表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

898/899

895 のぞみの登場と耐性菌

 地球:202X年11月12日

 火星:1年6月4日


 ~紗也華の視点~


『おっと!ぼたんも通話に参加させてっと……オッケー。おーい。ぼたーん!愛する夫の声が聞こえるかー?』


『こうい……ち。お迎えに来てくれたの?』


『おいおい。まだ僕は行きてるぞー!ぼたんもなー!』


『私、助かっちゃったんだ……』


『ぼたんさん、生命神だよ。聞こえるかな?君、子どもがいるんだからさ生きてよ』


『聞こえるわ。そうね……ごめんなさい。本当にごめんなさい。生命神さん、迷惑をかけてばかりでごめんなさい』


『僕に謝る必要はないよ。お礼の言葉の方が嬉しい』


『うん。ありがとう。でも私も光一に会いたかったわ』


『おーい。ぼたん。妻を守れないような駄目な夫でスマンな。本当に申し訳ない』


『光一は謝らないで……全て私が悪いの』


『ぼたん、そんなに自分を責めるなって。後、言っておくけどね?こっちは酷い所だぞ?ぼたんじゃ耐えられないだろー?それに絶対に会ってあげないからな!これ家族全員が通話に参加しているから言っておく。皆、子どもを大切にしてよ。僕に会いに来ようとするな!』


『まぁまぁ話は一旦、その辺にしてだね。ぼたんさん。まぶたは開くかな?起き上がる事は出来る?』


『開いたわ。目もちゃんと見える……起き上がる事も出来たし、どこも痛くないわ。ここはどこ?』


『光一くんの業務用プライベートエリアだよ。深く考えなくて良い。記憶に問題はない?気分はどう?』


『……忘れたい事まで覚えているわ。正直、気分は最悪。穴があったら入りたい。そして埋まりたい。子どもさえいなければって思う。でもそんな私は最低だとも思う。子どもに申し訳ない』


『そっか。ぼたんさん、君は色々とあって疲れているんだよ。ゆっくり休んで』


『生命神さん、優しいわね。ありがとう。でも私のせいでイブが……』


「ぼたんさん、私は自己破壊していないわ。本当よ。ごめんなさい。反省しているわ。もう2度と自己破壊するなんて言わないから許して」


『イブ……生きていてくれたのね。でも私はもう……』


『ぼたん。落ち着いて聞いて。リラックスだ。夫として聞く。僕の事は嫌いかな?』


『光一、大好きよ。会いたい。でも……!』


『でもじゃないよ。だったら離婚も王族から抜ける事も認めない。これは夫として国王としての言葉だよ。家族全員がぼたん、君の事を心配している。嘘じゃない。本当の事。ブリタニアもイブも反省している』


「そうよ。ぼたん!ブリタニアよ?聞こえるかしら?私が悪かったわ。本当にごめんなさい。反省したから許して。先に言っておくけど、ぼたんは何も悪くない。だから謝らないで。良いわね?ぼたん。あなたも家族よ」


『ブリタニア……ありがとう。光一もありがとう。でも私、恥ずかしいわ。皆、聞いているんでしょ?皆、私が何をしたか知っているんでしょ?恥ずかしくて戻れない』


『おいおーい。さっきも言っただろう?皆、心配しているんだって。ぼたんよ。失敗は誰にでもある。気にするなって。僕なんて妻が困っている時に何も出来ない恥ずかしいヤツだぞー?なー?弟よ。そうは思わんかね?』


「まったくだ。いつまで寝ているつもりなんだ?困った妹だ」


『おいっ!そこは「そんな事ない」って言うところだろうが!本当に空気が読めない困った弟だ』


「事実を言ったまでだ。そんな事も分からんのか?」


『リアよ。ぼたん、恥ずかしがる事はないわ。でも心配させるような事はもうしないでね。しかし光一と孝次さんは仲が良いわね」


「『どこがだ!』」


『ほら。仲が良いじゃない』


『リア、ありがとう。私も反省しているところよ。心配かけてばかりでごめんなさい』


『ぼたん、良いの。あなた疲れているのよ。ゆっくり休んでね」


『うん。リア、そうするわ』


 そろそろ私の番かな?


