表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
佐渡ヶ島から始まる戦国乱世  作者: たらい舟
「轟襲滅進」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/254

第六十一話 ~静平の戦い「一」 凸凹~

<佐渡国 羽茂郡 西三川城>




~三分一原の戦いと同日~



領主羽茂本間照詮と、守将椎名則秋の命を受けた四名、久保田仲馬(ちゅうま)赤塚直宗(あかつかなおむね)水越(みずこし)宗勝(むねかつ)、ヴォルフハルトは、百数十名の手勢と共に西三川城で待ち構えていた。


「本当に来るかのう? 河原田本間は?」

「黒蜘蛛の手の者が知らせに参った。半時(1時間)以内には見えてくるはずで御座る」

「デミカルバリンほう、じゅんびできてマス」


現在、羽茂城は家老の椎名則秋が、僅かな手勢十数名のみで守っている。

それ以外のほぼ全ての戦力が、ここ西三川の城へ集められていた。


「『二日間。二日間だけ耐えてくれ』と言われちょる。『でみかるばりんほう』を二本と、『あるけぶすじゅう』を五本、あずけられてあるっちゃが。・・・ほんに、大丈夫かのう?」


西三川城の総大将を任されたのは、数か月前まで農民だった久保田仲馬である。

娘のレンが城主の奥方候補筆頭ということで、あれよあれよという間に羽茂本間の家老職になってしまっていた。身体能力は素晴らしいが、学も無ければ刀の使い方もほとんど分からない。戦略の戦の字も分からない。そもそも、読み書きすら危うい、というよりできなかった。


「戦に関しては、某にお任せくだされ。河原田本間については、羽茂本間の中では某が一番詳しいと存じます」

それを補う副将として任ぜられたのが、先日の同じ西三川の戦において捕虜となり、羽茂本間の軍門に下った赤塚直宗である。幼少期から故事学問を身に付け、実戦経験は浅いものの、軍略については明るい人物だった。


「そ、そうだっちゃな。頼むっちゃ! お主がいれば千人力じゃ!」

「はは! 承知仕った」


仲馬の魅力は、自分の学の無さ、力の無さを隠そうとしないこと。そして、人好きさせる純朴な性根のよさだった。直宗も、はじめは「なぜ自分が副将」と(いぶか)しんだが、一両日共にいる中で、その心地よさを感じていた。これは、主君、羽茂本間照詮にもない魅力だった。


「河原田本間の貞兼(さだかね)様は、『有言実行』『一意専心(いちいせんしん)』の御方で御座る。一度思ったことは、何が何でもやり通す御方。西三川の城を狙ったからには、意地でも落とそうとされることでしょう。備えは必要で御座います」

「そ、そうか! 戦は怖いが、頼まれたから仕方ないっちゃ・・・ お主と儂で力を合わせ、河原田軍を打ち破るっちゃ!!」

「ははっ! 総大将の仰せのままに!」


仲馬はビクビク震えながらも、さらに二人の侍大将格にも声をかけた。


「うおるふ、宗勝も頼むっちゃ!」

「おまかせくだサイ」

「あるけぶす銃の修練は十分。お任せあれ」


「うおるふ」と呼ばれたポルトガル人の通訳ヴォルフハルトは、デミ・カルバリン砲2門の射手として十名の兵を任されていた。剣の腕は全く駄目であるが、元軍人のヤルノには及ばないものの大砲に関して言えば、海賊相手に洋上で何度も撃ってきた経験がある。砲弾の数が若干心もとないが、秘策は有している。


椎名則秋の副将、水越宗勝(みずこしむねかつ)は、数丁しかないアルケブス銃隊の隊長を命ぜられていた。適性が危ぶまれたが、冷静沈着な性格と鋭い眼力で、驚くほどの銃の才能を発揮してきていた。



敵を待ち構えている時に、仲馬はふと、昔を思い返していた。


「あの、泣き虫だった照詮が・・・ ここまでになるとはのう」


生まれたときから照詮を見てきた仲馬。

生活は苦しかった。死に物狂いで働きながらも、懐には残らず、二日間食べないのは当たり前。毎日を生きるので精いっぱいだった。

余裕のない日々。働けど働けど楽にならず。共に本家の奴らにいびられ、気づいたときには、照詮の両親は亡くなっていた・・・


「・・・わしらは、しがない分家の農民。どうすることもできん、と、諦めちょったんじゃ・・・」


暴行を受けて、生きるか死ぬかの瀬戸際となった照詮。

力になりたかった。両親を救えなかった罪滅ぼしに、世話になった家へのせめてもの償いに。


・・・息を吹き返した照詮は、そこから急に人が変わったように動き出した。

あれから半年。あれよあれよと言う間に、照詮は羽茂本間の領主に。わしは侍じゃ。


「わしはな、照詮。おんしの役に立ててうれしいんじゃ・・・」


優しくてどことなく品のある僧だった、おんしのじい様を覚えちょる。まだ裕福で念願の男子の環塵を、京へ修行に行かせられる家じゃったのに・・・


「戦は怖い。じゃが、本当に怖いのは人じゃ! かかってこい! 河原田め!」

「応ッ!」


凸凹コンビの城主と副将に加え、二軍のような戦力。しかし、仲馬を中心に、思いもよらぬほどの結束力が見られる西三川城だった。



______________



約四半時(30分)後・・・


「見えた。敵です」


遠目の利く宗勝が一早く発見した。


「どどど! どないするっちゃ!? 直宗!? すぐ撃つべか?」

「落ち着きくだされ。『心慌意乱(しんこういらん)』では、功少なくなり申す。一町(≒110m)まで引き付けてから、ヴォルフの大砲による強襲。その後、宗勝と兵達による銃と弓の攻撃が有効かと存じます。機先を取りましょうぞ」

「な・・・に? しんこ、いらん? 儂はつけもの好きじゃが・・・?」


「来ましたぞ!」

宗勝が叫ぶ。敵はもう二町ほどまで近寄ってきておる。大軍じゃ! 二百は越すじゃろう! 

白刃を抜き梯子、攻城槌を用意して、一気に攻め落とすつもりじゃ!


嫌じゃ! まだ死ねぬ! レンの花嫁姿を見るまでは!


「う、う、撃つっちゃ! 直宗の言う通りに撃つっちゃ!」

「ハイ」

「承知」


総大将、仲馬の命を受け、デミ・カルバリン砲、アルケブス銃に火が入った。

うっかり耳を塞ぐのを忘れ、至近距離でその轟音を聞いてしまい、その後しばし卒倒する仲馬だった・・・



かくして、西三川城、その付近に広がる静平での戦の火蓋が切って落とされた。

宗勝に名字がないと不便なので、椎名則秋と同様に越中国神保家家臣、水越勝重の一族としました。


心慌意乱しんこういらん

あわてて心が乱れて、何がなんだか分からない状態のこと。

「心慌ただしく意乱る」と訓読する。そうです。

(四字熟語に関するWebサイトより抜粋)



書いていて自分で読み返していたら、


「あれ・・・私の物語、一話分が・・・長すぎ(;゜艸゜)??」


と思って、短く区切ってみました。

どんなもんでしょう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] 主人公が手伝い戦をしていた頃の物語でしょうか。 主人公の留守を狙って河原田本間が攻め込んできやがった。 迎撃するのは留守を任されていた仲馬爺さんたちだけど大丈夫なのかねぇ・・・。
[一言] 落とすの無理じゃろw 大砲にと鉄砲の時点で領民兵はめっちゃ怯むし、無理に攻めさせるなら督戦隊が領民兵斬り殺して、やけ凸させないと逃げ出しますよw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