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佐渡ヶ島から始まる戦国乱世  作者: たらい舟
第八章「代替わり」

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第九十九話 ~インド総督~

四連休\( 'ω')/!


よーし、毎日更新を目指すぞ! (するとは言っていない)

<天文九年(1540年)三月 佐渡国 羽茂郡 小木港 小木迎賓館>



海之進(うみのしん)!!」

「おおっ!! 対馬守(つしまのかみ)様!!」


 実に三年ぶりだ! 長谷川海太郎の嫡男、長谷川海之進! 

 背はかなり伸びた。肌は日と塩に焼かれて真っ黒だ。一瞬別人かと思ったくらいだ!

「はは。今は『出羽守(でわのかみ)』と呼ばれるようになったぞ! 元気そうだな!」

「はっ!」

「……照秋(てるあき)は? 同行していた椎名照秋(しいなてるあき)はどうしておる?」

「それが……」

 何と! 髪が茶色がかった俺の兄貴分、椎名則秋の息子椎名照秋(しいなてるあき)は、リスボンで熱烈な歓迎を受け、更にはポルトガル有力貴族の娘に気に入られてしまったらしい! そのまま来年には結婚も予定しているとか! 国際結婚とは凄いじゃないか!


「xxxxx、xxx」

「xxx! xxxx、xxxxx!!」


 俺が感動の再会を喜んでいると、高級そうな提督服を着た物腰柔らかそうな男と、それに負けないくらい立派な服を着た目つきの鋭い男がこちらを睨んできた。小木の外交の一切を取り仕切らせているヴォルフハルトがペコペコと頭を下げている。どうやらかなり地位が高い人物らしい。


「シツレイしました。でわのかみさま。こちらはポルトガルのインドそうとくのユヅキさま。そしてこちらがインドそうかんのジャムカさまです」


 『インド総督』!?

 間違えが無ければ、ポルトガルが有する最重要海外拠点インドを任されている大人物じゃないか! そして総監と言えば人員を統率・監督する実質No.2だ。ポルトガルはそんなに日ノ本を重要視しているのか!?


「xxxx、xxxxx、xxxx」


 笑顔と一切無駄のない動きで俺に手を差し伸べた男。これが総督のユヅキか。


「xxx! xx!!」


 対して、高圧的な態度と口調で握手もしないのがジャムカ総監。


「ひさしぶり、しょうせんさま」

「おお! レイリッタ!!」


 一方、こちらは友好的な態度のレイリッタだ。「スレイプニール号」の女船長。無事リスボンまで行って戻ってきたんだな。互いに大きな利となる交易ができそうだ。


「xxx! xxxxx、xxxxx! xxxx!」

「xxx …… xxxx ‥‥…」

「xxxxxx…… 」


 ジャムカが横柄な態度でヴォルフに詰め寄っている。それを「できません!」とヴォルフとレイリッタは必死に止めているような感じだ。


「構わぬ、そのまま伝えよ」


 オブラートに包もうと、必死に取り繕っていたようだ。だが、とりあえずは聞かせてもらおうか。


「……ワカリマシタ」

 ヴォルフは消え入るような声で俺に伝えてきた。とんでもない話だった。


「『佐渡の南ハンブンを、われらポルトガルにゆずれ。そして、どれい二百メイをさしだせ。ハナシはそれからだ。』とイッテイマス……」


 ……

 …… 


 はぁ゛!?


 これはひどい。 

 最初に高い要求を言い、その後本当の要求を伝えるという「ドア・イン・ザ・フェイス」の手法にしても、明らかにやりすぎだ。

 

「伝えろ。我らは『互いの友好を目的としている』のであって、『従属した』のではない。『よき友人』となりたいのであって、『命の取り合い』をしたいのではない、と」


 ポルトガルに恨み辛みは一切ないが、その条件を取り下げないのであれば国交断絶も辞さない。日ノ本の土地は一寸たりとも譲るつもりはない。文化交流の為に人を出すのは構わないが、奴隷に出す者は一人とていやしない。


 ヴォルフが必死に俺の言葉を二名に伝えている。するとジャムカは、両手を鳩のように上向きに上げた。何が「お手上げ」だ! 


