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佐渡ヶ島から始まる戦国乱世  作者: たらい舟
「目覚め」

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第八話 ~虎千代~

 俺を叩いた美少年は、見習い僧の格好をしているが意志の強そうな眉と瞳、才気ばった面立ちをしていた。いくらちょっと年下に見えても叩くことはないだろうに、と少し不満に思った俺。


「何をするんだ」

「無様に倒れ込んでおるから、喝を入れたまでよ。戦場では一時の失態が死を招く。お主の性根を据えてやったまでよ」

 足が痺れて、というのは確かに言い訳だな。悔しいが油断していたと言われれば言い返すことはできない。ぐぬぬ。


 そこへ、

「馬鹿者!」


 バシ!


 天室光育(てんしつこういく)からその少年へ警策(きょうさく)が飛んだ。


「何をする!」

 批難めいた言葉を口にする少年。すると、


「不心得者!! 他者を咎めるなど、十年早いわ! お主、今日も座禅の途中に気を緩めておってからに! この小僧など二刻(4時間)も微動だにせなんだ! お主は集中する胆力が備わっておらん!」

「ええ、それはただ寝てただけじゃ・・・?」

 

 バシッ!


「それすらも判断できんほど耄碌(もうろく)はしておらん! 明日から、さらに修行を重くすることにするぞい!」

「えぇ~、あんまりだぞ、和尚」


 あっけに取られる俺の前で、急に繰り広げられた二人のやり取り。

 厳しいことを言っているが、天室光育から少年へは、育てようとする熱意と慈愛のような優しさがあることを感じ、微笑ましく思ってしまった。


 少年は俺を見て叫んだ。

「そんなに言うなら、この小僧と俺を、勝負させろよ!」


 なぬ!?


「打ち込みでも、力勝負でもいいぞ!」


 へへん、と鼻を高げる少年。よほど自信があるのだろう。7~8歳くらいの少年らしく未だに力強さはこれからのように見えるが、一瞬の動き、俊敏さ、技量は確かに同年代を遥かに凌ぎそうだ。俺は村で自主トレならぬ筋トレと自己流の素振りなどを行っていたが、とても勝ち目はなさそうだ。


 俺が難色を示していると、少年はさらに、

「ならば、『城郭落(じょうかくお)とし』でもいいぞ!」

と続けた。なんじゃらほい? 城郭落(じょうかくお)とし?


 興味を示した俺の様子を察して、少年は「ついてこい」と言って別室に俺を連れていこうとする。

和尚は、「仕方ない奴よのう」とおでこを片手で押さえ、環塵(かんじん)叔父は「面白そうじゃのう」と無精ひげをさすっている。あれよあれよという間に、俺と他2名は別室に連れて行かれた。



 その部屋は、さきほどと同じような間取りだったが、ただ一点、違う所があった。それは、部屋の真ん中に位置する、一間四方(約1.8m四方)の精巧なジオラマだった。越後のどこかの地域だろうか? 山や川、平地が見られる。 

 さらに、山の頂上には天守閣がそびえ、曲輪や門が見える。これは城だな。

 盤外には、兵を表すような駒がいくつも丁寧に並べられている。


 少年は得意気に俺に説明した。

「これは城、そしてこの駒が兵。この城郭模型を使って、『攻め手』と『守り手」に分かれて戦をする。それが『城郭落とし』じゃ!」

 要は、攻城戦のシミュレーションゲームか。ほほう……


「守り手は500名、攻め手は三倍の1500名。互いに兵をどこに配置するか決める。期日は3日。朝・昼・夕・夜にどう動かすか決めて行動するのじゃ」


 攻め手は正門か裏門、もしくは門以外の崖でバランスを決めて攻める。

 守り手なら正門や裏門を中心に、寡兵をどううまく使うかがポイントだな。


「兵の配置や行動は、行司役に伝える。相手の言動を見てから行動するのはできんからな。兵の士気や兵がどれだけ失われたかは行司役を含めて3人で決めるのじゃ」


 なるほどなるほど。


「どうじゃ? やってみるか? 言っておくが俺は同年代には負けたことがない。強いぞ?」


 自信ありありの少年。運動神経も良いし、頭の回転も早そうだ。確かに同年代では歯が立たないだろう・…… しかし!


