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佐渡ヶ島から始まる戦国乱世  作者: たらい舟
「目覚め」

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第十三話 ~軒猿~

 意外な人物、それは、この屋敷に前から仕えていた使用人の一人だった。


「夜分恐れ入ります。折り入ってお話があります」


 まさかの刺客かと思いきや、使用人のおじさんだった。よく気が付くし、庭掃除や料理などの仕事も丁寧。取り立てて特徴のない男だったから、あまり意識はしていなかったが・・・


「何ごとか? かなり重要なことだろう?」

 普段できる話なら、朝や帰って来た時にできるはず。ならば、今しか話せないことなのだろう。


「お人払いを、と言いたい所ですが無理でしょうな」

「うん。無理だ」

 まさかの提案だ。というか、人払いしても環塵叔父と弥太郎には話すから同じことだな。まだ刺客の線は残っている。人払いなどできるはずもない。


 男の目付きが急に鋭くなった。口調も変わった。

「あっしは、軒猿(のきざる)に通じていた(モン)で上忍の白狼(はくろう)と申しやす。先代の越後屋、蔵田仁左衛門(にざえもん)様との懇意によりここで屋敷勤めをしておりやした。ですが、あっしの本分は忍びでさあ。主が本間様へと代わりになり、お伝えしておかねばと存じやして」


 ! 軒猿(のきざる)!!


 確か、上杉家に仕えた越後の忍び集団だ!

 まさかこのタイミングで縁ができるとは。


「あっしは、忍びとして生き忍びとして死んでいく者でごぜえやす。忍びとして生きることができぬままこのまま身を崩していくかと、辛ぇ思いをしてきやした・・・ ですが本間様なら、あっしの力を生かしてくれるお方かと思いやす! 失礼ながら、今日の宴を傍耳立てさせていただきやした。お若いのに、大した御仁でさあ、本間様は」


 そうか、聞かれていたとはな・・・

 もし、白狼が相手方の忍者であれば、情報がすっかり相手方に漏れていただろう。もしくは、直接命を狙われ、俺はもうこの世にはいなかったかもしれない。そう思うと自分の迂闊さに腹が立った。


「はは、ご自分を責めねえでくだせえ。目が足りなけりゃあ、あっしが目になりやす。耳が足りなけりゃあ、あっしが耳になりやしょう。どうぞ使ってくだせぇ。・・・ただ、どうしても『忍びは不要』と思うのであれば、どうぞ暇をくだせえ。もし役に立つのであれば、このままお仕えさせて頂けたらありがてえこって」


「・・・白狼と言ったな。そなたが忍びであること、蔵田五郎左は存じておるのか?」

「いえ。存ぜぬことでございやしょう。この屋敷にはご興味がネェ方でしたので」


 先代の越後屋は、軒猿の力を使って色々なことをしたのだろう。情報を仕入れることもあれば、偽の情報を流すこと、盗みを行わせること、果てはまた口封じなども・・・?

しかし、蔵田五郎佐は信用第一の男。もし忍びが手にあったとしても用いることは無かろう。俺は違うがな。


 俺にとっては、願ったり叶ったりの出会いだ。この先、忍びを使うことは山のようにある。

 情報は力だ。ネットも電話もない世界の、目であり耳だ。一千貫でも惜しくはない。


 俺は心を躍らせつつも、慎重に言葉を選びながら尋ねた。

「条件は?」

「簡単な話でさぁ。一つは金でごぜえやす。あと、弱え物イジメはしねえでくだせえ。あっしはそいつが大っ嫌えなんで」

 金は問題ない。弱い者いじめも問題ない。なにせ俺が最弱だからな。だが待てよ?


「軒猿は、長尾家に力を貸しているのではないのか?」

「もちろん、軒猿は長尾家の仕事を引き受けておりやす。ですが、あっしは軒猿の中でも変わり者でして。また、金を入れることで、軒猿にいるあっしの手の者を手元に戻すことができやす。心配しねえでくだせえ」


 白狼は軒猿の中でもかなりの実力者だったようだな。独立別会社的な感じが許されてるということか? 人手が足りなければ里から雇い戻すことも可能とは凄いな。忍者は抜け忍になれば死ぬまで襲われると聞いたが、契約社員的な雇用関係の所もあるのかも? 


