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佐渡ヶ島から始まる戦国乱世  作者: たらい舟
第十一章「西南の海」

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第百六十九話 ~美麗島へ~

<天文十二年(1544年)十一月 琉球国  那覇 那覇湊>



 琉球から更に西南へと向かう準備が整った。

 いよいよ明後日出発する。目標は台湾、そしてその先だ。


 水先案内人の程復(チャン・フー)は、水と食料調達の為に何度も北西部にある「ホオベイ」という漁村に寄ったらしい。主に「ケタガラン族」という原住民が支配しているらしい。大きな川の近くと言うから、きっと「淡水」のことだろう。


 念の為、第二艦隊「鯨」新人の副官、麻人(あさと)に尋ねてみても同じことを言われた。ただ、かなり小さい港のようだ。ニ十隻を超えるキャラック船は駐留が難しいかもしれん。


 

 京の都で「空海屋」を開き情報を集めている白狼から手紙が届いた。

 畿内は相変わらず混迷を極めているようだ。

 


 室町幕府管領(かんれい)従四位下細川右京大夫(うきょうのだいぶ)晴元(はるもと)が専横を極めることに反抗するために立ち上がった摂津国守護職細川氏綱(うじつな)。氏綱は、山陰の雄、尼子晴久(あまこはるひさ)の後押しをもらい善戦していたものの、三好神五郎(じんごろう)政長(まさなが)、三好孫次郎(まごじろう)範長(のりなが)らの働きによって敗退。頼みにしていた河内国守護職畠山尾張守稙長(たねなが)は戦死か病死か分からないまま死去。


 これにより本願寺から実力を認められた範長は「長慶(ながよし)」の名を受け取った。改名はまだ先のようだ。


 細川晴元の元で戦っている範長だが、主君の晴元と叔父の政長は父親の三好元長(もとなが)の仇である。思う所があることは先日、堺で直接話を聞いている。敵の敵は味方だが、味方は親の仇…… 理解するのに数日をかけたがまだ分からん。


 何ともこんがらがった糸だ。これが史実と合致しているかどうかもよく分からん。

 西南の海への糸口をつかんだ後は、俺が快刀乱麻(かいとうらんま)を断ち切るが如く(さば)かねばならんな……



 そんな畿内のゴタゴタを忘れ台湾に着いた後のことを考えていた俺に、珍しくおずおずと話かけてくる者がいた。

 

義兄上(あにうえ)。お知恵を御貸しいただけませぬでしょうか……」

「ん?」


 第三艦隊「龍」艦長の義弟、上杉謙信だった。普段の明朗快活とした様子が影を潜めている。


「どうした?」

「出発を前に、決まっておらぬ船長(ふなおさ)が『これでよいか』と悩んでおりまして……」

「ふむふむ?」

「篠崎という強気の男と、先日義兄上が推挙した柔和な『鶴』という娘。船の腕は互角にて、どちらを選べばよいか分かりませぬ。ぱっと見た所、篠崎の方が優れて見えるので決めようと思うのですが……」


 …… なるほどなるほど。


「『どうも()に落ちず』と顔に書いてあるな」

「その通りで御座います。年重(としかさ)は篠崎の方が上で御座いますが」

「我が羽茂本間家は能力を第一に考えておる。選考理由には到底当たらんな。当然、性別や容姿の美醜(びしゅう)なぞ意味を為さん。うーむ、そうだな……」


 要は二人に求めることはどんな力かがハッキリと分かればよいのだな。


 …… ()()なら良さそうだ。


 俺は名案を思い付いた。

「では、こういうのはどうだろう?」


________________


<天文十二年(1544年)十一月 琉球国  那覇 那覇湊>



台湾島(たいわんとう)を目指す為、明日出発する!」


 上杉謙信率いる『龍』第三艦隊は台湾島に駐留する予定の艦隊。その艦隊の中、先の座喜味(ざきみ)(グスク)の戦いにおいて命を落とした船長の後任候補二人が事前の船準備をしていた。


 一人は横柄な態度で威圧し部下を動かす壮年の男、篠崎兼続(しのさきかねつぐ)

