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電子書籍化【完結】破滅ルートしかないヤンデレ攻略対象の妻になりました  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!


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45.晩餐会に込められた意味?

 その後は当たり障りのない話をして、お開きとなった。私がワインをお代わりしまくったので、お土産にと3本も持たせてもらう。迷惑料としては悪くないわ。次からの呼び出しは、3日以上準備期間を開けることを約束させた。


 収穫がなさ過ぎて、これでいいのか? と首を傾げる。まあいいけど……。馬車に揺られて途中で吐きそうになった。飲み過ぎたわ。その吐しゃ物を受け止めようと上着を差し出すシルの嬉しそうな顔に、我慢してぎりぎり堪えきった。吐しゃ物をどうする気よ!


 シルが隣室だけど、自室で寛ぐ。編んだ髪を解き、装飾品を外すだけで身が軽くなった。ぐったりしている間に、侍女達は手際よくドレスを剥いでいく。室内着に着替える前に、用意されたお風呂へ向かった。ロザリーが丁寧に髪を洗い、疲れた足をマノンが揉んでくれる。極楽だわ。


「若奥様、香油はどちらになさいますか?」


 示されたのは薔薇とラベンダー。考えるまでもなくラベンダーよ。薔薇って初夜用に用意されたのと同じだった。シルとベッドを共にして寝てるけど、そういうんじゃないから。まあ、説明できない状況なので無言でラベンダーを指さした。


 マノンが手に垂らした香油を温める間に湯舟を出た。この世界に魔法はない。だから「えいっ、水魔法と火魔法でお湯よ」みたいな反則技は使えなかった。下で沸かしたお湯を、侍従が苦労して運んで来る。冷めてお湯を取りに行くのが面倒なので、かなり熱く用意するのが普通だった。


 薄めるお水は水道から出るのよ。水圧がどうとか、高低差云々と説明を受けたけど、水道の仕組みはいまだに理解していない。とにかく蛇口をひねると出るのよね。だから熱いお湯を用意して薄めるのが一般的だった。


 いっそお風呂で沸かす方法を考えればいいと思ったけど、五右衛門風呂は恋愛小説に似合わないかしら。原作がもう台無しだから、関係なく開発してもいいかも。ただ五右衛門風呂は木の蓋を踏んで入るんだっけ? あれ? やぱりエレガントじゃないから、貴族には普及しないかな。


 考え事をしながらタオルで拭かれ、香油を塗り込まれる。胸や首元、足の付け根が中心で、手首にも。いわゆる体温が高い部位じゃないと香油の香りが引き立たないのよ。手入れが終われば、クリームで保湿して仕上げていく。日本人が書いた小説なので、この辺は現代日本に近かった。


 湯冷めしないうちにベッドに潜れば、すぐにシルが後ろに滑り込んだ。当然のように両手で私を抱き寄せる。肌が密着するのも慣れてしまった。


「結局、用もないのに呼ばれたのね」


「ん? レティは可愛いな。そういう純粋な部分、とても魅力的だよ」


 気づかなかったのかい? そんなニュアンスを感じて、腕の中で無理やり振り返る。向かい合わせになった私は素直に尋ねた。


「あの晩餐会に意味があったの?」


「第一王子であるアルフォンスが立太子しないのは、国王陛下の宣言がないからだ。その理由は第二王子エルネストの母である正妃の実家が、強い発言権を持っているから。ここまではいいか?」


 前提条件を確認され、大きく頷いた。この辺はお父様に聞いた気がするわ。


「第二王子はただのアホだ。中身がない。勉学も剣術もなにひとつアルフォンスに敵わないだけでなく、騙されやすく単純で人のいい性格も国王に向かない」


 まったく褒める要素のない断定の後、私も気づいた。つまり、あの会話はそういう意味だったのね?

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