「問題ない。こちらの味方となるのであれば、金子は十分な額を保証しよう。弱い者いじめなどもっての他だ。何せ、俺がいじめられている側だからな。ただ、俺は手段は選ばんぞ」

俺は、始めは自虐気味に、後からは黒い炎を宿すように笑って答えた。


「心強きお言葉、ありがとうごぜえやす。任せてくだせえ。これからよろしくお願いしやす」



 ・・・これで、忍びの力が手にはいったことになる。

 張りつめていた空気が、少し緩んだ気がした。


「しかし、屋敷にいたおじさんが、まさかの忍びとはなあ。全然そんな風には見えなかったぞ」

「へへっ、それと分かるようでは、忍びは勤まりませぬよ。特徴を掴ませぬのも忍びの業にごぜえやす」

 白狼のおっさん、白髪も混じっているがよく見たら筋肉凄そうだ。だぼだぼの服を着て、鍛え抜かれた肉体を隠すのも忍びの業か。ハードボイルドでニヒルなおじさん忍者を味方に引き入れることができて本当によかった。


 環塵叔父は、寝る前に結構備えをしていた。それとなく白狼の存在に気付いていたのか? 鋭すぎないか?


「それと、屋敷に勤めてやす他の三名も、忍びでごぜえやす。かなりの業を持っておりやすので、お役に立てるかと」

「えええ!?」


 さらに爆弾発言だ。あんな人の良さそうなおばちゃんと、腰の曲がった爺や、物静かな婆やが!?

仲良くしておいてよかったよ。


「それぞれ、紫鹿(しろく)黒蜘蛛(くろぐも)赤燕(あかつばめ)と申しやす。明日、改めてご挨拶に上がりやす。主の人となりを拝見いたし、強きを挫き弱きを助ける方だとお見受けしやした。きっとよき雇い主になると思っての挨拶にごぜえやした」

「うん、分かった。明日から更に頼むぞ」

「はは。それでは」


 白狼は言うなり、素早く消え去った。煙のように消えるとはこのことか。腕は確かなようだ。



 環塵叔父が、楽しそうに俺を見てニヤニヤする。

「侍に職人、さらに忍びも味方になったのう。『人の輪』が広がるのは、大層なこっちゃ。仏様のご加護のお陰じゃな」

 そう言って、南無大師遍照金剛と唱える。この叔父、本物なのか偽物なのかよく分からない。


「いまいたやつ、すごくいいうごき、してた。お゛れといいしょうぶ」

 弥太郎は白狼の力量をそのように見積もった。それは凄いおっさんだな。



 忍びの力が手に入った。


 俺が狙う羽茂郡領主、本間高季のこと、さらに佐渡の他の領主の戦力、資金力、備え、嗜好、性格など探ることができれば、一か八かの作戦を立てなくて済む。


 金があれば、さらに白狼に頼んで忍びの力を増やすことも可能なようだ。そして、俺には無限に近い資金力がある。そのうちに里ごと、俺の手の内に収めることだって可能かもしれない。


 ・・・


 ゾクゾクっと身震いがしてきた。

 大望が見えてきた気がする。


 約束の日時までには、まだ時間がある。

 いい料理は、下ごしらえが大事だ。念入りに準備をするとしよう・・・





         第一章「目覚め」 ~ 完 ~




忍者!


自分のイメージとしては、だいぶ昔に読んだ司馬遼太郎先生の「梟の城」かなと思います。ちょっとHでドキドキした自分は若かった(*'ω'*) あと小山ゆう先生の漫画「あずみ」の一巻では、「一番仲のよい者と殺しあえ」という忍びの厳しさを考えさせられました。

それと、WIZの手裏剣とクリティカルヒットですね。ヽ( `・ω・´)メ シャキーン


軒猿は、

「軒下に猿のように潜んで敵の内証を探る役」、故に「軒猿」と呼ばれた、諜報活動のスペシャリスト達のようです。「伏齅ふせかぎ」という名前も聞いたことがあります。いずれにせよ上杉方の忍者集団です。


忍者の主な役割は、首を刎ねることではなく、相手の懐深く入り込み、情報を仕入れたり、人の心を操ったりする諜報活動なのかなと。作中にあった通り、ネットも電話もない時代、情報をより多く、早く、正確に手に入れることは本当に重要でしょうし。武芸も身に付けていますが、相手を倒すというよりは、生き残る、逃げることが主眼だったようです。


今回の会談で、白狼の手の者の力を使えるようになったという状況です。白狼はキャラ付けとしては、水戸〇門のクール忍者としました(*´ω`) お〇と飛〇がいるかは不明。忍者の力が手に入るようになると、本当に話がスイスイと進んで助かります。


ただ、忍者は便利すぎて「全部忍者でいいじゃん」的な感じになり過ぎるのも不本意なので、うまく相乗効果が得られるよう考えていきたいと思います(*´ω`)



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― 新着の感想 ―
[良い点] よくこの手の話にある以上に歴史に詳しい主人公じゃなくて等身大なのが良い。 [一言] この時代に忍びって呼び方あったんですかね?
[一言] おもしろい。金を題材にしている。今後の展開が楽しみ。
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