888 合言葉と涙を流す紗也華
地球:202X年11月11日
火星:1年6月3日
~ブリタニアの視点~
「私、身体を5体にしたわ。病室、天界、火星、大統領代行、予備ね。夜は予備の身体を病室で使うわ」
「イブ、それは凄いけどお金は大丈夫なの?」
「ぼたんさん、心配ないわよ。それより彩花さんも泊まると良いわ。紗也華さんと光一さんが心配でしょ?」
「そうですね。でもベッドはどうしましょうか?」
「それなら……よいしょっと」
(ドシン)
「……え?イブさん、そのベッドは?」
「孝次さん、クイーンサイズのベッドよ」
「見りゃ分かるよ!兄貴と紗也華さんのベッドに向かい合うカタチで置かれたそのベッドはどうしたの?」
「本国でつくったものよ。良いベッドでしょ?」
「はぁ……そうだね。良いベッドだね」
「彩花さん、ぼたんさん。入院の準備をしましょう?ベッド、別々が良かった?」
「いえ、私は同じベッドの方が嬉しいです。着替えを取ってきますね。それから着替えて来ます」
「私も同じくよ。イブ、記者会見の準備をお願い。私、国民に謝罪をしたいの」
「お断りするわ。美香さんに『仕事が出来る状態にない』って言われたでしょ?私が明日、国王代理の千代と共同会見を開くわ」
「そうだったわね。私は任期5年で終わりかな?国民の為にやりたい事はまだ沢山あるのにな。光一にも怒られちゃうな」
「ぼたんさん、あなた大統領になったばかりじゃないの。残りの任期はまだまだある。それにね?国民も分かってくれるわ。悲観的にならないで。何の問題もないわ」
「ごめんなさい。温泉に入って来ても良い?彩花と一緒なら良いでしょ?彩花お願い。私、もう疲れた」
「私は良いですが、ぼたんさん。着替えも一緒に取りに行きましょうね」
「2人だけでは心配だわ。天界にいる妻、全員で温泉に入る事。良いわね?ゆっくりして来て良いから」
「彩花ありがとう。皆にまで迷惑をかけられないわ。弱いところも見せたくない。だから彩花とだけで……」
「皆も賛成しているわ。迷惑だと思う必要はない。それから家族には弱いところを見せても良いじゃない」
「分かった。指示に従うわ。それじゃ行ってくるわね」
「私も行ってきます」
2人は去って行った。
「光一がぼたんを心配する理由が分かったわ。光一。私はブリタニアよ。手を握るわね……あなたは何も心配する必要はないわ。私達に任せて。お願いだからもう無茶はしないでね。紗也華と何を話しているのかな?紗也華に怒られていない?大丈夫?午後には皆、来るからね。私もだけど皆、あなたの事を愛しているわ」
孝次さんが来た。
「孝次さんも話してあげて。きっと聞こえているから」
「そうだね。おーい。憎たらしい妹よ。聞こえているかー?まぁたまにはゆっくりと休めよ。その間、僕たちは美味しいものでも食べながら待っているからな。妹よ。食事が出来なくて残念だったな。匂いで我慢すると良いぞ。あーそうだ。ブリタニアさん、場所を代わってもらえるかな?」
「良いわよ」
「ありがとう。妹よ。念の為、合言葉を決めておこう。紗也華さんの意識が戻った時に、本当に2人で会話していた証拠があった方が良いだろう?」
孝次さんはそう言うと光一の耳元で何かを話した。
「どうだ?ねぇねぇ今どんな気持ち?感想も教えてほしいね。ブリタニアさん、合言葉は聞こえたかな?」
「いえ、聞こえなかったわ。隣にいる私が聞こえなかったのだから問題ないわね」
「ありがとう。僕の隣にいるブリタニアさんも合言葉は聞こえなかったみたい。だから、合言葉は証拠になるよ。よろしくなー。僕からは以上。また気が向いたら話しかけてやる。感謝しろ。そんじゃまたな。ブリタニアさんとイブさん。合言葉を教えるね」