『ぼたんさん。そろそろ病室に戻りなよ。それとも歩けそうにない?』


『……いえ、大丈夫よ。改めて生命神さん、ありがとう』


『うん。ゆっくり休んで元気になってね』


『そうするわ。それじゃ失礼するわね』


 あれー?私の番なくなった?……あっ!ぼたんだ!


「ぼたん。良かったー!戻って来てくれてありがとう!ねー聞いてよ!」


「紗也華、ありがとう。どうかしたの?」


「私、皆に女王を押し付けられたのよ!酷くなーい?」


「え……?ブリタニア。私のせいでクビになったの?」


「違うわよ!あなたのせいじゃないわ!私の事は良いからベッドで休みなさい!」


「ブリタニア、分かった」


「ぼたんさん、美香さんは覚えている?」


「イブ、もちろんよ。私を担当している医師よね?」


「今から来てくれるわ。今後について話し合いましょう?」


『それじゃ皆、通話を切ろうか。お疲れ様。また後で幹部会議を開こう。僕も疲れちまったぜ。休むわ』


「それじゃ女王の私からもお疲れ様。また……あっ!切られた!一番、恥ずかしいヤツじゃねーか!コラー!」


 美香さんが来るまでに、ぼたんへ会議で決まった事を伝えた。幹部のメンバーと目的とかね。

 そしたら何故か、ぼたんに握手を求められた。なんで?


 説明が終わって少し待つと美香さんが来た。


(ピンポーン)


「……失礼します。心療内科の佐藤美香です。どうかされましたか?」


「来てくれてありがとう。ぼたんさんに確認だけど、私から全て説明しても良いかしら?」


「良いわよ。正直、恥ずかしいけどね。嘘をつきたくないし、ついても分かると思う」


「分かったわ。それじゃ私から説明するわね。実は……」


 イブは美香さんに何があったかを説明した。すると美香さんの表情が曇った。


「ごめんなさい。ぼたんさん。私は未熟ですね。またお会いできて良かったです。本当にありがとうございます」


「美香さん、私が悪いの。気にしないで。その方が私も気が楽になるから」


「ぼたんさん、お気遣いありがとうございます。やはり私は担当を変えられた方が良いと思います」


「いえ、前にも言ったけど私はあなたが良いわ。それとも私は嫌?お願い。私は嘘をつかないからあなたも本当の事を言って」


「正直、私には荷が重いです。ですが私は嫌ではありません。ぼたんさんの為を思っての提案です」


「私の我がままでごめんなさい。私、あなたなら安心出来るの」


「ありがとうございます。正直に申し上げますね。ぼたんさんは職務不能ですが、1週間毎の通院で問題ない状態だと考えました。命の危険性はないと。ただしです。光一さんと紗也華さんの傍にいる事が必要だと考え、入院が必要だと判断しました。ですので回診はしませんでした。私の判断ミスです。ご相談があります」


「美香さん、さっきも言ったけど気にしないでね。気にしちゃう私が言うのも変な話だけどね。相談?言ってみて」


「ぼたんさん、教授と私の2人では駄目ですか?やはり女性が良いでしょうか?」


「分かったわ。あまり我がままを言ってはいけないわね。でも教授となるとお忙しいんじゃない?良いの?」


「はい。もちろんです。今、教授がお邪魔しても問題ないでしょうか?」


「良いけども……あまり迷惑はかけたくないわ」


「ぼたんさん、ご迷惑ではありません。むしろ逆です。大統領は支持率が高いです。それだけ世間が注目しております。大統領の主治医が新米では印象が悪いんですね。ですが、病院側の本音はそこではありません。我々に出来る事なら最大限、協力をさせていただきたいのです。嘘ではありません。魔法で嘘でない事を確認していただいても構いません。信じていただけますか?」