 結局、妥協点すら見出せぬまま初日が終わった。重キャラック七隻の武力を誇示して、一方的な不平等な条約を結ぶつもりか? 

 何だ、ポルトガル?! こんなに高圧的に出られたらこっちにも考えがあるぞ?!



____________



<天文九年(1540年)三月 佐渡国 羽茂郡 小木港 小木迎賓館>



 バンッ!


「あ奴ら等! 佐渡を! 日ノ本を何だと思うておるのだ!」

 則秋が床を叩いた! 木板が割れんばかりの勢いだった。


「海之進。ポルトガル船団の奴らは船上でもああだったのか?」

「……某はレイリッタ殿の船に居りましたので内情については全く分からずでした。面目ありませぬ……」

「値を吊り上げる作戦かもしれませぬが、明らかに高圧的な態度で御座いました。取引を持ち掛けると、大砲一門を三千貫文(三億円)と吹っ掛けられました。これまでの相場の十倍以上で御座います。とても妥協はできませぬ」

 財政に明るい新発田収蔵(しばたしゅうぞう)は感情を交えずに、事実と感想のみを俺に伝えた。同感だ。


「しょうせん。ヨーロッパの人のおおくは、ああいう考え方をもっているのよ」

「本当か? ナーシャ」

「ウン」


 珍しくナーシャが「絶対連れてって!」と無理を言ってついて来た。


「レイリッタ様のような方が特別でございます。『ゲルマン人こそが正しい』『ローマ人こそが優れている』と、思っているからこそかの地は争いは絶えないのでございます」

 すっかり流暢な日本語を嗜むターニャも同意した。そうか……


 甘かった。そう易々と海外の利を引き入れることは難しいのか。

 最初のダーノ氏との会談がうまく行き過ぎて勘違いしていた。向こうはこちらを「東夷(とうい)奴婢(ぬひ)」くらいにしか思っていないのかもしれん。


 ……だが待てよ?


「明らかに変だ」

「えっ?」


 ナーシャが俺の顔を見上げた。


「ヴォルフ、収蔵、ポルトガル船団の船についてだが・・・?」




<天文九年(1540年)三月 佐渡国 羽茂郡 小木港 ポルトガル重キャラック旗艦 船長室>



「ユヅキ、あれで良かったのか?」

「多少は()()()芝居だったが、まあいいんじゃないかい?」

「ユヅキ様、ジャムカ様。あの者達は我らに好意的な、話の通じる日ノ本人です。どうか態度の軟化を要請いたします」


 ランプの光に照らされながら、重キャラック艦隊旗艦の船長室ではインド交易グループの三頭会議が行われていた。態度の軟化を要請するレイリッタの言葉に、インド総督のユヅキはワイングラスを片手にほんのり笑って答えた。


「レイリッタ、君が国王様から『日ノ本特務大使』に任ぜられているのは知っているよ。でも、現地人の感情を優先させていないかい?」

「……ハモチ・ホンマ・ショウセンは子どもながらに傑物です。必ずや我らポルトガルとの相互利益をもたらすと確信しております」

「『相互利益』…… 違うよ。我ら『ポルトガルの利益』が最優先だよ」


 ポルト産の極上ワインを優美に喉に流し込むと、インド総督ユヅキは引き続き穏やかな口調で話を続けた。


「我らポルトガルが世界を統べる。インドも、香料諸島も、新大陸(南米)東岸も。そしてこの日ノ本も。それが世界的に見て正しいことなんだ。海洋後進国のイスパニアやイングランド、ネーデルラントなんかに後れを取る訳にはいかないよ」

「武力で押して折れる相手であれば簡単だ、交渉は有利に運ぶ。明日の会談次第だな」


 ユヅキ、ジャムカは国益を何より優先している。私も以前はそうだった。祖国ポルトガルの為に尽くす、それこそが人生の理由だった。だが・・・


「ショウセンは大きな力を持っています。ガラス玉に興味を持たず、我らに言われる前にリスボンのことを知っておりました。知識量はお二人の想像を遥かに凌駕いたします。『虎の子を小さいと見て猫と侮るな』という喩えもあります」


