第六十四話 ~「名」と「実」~
外出自粛中のGWということで、筆をたくさん進めてきました。
皆さんの娯楽の一つとなれば幸いです。
<佐渡国 羽茂郡 羽茂城 城主寝所>
泥のように眠った。気付いたら朝だった。
二つの戦を終えて疲れ切った身体を、ナーシャが作った羽布団が癒してくれた。
労働力再生産だ。いい仕事をするためには、いい休息。いい休息には、いい寝具が必要だな。
低反発まくらとか、スプリングの利いたマットレスとかがあればさらにいいんだが。流石に作り方は分からない。
「はぁ~ よく寝た」
気分一新だ。
今日は、朝廷への寄進の道筋をつけねばならんな。
まだ時間はあるし、本読みしてから行こう。
軍記物とか、経本とか、なぞなぞ本とか、和歌集とか。
ふむふむ・・・
「雪は、下より溶けて、水の上に添う。これいかに?」
ん~?
「ゆき」の下が溶けて、「みず」の上・・・
「ゆき」の「き」と、「みず」の「ず」を取れば・・・
「ゆ」と「み」で、「弓」か。なるほどなぁ~
次は和歌か。
「百敷や 古き軒端の しのぶにも
なほあまりある 昔なりけり 順徳院」
あー百人一首で見たことあるわ。
順徳院って、佐渡に流された順徳天皇のことよね。
この時代は、言葉遊びや和歌が立派な教養なんだなぁ。
などとゆっくりしていたら、あっという間に評定の時間となってしまった。
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<佐渡国 羽茂郡 羽茂城 評定の間>
「あ・・・れ?」
何か、環塵叔父と妙恵おばさんの距離がやけに近い。
寄り添うっていうよりは、ベッタリって感じだ。まさか・・・?
「ま、まぁ、そういうことだっちゃ」
「悩む私の相談に乗っていただき、とても頼れる御方と思っておりました」
そうか、一緒にいるうちに、何となく惹かれていたんだな。
「戦に出られて、皆様のご無事を祈っておりました。その時に、私の中で環塵様の存在が大きかったことに気が付きました。主様・・・よろしいでしょうか?」
「いいも悪いも。目出度いことじゃないか。嬉しいぞ!」
「は、はは」
どちらも俺の父代わり、母代わりの存在だ。一緒になってくれるなんて、こんなに嬉しいことはない。鼻の下を伸ばす環塵叔父。
・・・しかし、こんな人柄が良い美人を奥さんにできるなんて・・・うらやまけしからん!!
ちょっと意地悪したくなった。いや、意地悪じゃなくても、環塵叔父しかいないんだけどな。
「環塵叔父。目出度い話の後なんじゃが、ちと頼まれて欲しいことがある」
「ん? なんじゃろ?」
「朝廷への寄進・・・環塵叔父が中心となって、行ってきてほしい」
「ええ!? それは、まずいっちゃ!」
驚き慌てる環塵叔父。いや、京都に行って学んできたことあるんでしょ?
「俺はこれから雑太との戦を控えていて、長期は離れられん。かと言って、滅多な者にはこの大役は任せられん。叔父は俺の数少ない親戚じゃし、羽茂本間の実質的な筆頭家老じゃ。献金の砂金もかなりの額になる。これ以上相応しい者はおらん。頼む」
「そうか・・・仕方ないのう」
「収蔵! 直宗! 環塵叔父に同行せよ! 佐渡の澄み酒、石鹸、ビール、羽布団、塩、干し鮑のお墨付きをもらってこい!」
「「ははっ!」」
朝廷への工作だ。貧窮する朝廷を助ける、という名目で寄進することの見返りでもらえる、『お墨付き』ってのは大きい。人は昔から、権威ってのに弱い。俺は屁とも思ってはおらんが、周りの者が有難がるのであれば、利用しないこともない。
財務担当の新発田収蔵、賢い赤塚直宗は京へ向かわせるのにぴったりだ。将軍家や堺の商人達にもアピールしてくると共に、人脈作りや販路開拓、都のやり方などを吸収してきてほしい。
「だが、知仁・・・ いや、帝は、あからさまな献金は嫌うっちゃ」
「えっ? そうなんだ?」
意外だ。為景がうまくやってたから、バシバシ受け取ってると思ってた。
「土佐国の一条房冬や、周防国の大内義隆の、官位目当ての献金を断ったっちゃ。まあ、貧乏な公家共の為に受け取ったと聞いちょるが。まぁ、うまくいけば『佐渡守』の武家官位がもらえるっちゃ。行ってくるっちゃ」
「うむ。頼んだぞ!」
大事のためには、清濁併せ飲まねばならん。『名』も大事な工作の一つだ。
環塵叔父、新発田収蔵、赤塚直宗は早速、京への旅の準備をするために退席した。
佐渡の小木港から、若狭湾の小浜港までの船旅かな。無事に到着することを祈ろう。
そして、これからは『実』だ。
「では! 雑太本間の攻略についての軍議を始める!」
後奈良天皇については、wiki様より抜粋。
献金を断る清廉潔白な人柄だったようです。ですが、当時は貧窮していた朝廷。後奈良天皇自身も宸翰(天皇の直筆)の「般若心経」などを書いて収入の足しにしていたそうです。今でいうアイドルのサインとか生写真とかですかね? 格式ある風流人の書ですから、工芸品的な要素も高かったでしょうね。
「佐渡守」と「お墨付き」をもらいに朝廷への工作出発。
あとは雑太氏攻略です。
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