表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/162

農耕牛?いえ、警備牛です

何とか。


余談ですがカウクイーンの元ネタは某ゲームの裏マップに出てくる牛牧場の主です。

戦いがひと段落したのを見てリースとレイナが近くまでやってきた。


「カイリ君。勝てたの?」


恐る恐る覗き込むリース。

レイナも編み棒を持ってツンツンと突いているけど、カウクイーンは目を回したままだ。


「これは毒、ですか?」

「いや、一応どっちかというと解毒した筈なんだけどな。

あれだよ。殺菌も度が過ぎるとってやつ」

「それで、これからどうするの?今なら止めさせそうだけど」


そう言って特大包丁を取り出すリース。

解体する気満々だな。


「いや。まだ待ってくれ。

最初の呪いっぽいのが晴れてるし、もしかしたらワンチャンあるかも」

「……私だったらさっきのがトラウマになってます」

「う”。確かにそんな気もするけど。

まぁやるだけやってみよう」


そんな訳で、ダメで元々色々やってみることにした。

高濃度酸素水を飲ませてみたり、胃の辺りをマッサージしてみたり。

その甲斐あって、何とか目を覚ました。


「グモッ!?」


慌てて飛び起きるカウクイーン。

すぐ近くに俺達が居るのを見て咄嗟に斧を構えるけど。


「まぁ待て待て。俺達にもう争う理由は無い」

「モ?」

「そもそもお前を殺そうと思ったら倒れてる間に出来たんだ。分かるだろ?」

「モ……」


いやそんな宇宙人を見たような顔しなくてもいいだろ。

でもそれでもこちらに敵意が無いのは伝わったらしく構えを解いてくれた。


「良かった。信用してくれてありがとう。

さて、まず最初に提案なんだけど、俺の従魔としてうちに来ないか?」

「モモ?」

「そう、従魔。嫌じゃなければ畑の手伝いをしてもらったり、牛乳を提供してくれると嬉しい。

もちろん極力住み心地のいい環境は用意するし、食べ物だって要望があれば聞くぞ。

ほらっ、例えばこれとか」

「グモッ!?」


取り出した大根を見て青褪めるカウクイーン。


「おっと、大根はダメだったか。すまんすまん」

「……カイリ君」

「いまの絶対わざとです」

「まぁ大根は冗談として、どうだ?」

「……モォ」


少し考えたそぶりをしたカウクイーンが斧から右手を放してこちらへと伸ばしてきたので、俺も右手を出して握手を交わす。

多分最後の一言は「あの大根さえ食べさせないと約束してくれるなら」って事だと思う。


【エクスキューション カウと従魔契約を結びました】


おっと、意外、でもないけどなかなかに凄い種族だったんだな。

まぁそこらに居る牛がマーダーカウとかマーダーブルとかだから妥当と言えばそうか。


「よし、これからよろしくな」

「モォオ♪」

「名前は……さっきのままで良いか。『カウクイーン』でどうだ?」

「モモ!」


良いみたいだ。握手してる手がぶんぶん振られてるし、尻尾も凄い勢いで振られてる。


「ところで、どうして呪われてたんだ?」

「モォ?……モォ~~」

「分からないのか。元からって訳じゃないんだよな?」

「グモ!グモ!」


どうやらここ1、2か月の記憶がないらしい。

つまりその頃に何かあったって事なんだな。

誰かが何か意図があって呪いを振りまいているのか、それとも。

まぁこれ以上は今考えても分からないな。

さて、あとは。


「カウクイーンは何を食べるんだ?」

「グモォ」


ん?指さした先はさっきまで居た拠点、というか、え?


「もしかしてお前、焼肉の匂いに釣られて来たのか?」

「モォ」

「いやいや。共食いだぞ?大丈夫か?」

「モォォ」

「弱肉強食ってまぁそうかもしれないけど。

お前が良いならいいか。

リース、悪いけどこいつの為にもう一度肉を焼いてもらっても良いかな」

「ええ、もちろん」

「あ、私も手伝います」


そうしてリースとレイナがぱたぱたと焼肉の準備に取り掛かった。

さて、肉が焼けるまで少し時間があるから。


「ぼーっとしてるのも勿体ないし、畑でも作ってるか」

「グモッ」

「お、手伝ってくれるか。ありがとな。

じゃあ、この鍬を貸すから壁の外側を耕していってくれ。

俺は肥料を撒いたり種を植えたりしていくから」

「モォ♪」


1人と1頭で畑を耕していく。

って、これ。普通なら牛に農工具を引かせて耕すんだよな。

間違っても鍬を手に持って振るわせるなんてゲームならではの光景だ。


「グモオオオオッ」

「凄いパワーだ。俺良くこれに対抗出来たな」


ザクザクどころかドッカンドッカン土が掘り返されていく。

その後ろから俺が肥料を撒きながら畝を作っていけばあっという間に拠点の両サイドに畑が出来てしまった。


「焼けたわよ~」

「はーい」

「モォ~♪」


リースの呼び声を聞いて畑仕事を終わらせてBBQ台の所へ向かう。

そう言えばカウクイーンはどうやって肉を食うんだ?