「お願いするわ。あっ!イブ!紗也華のご両親に連絡は?」
「連絡したわ。もう少ししたら、私が迎えに行く予定になっているわよ。ご両親が来たら意識が戻るかもしれないし」
「イブ、ありがとう」
「良いのよ」
「ブリタニアさんとイブさん。合言葉はこれね」
孝次さんはそう言うとスマホの画面を見せてきた。メモアプリに合言葉を入力したみたいだ。
「ふふっ。私は紗也華から話を聞くのが楽しみだわ」
「そうね。孝次さん、いいセンスだと思うわ」
「イブさん、ありがとう」
「あっ!紗也華さんのご両親の準備ができたみたい。行ってくるわね」
「了解。イブ、よろしくね」
私がそう言うとイブは去って行った。
私は紗也華の所に行き、手を握った。光一もだけど紗也華の手はもっと温かい。
「紗也華、あなたのご両親が来るわ。あなたも疲れていると思うけど、そろそろ目を覚ましてもらえると嬉しいわ。あーでも。無理はしないでね。可能ならで良いわ」
紗也華の目から涙が出てきた。次から次へと出てくる。
「えっ!?紗也華、どうしたの?ごめんなさい。私、何か変な事を言った?それともどこか痛い?辛いことでもあった?あーどうしたら良いのかしら?」
「……戻ったわ。ブリタニアさん、どうかした?」
「紗也華に話しかけたら何故か泣いてしまって……」
「ブリタニアさん、おはよう。紗也華の父です。娘が心配をかけてすまないね」
「おはよう、ブリタニアさん。大丈夫よ。落ち着いて。どんな話をしたの?」
私は紗也華のご両親に挨拶をしてから、何を話したかを教えた。
紗也華のご両親はイブが持ってきた椅子で、紗也華の隣に座った。
「そう。私達が来ると聞いて安心しただけかもしれないわ。ブリタニアさんは何も変な事を言っていないから安心してね」
「うん、ありがとう」
「それじゃ私もせっかくだから紗也華に声をかけるとしよう。失礼するね……紗也華、お父さんだ。聞こえるかな?心配はしているけど、申し訳ないとか思う必要はないよ。事情はイブさんから聞いている。辛かったね。心身共に今は休むと良い。愛しているよ。お母さんに代わるね」
「紗也華。あなたの手、温かいわね。お母さんよ。どうして泣いているの?お母さんもだけど、お父さんも怒っていないわ。それとも私達が来て安心したのかな?嫌な夢を見ていないと良いのだけど大丈夫?安心してゆっくりと休んでね。お父さんは明日も仕事を休んだわ。土日も私達はずっと家にいる。私達はゆっくりと、あなたが目を覚ますのを待っているわ」
「紗也華。お父さん達は紗也華が戻って来たらね。すぐに駆けつける。深夜でも構わない。お父さん達に色々と話を聞かせてもらえると嬉しいな」
「お母さんがハンカチで涙を拭いてあげる。さーやか。お母さんは紗也華の笑っている顔が見たいわ。お母さんも紗也華を愛している」
「お母さん!紗也華が笑顔になったよ!」
「本当ね。紗也華、お母さん。嬉しいわ。あなたには笑顔が似合うわね。私達はもう少し傍にいるわね。孝次さんだったわね?ご挨拶が遅くなりごめんなさい」
「おっとそうだったね。孝次さん、すまないね。君は大丈夫かい?」
「いえ、謝らないでください。お疲れ様です。いつも兄がお世話になっております。はい、私は大丈夫です」
「そうか。ありがとう。ウィンドウさんとアクアオーラさんもすまないね」
「ごめんなさいね。娘がお世話になっているわね。いつもありがとう」
「いえいえ、お気になさらないでください。こちらこそ紗也華さんにはいつもお世話になっています」
「ウィンドウさんの言う通りです。私達の事はお気になさらずに。いつもお世話になっております」