「そうかな? こちらだって明から情報を仕入れているんだよ」

 ユヅキはそう言うと、情報をまとめたメモを取り出した。


「あのハモチ・コンマ・ショウセンは小さな『サド』の国しか治めていないはずだ。言うなればマデイラ諸島を治めている地方領主の一人とそう違いはないよ。一番大きな都市は『キョウ』で、『アシカガ』という将軍が中心。そしてこの日ノ本国は『皇帝』が治めているんだろ? なら、あんな少年に大きな力がある訳はないよ」

「補給は厳しい。それに船員は既定の半分以下だ。正直、戦闘はしたくない。だが、一度我らの町を築いてしまえば、キリスト教を土台にしてここを足掛かりに、日ノ本を攻め取ることができるやもしれんぞ?」

「我らの力を見せつけ、そして『我らの支配下に入れば、より勢力を大きくすることができる』と甘く(ささや)く。そうすればあんな子ども、すぐに騙されるさ。こんな文化程度の低い国なんて……」


 全く話にならない。二人は日ノ本のことを低く見過ぎている!


ドンッ!


「この国は、戦乱の最中にあります! 一人ひとりが最上級の恐るべき兵士です。彼らは名誉の為ならば命を捨てることを(いと)いません。この国を軽んずることはできません。融和を図り、互いの利を目指すべきです!」


 レイリッタは木製の机を叩き、これまでになく強い口調で二人に告げた。日ノ本に対することであれば私の方に決定権がある! 珍しく強気なレイリッタの態度に、ジャムカは「お手上げ」という様子で両手を上にかざし、ユヅキはワイングラスを静かに置いた。


「とにかく、高圧的な態度で威圧することに私は断固として反対です! 行き詰まった時は私の『合図』で、主導権を譲っていただきます! 日ノ本の者との融和が最優先です!」

「分かったよ。状況に応じては、明日は君に一任することにしよう」

 肩を(すく)めて恭順の態度を表したユヅキ。主導権争いには大きく譲歩した。だが、微笑みを絶やさない。次の瞬間には瞳を蒼玉(サファイア)のように鋭く青白く光らせた。


「そういえば、ショウセン少年の傍らには美しい娘がいたね。あれが君の言っていた『モスクワ大公国の娘』かい?」

「そうです。アナスタシア・ロマナヴナと言ったはずです」

「おお! やっぱりかい。実はね……」



幕間「四」

第九十二話 ~西方見聞録「序」~

第九十三話 ~西方見聞録「到」~

 その後の話となります。


 ポルトガルの歴史の中には、決して綺麗ごとでは済まないことが多くあります。

1510年  ゴアを征服。

1511年  アルブケルケがマラッカを征服。ポルトガル人がモルッカ諸島に入植。

1515年  アルブケルケがホルムズ王国を征服。


などなど。武力による征服は度々ありました。


 イスパニアとは、1494年6月7日に「トルデシリャス条約」を制定し、ポルトガルは大手を振ってインドや東アジアに勢力圏を伸ばしました。一方イスパニアはカリブ海やインカ帝国の侵攻を進めることができました。1533年にはフランシスコ・ピサロの攻撃によりインカ帝国が滅亡しています。


 ですが、マゼラン艦隊の生き残りのフアン・セバスティアン・エルカーノが世界一周航海を果たして「地球が丸い」と証明された後、「世界を分ける線が一本では意味がない」と気づいた両国は、1529年に「サラゴサ条約」を制定しました。

 これによれば、香料諸島辺りまではポルトガルのものです。日本は西がポルトガル、東がイスパニアの勢力範囲になります。ですが厳密ではなく、フィリピンはポルトガルの勢力範囲に入っていたのですが、イスパニアに優先権を譲っています。香料がないことを知ったポルトガルが譲ったという説もあります。イスパニアは1542年にマニラを植民地化しようとして失敗。ですが1565年には成功させています。


 世界の覇権を目指す両国に取って、現地民は実入りの良い収奪対象だったのかもしれません。ですが、うまくいかなかったことも多いようです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 佐渡に来島した二人の人物は相当な大物みたいだが、態度はやはり高圧的で照詮達を見下しているようで・・・。 それにナーシャの事を知っているみたいだ・・・。 どうにも不吉な予感が・・・(;゜Д…
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