 もう一人は先日羽茂本間照詮から推挙された穏やかな娘、大祝鶴(おおほうりつる)であった。


 篠崎はいつも通り顔を紅潮させて怒鳴り散らしていた。

 

「おいキサマ!」

「はッ?」

「なぜ儂が言った通りに寝筵(ねむしろ)を用意しないッ!」

「は!? やり終えましたが?!」


 部下は憮然(ぶぜん)とした態度を取った。


「何を抜かすかッ!! 儂は『今日この(うま)の刻に、船の前へ置け』と言ったぞ! 何故()()()()()()()()()()()()()!!」

「その方が良いと思ったからでありますっ!!」

「クズがッ!!」

 そう言うと篠崎は十人頭の部下を強く(なじ)った。


「儂が午の刻と言ったら午の刻だっ! それ以外は認めん! 死にたくなければ儂に従え! 経験を重ねた儂の判断に狂いはないッ!」

 十人頭の男は釈然としないまま、明日には船に積み込む寝筵を船から渋々と取り出し始めた。部下達は「またか」と思いながら、言われた通りのことだけを静かに忠実に守り動きだした。

 

 対して、鶴姫は一人ひとりの部下に声をかけ、失敗にも寛容な態度を見せていた。だが「あんな優しい様子では、戦場では役に立たなそうじゃ」と(いぶか)しがる者もいた。



 その時だった!!


「敵襲だッ!!!」

「明の船が百隻以上も押し寄せてきおったぞおおおおおおおおおおおぉ!!!」


 突如として見張りが大声で叫んだ! すわっ敵襲か!?

 湊は大混乱に陥った!


「何じゃと!?」

「真に明からかッ!?」

「百隻も!!? どうすれば!?」


 慌てふためき始めた佐渡水軍の末端の兵達。浮き足立ち右往左往する者が続出した!

 だがそんな時!


「静まれぃ!!」


 天にも轟くような一喝! 雷のような雄叫びが喧騒を一変させた!

 何と可憐な少女の『鶴』からだった!!


「落ち着き持ち場へ戻れ!! 町民と商人を首里城まで避難させよ!!」

「だ、だ、だがすぐに明の奴らが襲ってくるやも……」

「私の隊が足止めし時間を稼ぐ! それまでに皆は準備せよ! 我が隊よ! 行くぞッ!」


 鶴からは日頃の穏やかな様子は全て消え失せた。そこにいたのは勇ましい戦乙女の姿のみであった。


_____________



 物陰に潜み様子を見ていた俺は、隣の謙信に微笑んだ。


「分かったであろう?」

「…… 参りました」


 謙信は恥ずかしそうに頷いた。


「末端の者が浮足立つのは致しない。将たる者がそれを統率すれば良いのだ。問題があるとすれば、浮足立つ兵を統率できない将がいることだ」


 段取り良く物事を進める鶴。()()という時はその力を最大限まで引き出し兵を率いる姿が垣間(かいま)見れた。

 一方、篠崎何某はいつもの大言壮語はどこへやら。全てを放り出し我先にと首里城の方へと駆け出していた。当然にして篠崎にはキツい沙汰が待っている。


 戦乙女『鶴』が空席の船長の座に収まったことは言うまでもなかった。


____________


 

<天文十二年(1544年)十二月 台湾島 北西部 沖合 > 



 ザザーン ザザーン


 静かな波が「佐渡鷹丸」の船体に寄せてくる。だが波は小さい。船はほとんど揺れもせず帆に風をいっぱいにはらみグイグイと力強く進んでいく。


 既に台湾島に到着して二日。俺達の艦隊は北東部から北西部へと進んでいる。


 台湾島が西暦1800年ほどの清朝においてもほとんど発展しなかったと前世で学んだ記憶が薄っすらと残っている。旅行した際見た鄭成功の像、憧れの菱の実(リンジャオ)を食べた時のほのかに甘くホロホロとした触感が思い出される。


 一つ目の理由は、巨大な中央山脈だ。


 この船上からも雲を貫くほどに高い山々が泰然として聳え立つのが見える。確か一番高い山は富士山よりも高かったはず。日本がかつて戦争中に台湾を併合していた際は、『日本一高い山』は富士山ではなく台湾の『新高山(にいたかやま)』だったはずだ。

