第五十二話 ~ 産業と継承 ~
<佐渡国 羽茂郡 羽茂城 殿屋敷>
「子どもが欲しいな!」
「ふぇっ!?」
俺は、いつもの通り剣術修行が終わってレンに汗を拭いてもらっているときに閃いた。
そうだ。子どもが必要だ!
「あの・・・照詮? いきなり子どもって・・・まだ早いっちゃ・・・」
「いや、全然早くないぞ! むしろ、遅いくらいだ」
「ふぇぇ~・・・」
この数か月で、羽茂郡には数々の産業が生まれ始めた。製鉄、ガラス、干し黒海鼠、干し鮑、塩田、ビール、清酒、石鹸、羽布団など。これらの産業を継続させるためには、人が必要だ。
これらはまだ他国にその製法を知らせる訳にはいかない。こちらが親切心で他国に知らせようものなら、その国が一気に作り出して国力を増大させることで、佐渡が危うくなるやもしれん。情けは無用だ。独占生産、独占販売で利益を自分の物とする。独占禁止法など無い。金は力だ。あればあるだけさらに力が増す。
もちろん、製法を武力で開示請求しようとする勢力への対策は必要だ。『佐渡の特産品』としてのお墨付きをどこかで手に入れたい。そうなると一番は・・・朝廷か。
「えっと・・・何人くらい?」
レンが人差し指を両手でツンツンさせながら尋ねてきた。
「そうだな。少なくとも五十人、欲を言えば百人は欲しいな」
「!!?」
椎名則秋が行う剣術修行仲間のレン、ナーシャ、弥太郎、則秋の子の五郎太、長谷川海太郎の子の長谷川海之進など。これからの佐渡を担う力がさらに必要になる。産業の最初は大人が行うが秘密漏洩のリスクがあるし、信頼できる者が少ない分、手が足りない。何のしがらみも無い身寄りのない孤児であれば、秘密を洩らされるリスクは極めて低い。
学舎を羽茂、小木、赤泊、西三川、千手村に建築中だ。そちらで読み書き算術等、最低限の知識を身に付けつつ、産業の技術も学んでもらう。そのまま職人として進んでもよし。財務、政務、軍務に才があればそちらに進んでもよし。「孤児を救う」っていう、大義名分もできるからな。建前だ。日戸市で見た絶望した目をした孤児を助けるような、情けのためでは決してないぞ。
「ナ、ナーシャと相談するっちゃ・・・」
「えっ?」
レンのやつ、ナーシャと何を相談するんだ?
相談するとしたら、内政財務担当の新発田収蔵か、越後屋の蔵田のおっさんだろうに。そそくさと下を向いて小走りしていった。
新緑が眩しい。季節は春真っ盛りだ。
田植えがここ佐渡でも行われている。もうすぐ各地で戦が始まる頃だろう。
兵は600ほどまで増えている。軍事教練に加え、道を開かせたり建築作業を行わせたりしている。目指すは古代ローマ軍の「一流の兵は、一流の土木技術員」だ。
雑太は200、河原田は400ほどか。雑太は一揆勢の押さえのため150は回しているからほとんど動けない。河原田を全力で攻めれば潰せるかもしれないが、守りと違って攻めは兵力が二倍から五倍は欲しい。加えて、こちらがほぼ兵を全て失って佐渡を統一した瞬間に、他の勢力に攻められたらまったく意味がない。ゲームじゃよくこの失敗をした。
失敗は許されない。セーブはできない。リセットボタンは無い。
この一年は兵力を増やすことを念頭に置いてもいい。
もし動くとしたら、相手が動きにくい稲刈りの時期か。こちらは常備兵だ。農民中心の相手には有利に働くであろう。
それまでに、もっともな大義名分とやらを手に入れなくてはな・・・
潰したとしても後ろ指を指されることのない奴だ。
砲術隊長を任せた山本勘助から報告書が届いている。順調そうだ。南蛮人の処遇も決めねばなるまい。
柏崎水軍の新人、直江津の白狼、各所に文を出さねばなるまい。大評定の準備だ。忙しいな。
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レンが駆け寄ってきた。
初めは睨まれたりもしたが、今ではかけがえのない女友達だ。
「レン、ドウシタ、ノ?」
「ナーシャ、あのね・・・照詮が・・・・・・ごにょごにょ。」
「xxxxxxxxxx!?!?」
思わず吹き出してしまった!
二人で五十人って! 何年かかると思ってるの!?
そろそろ戦が近いです。