「もちろん信じるわ」


「ありがとうございます。ぼたんさんのお言葉は大変、嬉しく光栄に思いますが、先程も申しました通り、私には荷が重い。力不足なのです。ぼたんさんが迷惑をかけたくないとおっしゃるのと同じく、私も病院側もご迷惑をおかけしたくないのです。お役に立ちたいんです。ぼたんさん、遠慮なく何でも要望してください」


「うん。ありがとう。それじゃ教授を呼んでもらえるかしら?今後は教授と美香さんに私の対応をお願いしたいわ」


「ご協力に感謝いたします。1つお詫びがあります。教授と電話が繋がっておりまして、会話を聞いておりました。事前に許可を得ずに勝手な事をして申し訳ありません。今回、私の未熟な点を指摘していただく為、教授に私からお願いしました」


「あー良いわよ。あなた後期研修医だものね。当然の事だと思うわ。本来は指導医かな?必要だったりするんでしょ?私の我がままに付き合ってくれてありがとうね」


「こちらこそです」


(ピンポーン)


「……失礼します。心療内科で教授をしております。上田邦男と申します。皆様、この度は申し訳ありません」


「謝らないで。上田教授ね。こちらこそご迷惑をおかけしてごめんなさい。話を聞いてもらえる?」


「ご迷惑だなんてとんでもありません。お話を聞かせていただけますか?」


「うん、お願いね」


「ぼたんさん、まずは心配やつらい思い等をですね。美香と一緒に別室でゆっくり話しませんか?」


「どうして別室なの?」


「家族に心配をかけたくないから、迷惑になるから、と心にしまっている方が少なくありません。それを言葉にすることで気持ちが楽になり整理がついたりするものなんですね」


「私は本当に大丈夫よ。どちらかと言うと皆にも聞いてもらって、理解してもらいたいかな?もう既に家族には心配や迷惑をかけているからね。ここじゃ駄目かしら?」


「そういう事でしたら、ここでお話をさせてください。まずですね……」


 穏やかな雰囲気の優しい先生だなぁ。ぼたんと一緒に色々な話をしている。

 まずは、ぼたんの悩み、心配、不安、落ち込み、つらいこと、ストレス等を優しく聞いている。

 ぼたんのペースに合わせてゆっくりと話を聞いている。家族のこと、仕事のこと等、身近な話題が中心だね。


 そして、今後についての話になった。

 イブと私を含め、色々と話し合った結果、月曜日から金曜日までは上田教授と美香先生の2人と大和王国の医療スタッフ。土日は大和王国の医療スタッフが診察する事になった。時間は14時頃。

 当初、上田教授は「私は毎日、来ますよ」とニコニコしながら言っていたけど、ぼたんが「申し訳ないから。それだけは止めてほしい」と言って回避された。


 もしも、ぼたんに何かあった場合は大和王国の医療スタッフが対応する事に決まった。うちのスタッフなら転移魔法ですぐに対応可能だからね。情報共有は14時頃の診察の際にする。

 薬の服用についても事情を説明してストップしてもらった。他にも色々と話し合った。例えばマスコミへ伝える内容とかね。

 そして最後に上田教授が「また来ますので何でも相談してくださいね」と言って、上田教授と美香先生の2人は去って行った。


「いい先生で良かったわ。生命神さんの部下のお蔭もあると思うけど、気分が楽になった」


「……やぁ。皆、色々とお疲れ様~」


「あっ!のぞみ!私の事、分かる?」


「ブリタニアさん、当然でしょ?僕は僕だよ。いやぁ~まさかこの世界でも僕が必要になるとは思わなかったけどねー」


「のぞみ、一応、女王として必要かどうか分からないけど……のぞみ、あなたを正式に国王補佐官に任命します。よろしくね!」


「うん、女王陛下ありがとう。こちらこそよろしく!紗也華さんも色々と大変だったね」


「まぁね。お蔭で光一に会えたから良いけどもさー」


「ぼたんさんもお疲れ様。僕はこんな性格だからさ。一言だけ。まぁゆっくり休めば良いさ」


「ありがとう。のぞみにも会いたかったわ」


「おー!嬉しい事を言ってくれるねー!イブちゃんには僕から説教しておいたよ。何やってんだお前はってね。コイツさー。最低だよ?頭が悪くなっていたのは興奮したからって言ったんでしょ?でもそれだけじゃないんだよ。新薬の開発に力を入れていたからでもあるんだよ」