「モッ」


っていつの間にマイフォークを取り出したんだ?

しかもそれで1枚1枚口に運んではしっかりと噛んで食べてるし。


「ウモ~~~」

「美味いぞ~って。そうか、よかったな」


あっという間に1頭分を平らげてしまった。

毎日これだけ食べると考えると食費が馬鹿にならないな。

ん?今日は特にお腹が空いてただけ?

多分呪われた間、碌にご飯にありつけてなかった気がする?

まぁ、2足歩行してる分、走る速度は落ちるから獲物にはなかなかありつけなさそうだけど。

でもならなんでそっち方向に進化したんだって話だよな。

まいっか。


「よし、お腹いっぱいになったなら今日のところはそろそろ帰ろうか」

「グモッ」

「あ、待って。カイリ君」

「ん?」


リースから待ったがかかった。

何か忘れものかな?


「従魔とはいえ、その子を連れて港に向かったら大騒ぎになると思うわよ?」

「……確かに」


カウクイーンはボスっぽかったしな。

普通の牛ならともかく、カウクイーンは目立ちそうだ。


「そういう事なら、一度俺達だけで帰って、転送門で迎えに来よう」

「それが良いでしょうね」

「じゃあカウクイーンはここで待っててくれ。

もし誰か来たら……そうだな。休憩したり焼肉したりは好きにさせて良いけど、万が一ここを荒らす奴が居たらぶっ飛ばしてやってくれ。

つまりはここの警備だな。頼めるか?」

「グモッ」


力強く胸を叩くカウクイーン。

それに頷き返して、俺達は一足先に帰ることにした。

後書き日記 リース編 続き


無事に牛肉を大量に手に入れた私たちはその勢いで焼肉パーティー♪

多分リアルで同じくらいお肉を食べようと思ったら万札が消えていくんでしょう。


このゲームが味覚をほぼ完全に再現してくれてこれほど有難いと思ったことはありません。

お肉美味しい♪


そうして焼肉の匂いに釣られた人達も交えて焼肉パーティー第2弾♪

その人たちは元々良い人なのでしょうけど、やはり美味しいお肉の前には争いなど起きないということでしょうね。

珍しく良好な関係を築くことが出来たと思います。


しかし平和だったのはそこまで。

気が付けばボスとのエンカウントです。

2足歩行の牛。えっと確か処刑牛って呼ばれてるフィールドボスでしたね。

でも、呪われてるって話は聞いたことが無いのですが。


って、カイリ君が真正面から勝負を挑んでます。

なんて無謀な。相手は力自慢のボスだというのに。


……え?すごい。まともに打ち合ってます。どうして?

いくら食事でバフが付いてるとは言え、素のレベルやステータスが低かったら意味はないのに。

そう言えばカイリ君のレベルって幾つなんでしょう?聞いたことが無いですけど。


あっ、距離を取りました。流石に無理があったみた……えっ???

あれは、大根、ですよね。どう見ても。ちょっと青みがかってますけど。

それで戦うのはいくら何でも無理があるでしょう!!

ほらっ、食いちぎられた!

あ、あれ?

処刑牛の様子が変です。まるで猛毒を食べたような反応。

もしかしてあれは大根の形をしたまるで別ものだったんでしょうか。

うわっ。2本3本と口の中に突き刺してます。

カイリ君、容赦ないですね。

それで敢え無くKO。


その後カイリ君は勝負は終わったとばかりに介抱を始めました。

そして起き上がった処刑牛と会話をしてます。

……あの、なんで会話が成立してるんですか?

処刑牛はモォ~って鳴いてるだけですよ?

それでばっちり従魔にしてるし。

やっぱりカイリ君は不思議な人ですね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
力強く胸を叩くカウクイーン。 「ぶるん♪」
[一言] なるほどーこれはあっちこっちに拠点&BBQ場の設置を依頼されそうですね(笑)
[良い点] 更新乙い [一言] 焼肉に大根おろしは良いね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