「OK、やるよ」

「…… ん? おうけい?」

「あ、いや、大丈夫。やるよ」


 俺は受けた。相手の懐に飛び込む、いや、そういうんじゃない。


 俺はこの手のゲームが大好きなのだ! ゲーム世代を舐めるなよ! 

 信〇の野望は17ヶ国版からやってきた。三〇志、水〇伝、チンギ〇ハン、大航〇時代、提〇の決断、太〇立志伝など某社のゲームは穴が開くほどやってきた。他にも大〇略、Ag〇of〇mpire、伝〇のオウ〇バトル、カル〇ージ・〇ート、ファイ〇ー〇ムブレムなどなど、戦略シミュレーション的なゲームは網羅してきた。

 将棋、麻雀、ボードゲームならモノ○リーやカタ○の開拓者、カードならトランプ、M○G、対PCだろうが対人だろうが大規模MMOだろうが、論理的思考力を駆使して撃ち破ってきた! どれだけ戦国時代の英才であろうと子どもに負ける可能性などありはしない!



「ぼこぼこにして泣き面見せてやるよ!」

 と少年は俺にそう言い放った。審判役は天室光育和尚だ。


 攻め手と守り手は、(くじ)を引いて決める。

 少年は「攻」の籤を引いた。少年が「攻め手」で俺が「守り手」だ。


 早々に戦略を決めた少年は、和尚に兵の配置と行動を伝えた。そして自信満々の様子でどっしりと座った。

 …… 少年という年齢、自信満々、同年代に負けたことがない。年下に見える俺への見下しぶり。少年の性格、和尚に伝えるスピードなどを考慮すると……

 俺は、少年の傾向を分析して考えた守り手の兵の配置と行動を和尚に伝えた。


「一日目、朝」

 和尚が言うと、互いにジオラマに駒を配置する。

「な、なんだと!?」

 少年が驚く。俺はニヤリと笑う。想像通りだ。


 少年の兵は全軍1500名が裏手門に位置されていた。裏手を総攻撃して一気に城内に飛び込む狙いだったろう?

 俺の兵は裏手門に450、表門に50。指示は裏手門を絶対死守だ。


「行動開始。攻め手は裏手門を全軍攻撃。守り手は正門を防衛、裏手門を絶対死守」

 和尚が告げる。

 裏手門への道は狭く、攻め手の兵は大勢では通りにくい。守り手の数が少なかろうと各個撃破できる。絶対死守であれば攻め手は大きな打撃を受けるはずだ。

「結果は、そうじゃのう。攻め手は兵を800失う。守り手は50失う。門は破られず、といった所じゃな」

「なっ、減りすぎじゃぞ!」

 少年は抗議するが、

「何を言うか。攻めにくい裏手門を全軍で押しても一気に攻め込める数は僅か。これくらいは失うわ」

「くっ……」

 まだ何か言いたそうな少年だったが、地頭が利発なため、妥当な結果と判断して受け入れた。


「まだ終わりではないぞ!」

 少年はぐっと俺を見ると、昼の兵の配置と行動を和尚に伝えた。既に兵は1500vs500から700vs450まで縮んでいる。まだ兵が優利なところで一気呵成に攻め込んでくると見た。俺は昼の兵の配置と行動を和尚に告げた。


「一日目、昼。攻め手は正門に700名で全軍攻撃。守り手は表門を400名で絶対死守。裏手門を50名で絶対死守」

「うぐぐっ!」

 少年の顔が歪む。

「結果は、攻め手の兵の損失500名、守り手の損失100名。門は破られずじゃ」

「くそっっ!」

 場所を変えての全軍突撃2連続。まだまだ甘いな。


 一日目の朝と昼が終わった時点で、攻め手200名、守り手300名と逆転した。もうこうなればどうということはない。正門に半分、裏手門に半分、その他の崖を50名で守れば完勝だ。