「のぞみちゃん!」


「イ~ブ?私、聞いていない気がするわ」


「……ぼたんさん、言っていないからね。仕事の話は出来るだけしたくなかったのよ。特にこの件についてはね」


「イブちゃんはね。ぼたんさんの事を思って話さなかったんだってさ。仕事の話をして悪化する事を懸念したみたいだよ。でもさぁ、ニュースをみたらバレるから無意味だと僕は思うんだよねー」


「どういう事?私は今、落ち着いているわ。だから教えて。何の話なの?」


「分かったわ。ぼたんさん、耐性菌の話よ。まずは最悪な情報を伝えるから落ち着いて聞いてね?問題ない?」


「私は問題ないわ。話してもらえる?」


「先程、私は記者会見を開いたの。そして、国家緊急事態管理法の第32条に基づき、国家緊急事態を宣言。パンデミック防止に関する大統領令に署名した事を発表した。具体的には日本人の出国を禁止するものよ。入国は問題ないわ。まぁ日本側が出国を禁止しなくても、世界各国で日本からの自国民以外の入国拒否をすると思うけどね。それから大和王国民を除く外国人の入国拒否ね」


「……え?パンデミック防止?」


「ぼたんさん、そうよ。それから感染症対策特別措置法の第45条に基づき、感染症警戒レベル3のコードレッドを発令。流石に現段階で警戒レベル5のコードブラックは出せないわ。経済的ダメージが大きすぎる」


「ちょっと!コードレッドって地域間の移動制限等の強い措置が含まれているじゃないの!日本で何が起こっているの?」


「ここはセキュリティが強固で盗聴の心配がないから国家機密レベルの話も出来て良いわね。ぼたんさん、私達が『国内でも薬剤耐性菌が増えている』と認識していた菌、あるいは疾病名を覚えている?」


「覚えているわ。カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症よね?」


「……え?」


「あれ?孝次さん違った?」


「ち、違うよ!腸内細菌科細菌じゃない!肺炎クセー球菌だよ!」


「ブッ!」


「紗也華さん。今、真面目な話をしているのよ」


「いや、だってさ。イブ?何その菌?臭いの?」


「違うわ。ギリシャ文字で14番目の……現代日本の読み方で言う『クサイ』よ。ギリシャ文字で21番目の肺炎ぺー球菌まであるわ。現代日本の読み方で言うと『ファイ』ね。まぁその内、今も残っているのは肺炎クセー球菌だけだけど」


「だったらさ。肺炎球菌で良いじゃない」


「紗也華さん、一般的に肺炎球菌と呼ばれているのは肺炎レンサ球菌よ。肺炎クセー球菌とはまた別。肺炎クセー球菌は1931年にシルムビオロギーアーゲーが生物兵器として開発したものなの」


「へー知らなかったわ」


「さっき21番目まであると言ったけど、クセー以外は失敗作だった。そして、たった一つの成功作である肺炎クセー球菌はね……研究所から漏れた。まぁ成功作と言っても一般的な抗菌薬が効くようなレベルではあるんだけどね」


「駄目じゃん。駄目、駄目じゃん!」


「だけど、厄介な事に一般的な肺炎球菌のワクチンが効かない。更に抗菌薬が効くというのもあって、肺炎クセー球菌専用のワクチンは不人気。ワクチンの効果も微妙だから尚更ね。あーちなみにどうでもいいけど、シルムビオロギーアーゲーは倒産しているわ。まぁ当然よね。お漏らししたんだもん」


「へー。解説ありがとう」


「紗也華さん、良いのよ」


 アーゲーって確かドイツにおける株式会社よね?本当にどうしようもない駄目な会社ね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