「せっかくだから皆さん、色々と話をさせてもらえるかな?雑談をしよう」
「そうね。色々とお話をしましょう」
私がそう言うと雑談が始まった。お昼近くになると、ぼたんと彩花が戻って来て、2人も話に合流した。
紗也華のお父さんとお母さんは最初はそろそろ帰ると言っていたけど、せっかくだからと一緒に昼食を摂りながらお話をした。
予定通り皆でカツ丼を食べた。とても美味しかったわ。昼食後もしばらく話していたけど、紗也華のご両親は帰っていった。
「イブ、議長に送付する文書はどうすれば良い?」
「文書はパソコンで作成して印刷したから内容を確認して、2枚にサインをしてもらえる?2枚は同じ内容だけど念の為に確認して」
「分かったわ。議長2人分ね」
ぼたんは真剣に2枚の文書の内容を確認していく。
「彩花、皆は大丈夫そう?」
「はい。ブリタニアさん、レーネさんがいますから天界の方は心配要りませんよ。一応、1人ずつ大和王国の医療スタッフが個別に話をするみたいですし、問題ないと思います」
「そうなの?まぁリアのお母さんのレーネも色々と苦労して来たからね。レーネなら安心出来るわ。イブもよろしくね」
「もちろんよ。ブリタニアさん、任せて」
「……イブ、確認してサインをしたわ。後は何か必要?」
「いえ、後は私の方で適切に処理するわ」
「充電道路等の計画は予定通りに進めてもらえる?」
「了解よ。他に何かある?」
「1つだけ。イブ、私の事は気にせずに国民の為に必要な事は進めてもらえる?」
「分かったわ。仕事の心配はしないで大丈夫よ」
「ありがとう。私さ。思ったんだけどね。いっそ私は大統領を辞職して、イブが大統領になれば……」
「ぼたんさん!私はあくまでも副大統領。そして大統領代行。あなたが大統領じゃないと駄目なの。これは光一さんの意思でもあるわ。そうでしょ?」
「はぁ……そうだけどね。私が大統領で良いのかな?」
「あなたは国民から選ばれたわ。もっと自信を持って」
「そうね。ごめんなさい」
「寝た方が良いんじゃない?」
「残念ながら眠れそうにないわ」
「でもベッドで休んで?ね?」
「分かった」
「ぼたん立ちなさい!」
「ビンタされるのかな?もういっそ思いっきりやって気絶させて」
「良いから立ちなさい!」
「分かった。覚悟は出来たわ」
「目をつぶって」
「そうね。そうするわ」
ぼたんが目をつぶると、私は思いっきり抱きついた。
「あなたは疲れているの。そんなあなたをビンタなんてしないわ」
「え?ブリタニア?」
「どう?少しは落ち着いた?」
「えぇそうね。ありがとう」
「ベッドに入る前にお願いがあるわ。ぼたんと彩花、光一と紗也華に声をかけてあげて」
「分かったわ。心配かけてごめんなさいって謝らないとね。そして安心してゆっくりと休んでもらう」
「私も分かりました」
そうして2人は光一と紗也華に話しかけた。
それが終わり、2人がベッドに入ると、天界組の妻が次々と来て私達や光一と紗也華とお話をした。
夜になり夕食は予定通り、お寿司を食べた。とっても美味しかったわ。光一と紗也華にも食べさせてあげたい。
今日は皆、順番にお風呂に入って寝た。結局、この日、光一と紗也華の意識が戻る事はなかった。
ぼたんは薬を服用したが中々、寝付けないでいた。私は睡眠魔法を提案してみたけど、何かあったら起きられないのが怖く、使いたくないみたいだ。
皆、23時にベッドに入った。孝次さんはすぐに眠りにつき、彩花は23時半頃に眠りについた。
私はぼたんが気になって様子を見ていた。ぼたんは25時に眠りについた。それを確認して私も寝た。
私が寝るまで光一の心臓が止まる事はなかった。





