次第に激しくし、そのまま山脈となる。
古来より国境を守る天然の城塞として多くの詩に謳われている。
大河の水源でもあり、幾つもの鉱脈を抱えたこの森は、僕達の世界を支える存在でもあり、同時に脅かす存在でもあった。
夏はオークやブナの木が生い茂り日中でも暗く、冬は雪に覆われて道などなくなってしまうこの森に好んで入ろうとするのは、猟師か盗賊だけだ。
この町の子供は、歩けるようになる頃には、森には絶対に足を踏み入れてはいけないと、繰り返し言い聞かされる。
森は恐ろしい場所。
森に入れば、狼に食べられるよ。
森で眠れば、亡霊に連れて行かれるよ。
森を抜ける前に、魔女に、魅入られるよ----。