 少年は1日目の夜に崖から50名、2日目の夕に全軍突撃で裏手門を攻めてきたが、備えは万全。勝負はあった。


「何たる不覚!」

 少年は憤って床を殴った。痛そうだ。目には悔しさと痛みで涙が滲んでいる。典型的な負けず嫌いだな。

「ほほ、天狗が鼻を折られていい薬じゃわい」

 和尚は愉快そうに髭を撫でている。環塵叔父はいつもながらに無精ひげをいじっているが、細い目を少しばかり見開き、無言で考えているようだった。


「年下に、しかも初めて『城郭落とし』をやる者に後れを取るとは…… お主、名前は!?」

「俺か。俺は本間照詮だ。佐渡の羽茂郡で村主をやっておる」

「本間照詮だな。お主の名前、しかと覚えておくぞ! 次は負けんぞ!」

 指を突きつけられ、リターンマッチを要求された。でも、今日は遅いし夕飯もまだだし今度な。


「ワシの名は虎千代(とらちよ)。春日山城主、長尾為景(ながおためかげ)の四男じゃ。故あって林泉寺におるが、このままでは終わらんぞ。戦国の世に名を馳せる立派な将となるのじゃ!」


 わお、城主様の息子様だったのか。ファンタジーで言えば王子様だな。でも何で王子様が寺なんかにいるんだろう? まあ事情は色々あるのかな。


「虎千代様か。俺も覚えておくぞ。また『城郭落とし』やりましょうぞ」

 それを聞くと、涙を拭きつつ虎千代は不敵な笑みを浮かべた。絶対勝つまでやる性格だな、これは。しつこそうだな。


「いい戦いじゃったな。じゃが、これは遊戯。本当の戦となれば多くの者の生命が土へと還る。その者達の後ろにある者達の人生も変わってしまうのじゃ。よいか、努々(ゆめゆめ)忘れるでないぞ」

 和尚は諭すように俺達に言った。


「はっ」

 俺と虎千代は神妙に頷いた。


「さ、夕飯にいたそう。照詮と環塵も食べていくがよい。ただ、律を乱すでないぞ」

 曹洞宗のご飯は豪華では絶対にない。そして礼儀作法にメチャクチャ厳しい。失敗すればまた警策(きょうさく)が飛んでくる。

 俺は「越後屋の屋敷に行けばご馳走が頂けるのになぁ」と心のどこかで思いつつも、この「人の輪」を大事にしたいと思い、和尚と虎千代の後を叔父と追うのであった。

『城郭落とし』は実際にあったエピソードを元に書いてみました。

軍人将棋みたいな感じがしますね(*'ω'*) 


城落としは、3倍から10倍の兵力がないと成功しないと言われています。それ以上の兵力差があっても、失敗した史実も残っています。

有名なのは、真田昌幸と真田信繁(幸村)率いる2,500~3,000くらいの兵が、徳川秀忠が指揮を執る38,000の兵を退けた「第二次上田合戦」とか、鎌倉末期に楠木正成が500の兵で30万(これは盛りすぎで、10,000くらい?)の兵を退けた「赤坂城の戦い」などがありますね。


攻城戦とか野戦とかを書きたいと思っていますが、物語的にまだまだ先になりそう(*´Д`*)

下調べもかなり必要ですが、頑張りたいと思っております。


戦略SLGは大好きです(*'▽')!

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― 新着の感想 ―
[一言] え、この少年ってもしかして上杉謙信?(長尾景虎→上杉輝虎→上杉謙信)←名前の移り変わり
[良い点] 佐渡島に主人公を置く話はあまり見たことないので新鮮で楽しみです。 [気になる点] ノブヤボやってて為景も長尾も本間も知らないってのは、いくらなんでも無理があるのでは?スーファミ時代は分かり…
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