第六十五話 ~破滅を告げる葬送曲~
連休中に9本書いていました(*'ω'*)!
字数が約6000+6000+5000+2500+5000+1300+2700+2000+2500で、約3万3千文字!
感想も評価もたくさんいただけたし、楽しく書けました(*´ω`)ありがとうございました!!
もうちょいテンポよく読んでもらえるように工夫していきます。
<佐渡国 雑太郡 雑太城 城内>
「糞っ! どうなっておるのじゃ!?」
「防げ! 防ぐのじゃ! 一揆勢が城に入れば、我らは終わりぞ!」
先月から、やけに一揆勢の動きが鋭くなった。
人も増えたように思われる。鎮圧に向かった手勢が返り討ちに遭うことが増えてきた。
隆盛を誇った河原田本間佐渡守貞兼が羽茂本間との静平の戦で腹を斬り、これで雑太の威光が戻ってくると思っていた者も多い。しかし、そんなことは一切なかった。
取り締まれば取り締まるほど、佐渡中央に位置する国仲平野の一揆勢は勢いを増した。火に薪をくべるが如く、燃え上がった炎は天にまで達しようとしていた。
「ええい! 何をしておる! 弓を射かけよ! 石を投げよ! 一揆勢を城に入れるな!!」
傷だらけの一向宗討伐奉行仲居義徳は、怒りの炎に身を焦がしていた。弟を殺した憎き一向宗が、いつまで経っても死に絶えないことに。その一向宗が、城にまで押し寄せてきたことに。城の中の者共の不甲斐ない戦いに。そして、このままでは城内に侵入されることが近いことに。それぞれが許せなかった。怒りが憤慨に変わっていた。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」
外からは呪詛のような念仏が聞こえてくる。一人二人ではない、何十、何百という数だ。まるで、自分がこれまで殺してきた者達からの、地獄への誘いの言葉のようであった。
「ええい! 煩い! 消え失せろ! 念仏を唱える奴を皆殺しにしろ!」
半狂乱になって義徳が叫んだ、その時だった!
ドーーーーーーーーーーーーーーーーン!!
雷が落ちたような音が雑太郡に響き渡った。
晴天の中の落雷? 殿が懇意にしている青い衣を着た呪い師が、「晴天の落雷は、『凶兆』」などと言っておったが・・・もしや!?
次の瞬間、
ドガアアアン! ガガガッ! ガラガラガラッ!!
・・・強固な城門に一瞬にして穴が開き、そして一気に崩れ落ちていった!
雑太本間氏にとって、絶望的な瞬間だった。
「南無阿弥陀仏! 南無阿弥陀仏!!」
死を厭わない、ボロを着た一向宗が城門に殺到してきた! 手には槍や刀を持っている。ギラギラと光る刃。しかし、それ以上に一揆勢の者達は目を光らせた。待ちに待った瞬間がやってきたのだ。
「ふ、ふせげ!! 入れるな! 一人として・・・」
絶叫した義徳。しかし、無駄だった。
数人がかりで岩山のように塞いだ門が、相手方の勢いに押され、一寸、また一寸と下がっていった。そして・・・ ついに、一人の男が入り込んでしまった!
「くっ! この狼藉者めっ! 死ねぇぇ!」
バスッッ!!!
義徳の刀が、飛び込んできた男の身体に食い込んだ。鮮血が迸る。死は免れなかろう。
しかし、その男は至上の笑顔を見せていた。
トスッ
弱弱しくも、槍の穂先が義徳の太股に突き刺さっていた。義徳の足から、僅かに血が滲む。
「南無阿弥陀、仏・・・ 南無、阿弥陀仏・・・!」
更に男は、逃れられぬ死を前にして自らの槍を離し、両手で義徳の刀を抑え込んだ。白刃を掴んだ両手は血に塗れた。しかし、尚も離さない! 死出の土産として持ち帰るが如く、岩に挟まれたが如く、意地でも挟んで離さない!
「クッ! 離せ! 離さぬか!」
「・・・陀仏・・・南無、阿弥・・・」
死を恐れぬ者の力に、義徳は気圧された。周りを見れば、既に十名ほどの一揆勢が城に入り込み、多くの死者を出しながらも一人、また一人と雑太本間の武者達を殺していた。
もう駄目じゃ。ここは持たぬ!
義徳は刀を諦めた。柄から手を離し、身を翻すと、領主の元へと一目散に駆けだした。一揆勢がそれを追いかける、死を賭けた徒競走となった。しかし、その先に逃げ場はない・・・
義徳に殺されながらも、刀を決して離さなかった一人の男。
その顔は、極楽浄土に辿り着いたが如く、満足感に満ち溢れた死に顔だった・・・
「南無阿弥陀仏・・・南無阿弥陀仏・・・」
繰り返し流れるその経は、雑太本間の破滅を告げる葬送曲に似た調べを奏でていた。
少なくとも、俺にはそう聴こえた。
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<佐渡国 雑太郡 雑太城 評定の間>
「殿!!」
死に物狂いで、仲居義徳は逃げてきた。数人の一揆勢が追いすがってきたが、最後の武器の脇差や徒手でそれを振り払った。もう武器は残されていない。が、何とか城主が待つはずの評定の間へと辿り着いた。
「殿! 殿・・・!?」
そこは、既に死臭が漂っていた。
白装束を着た城主、佐渡国国主雑太本間佐渡守泰時。腹を斬り、既に介錯をされて首と胴が離れていた。同様な死体が数体。首は見当たらない。すると、奥から、
パチパチ・・・バチバチ・・・
と音がした。何者かが館に火を放ったようだ。何ということを! 消そうとして奥の間へ飛び込んだ。
そこでは・・・女と子どもの死骸が待っていた。
奥方や御子も、自刃されていたのだ。何ということだ! 雑太本間の血筋は完全に断たれてしまった!
「糞ッ! 糞ッ! こんな非道が、許されてなるものか!!」
「非道? ・・・お前が言うか?」
膝をついて落胆していた義徳の後ろから、声をかけた者がいた。
「だ、誰だ!?」
後ろを振り返る。すると、幽鬼のような顔をした人物が・・・
子ども?
「仲居義徳・・・ 会いたかったぞ。気分はどうだ?」
「ぬ・・・? お主なぞ知ら・・・ !?」
ぬ、と言いかけて止まった。見覚えがある。ま、まさか!?