 太平洋戦争開戦時の真珠湾攻撃の暗号「ニイタカヤマノボレ」はここから来ている。


 この山脈があるせいで、東西南北は分断され、道の整備は進まず、交通は船での移動が基本となった。


 二つ目の理由は、天然の良港が少ないことだ。


 入り江が少なく遠浅の単調な海岸線が続く台湾島北部。どうにか入り江を見つけて開拓しようとしばらく探索したが、かえって一隻を座礁させてしまい航行不能にしてしまったほどだ。食糧と水を考えると先を急いだ方がいい。


 西南部であれば有名な『安平』が使えるかもしれんが、日ノ本に近い北部に中継地点を設けることはやはり必須事項だ。とすれば、


「……やはり、『淡水』を抑えるしかなさそうだな」

「です」

 明国人の水先案内人の程復(チャン・フー)も同意した。若干神経質で話しかけにくい所もあるが、日秀も認めるほどの逸材らしい。


 北西部を流れる巨大な淡水河の河口はゲームでも『淡水』という港になっていた。前に話を聞いた通り確かに港はあるはずだ。ただ、大型船を停泊するには十分ではないらしい。そうなれば小舟に乗り換えて上陸する必要がある……


 それと、台湾が発展しなかった理由の三つ目。それが……


「殿! 見えてきましたぞ!!」

「おおっ!! 遂に…… …… ううむ……」


 喜びも束の間、俺は(うな)ってしまった。


 俺の思い描いた『淡水』の町とは程遠い、寂れた漁村が俺達の前に姿を現した。『小さい』とは聞いていたが、これなら漁港として発展した、佐渡南部の赤泊の方が十倍は大きいだろう。


 三つ目の理由とも合い重なり、俺はこれから始まる台湾島の領土化にかかる労力に思わず腕を組み(うつむ)いてしまった。


 これは骨が折れそうだ。

 新年度が始まりましたね(*´ω`)

 進級、進学、社会人、部署替えなど様々あると思います。筆者もそれなりにスタートしました。無理せずに、できる範囲で努力していきましょう('ω')ノ


 大祝家の「鶴姫」は「瀬戸内のジャンヌダルク」の異名が名高い人物です。

 16~18才ほどの頃に、瀬戸内海の覇権を牛耳ろうとする大内家に立ち向かうために軍を率いて戦ったとされています。本来は恋人の越智安成が大内家に討たれ、失意のあまりに海に身を投げたという悲恋エピソードが語り継がれています。本物語では主人公の行動によるバタフライ・エフェクトが働き、両名共にサチに救われ生きているという設定です。

 ゲーム等にも登場している有名な「鶴姫」ですが、最近はその存在の証拠とされてきた「女用の鎧」の真偽が危ぶまれています。「創作人物等々様々な説がありますね」という程度に留めさせて頂きます(*´Д`*) 


「刀剣ワールド」様のHP他から情報を得ることができました。

 https://www.touken-world.jp/tips/14215/


「普段虚勢を張っている者ほど、有事の際に役に立たない」という童話のようなエピソードを挟みました。いざという時に真の力を発揮する鶴姫は、更に存在感を増していくはずです。


 台湾は旅行に行ったこともある筆者が大好きな場所です(∩´∀`)∩

 日本語も結構通じますし、物価も安く温暖でした。コロナが収まったらまた行きたいと思っております(´∀`*)

 

 挿絵(By みてみん)

 鄭成功様は台湾からオランダを追い払ったことで知られる人物です。

 本物語では時代が合わないことが残念です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 併合と植民地は似ている様だが明確に違っていてここはきちんと植民地もしくは統治か管理といった様な近い言葉を辞書で調べて使うべきだと思う。 戦後中国共産党の支配下になっていく台湾で台湾の人達が…
[一言] 更新お疲れ様です。 新船長誕生!!^^ 推した彼女がこれから先大活躍してくれるといいですね。 『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』 彼女には山本五十六のこ…
[一言] 併合は朝鮮半島だけで、台湾含めた他の地域は植民地です。
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