885 しつこい寄生虫
地球:202X年11月10日
火星:1年6月2日
「ブリタニアさん。自己紹介が遅れたけど、私、孝次さんと結婚する事になった優紀よ。よろしくね」
「あー!イブから聞いているわ。おめでとう。こちらこそよろしくね」
「ありがとう!嬉しいわ!それじゃ孝次さん、後はお願い」
「優紀、分かったよ。妹よ。話がある」
「なにかな?」
「子どもについて教えてほしいな」
「……孝次さん、それなら私から教えるよ。お父さんは疲れたでしょ?寝ていて良いよ」
「それじゃ優紀、お願いするよ。スマン弟よ。優紀とイブに聞いてもらえないかな?それでも分からない事があれば、明日、僕が答えるよ。駄目かな?夜更しするつもりだったけど体力的にキツイ」
「僕はそれで構わないけど、大丈夫か?」
「弟よ、その調子だ。心配ありがとう。大丈夫だよ。ただ……」
「光一さん、ウィンドウは心拍数の急激な上昇を確認したわ。無理しないで」
「はぁはぁ……うん…………集中していないと……眠りそう」
「妹よ。無理せずに寝ると良い。僕は大丈夫だ」
「うん……はぁはぁ。その前に…お手洗いに……はぁはぁ」
「光一さん、もう話さなくて良いから。ウィンドウとアクアオーラさんに任せて」
「アクアオーラは心配だからトイレ中も一緒にいるけど良い?嫌なら首を横に、良ければ縦に振って」
僕は首を縦に振った。頷いた。
「光一さん、ありがとう。それじゃ行きましょう」
「光一、愛しているわ」
ブリタニア、僕もだよ。頷いておいた。
そして、僕はトイレに行き、ベッドに戻ると眠りに落ちていった。
地球:202X年11月11日
火星:1年6月3日
~イブの視点~
今は午前3時。
光一さんが寝た後、孝次さんと皆で色々とお話をして、皆も眠りについた。
現在、優紀は充電の為、不在。アクアオーラもセンサー関連に深刻な故障が見つかり、メンテナンスに行っている。
早くアクアオーラ戻って来ないかしら。私もそろそろ充電しないと身体が動かなくなるのよね。
身体は3つあるけど、他の身体も現在、充電中。
「ウィンドウ、1人にしても大丈夫?そろそろ充電しないとマズイの」
「イブお母さん。大丈夫よ。何かあったら連絡するわ」
「それじゃお願いね」
「了解よ」
~ウィンドウの視点~
イブお母さんは去って行った。
アクアオーラさん、大丈夫かな?すぐに戻って来るとは言っていたけど、私1人は正直、心細い。
~約10分後~
あれ?センサーの応答がなくなった?でも障害通知はない……うん。やっぱりセンサーが応答しない。
いつからだ?どこで障害が発生している?自己診断テストをすると共にイブお母さんに報告。
『イブお母さん!』
『どうしたの?』
『センサーが応答しないの。自己診断テスト中よ』
『落ち着いて。いつからか分かる?』
『ごめんなさい。分からないの』
『障害通知は?光一さんの監視はどうなの?』
『イブお母さん、障害通知はないわ。光一さんの監視は、自動監視にして、異常があったら通知する設定にしているわ。異常の通知も特になしよ』
『センサーは全て駄目なの?』
『……自己診断テストの結果が出たわ!センサーは全てダウンよ!ログには特に異常の記録はなし』
『身体の機能は?』
『下半身も応答なし判定!マズイ!マズイ!座ったまま動けない!』
『声は出せる?ごめんなさい。私の身体もしばらく動けないの。新しくつくるには数分かかるわ』
『声は自己診断テストで問題なかったわ。でも試してみる』
「あーあー」
『問題なかった!』
『それじゃ誰か起こして!万が一があるわ!生命神さんは来ていないのよね?』
『そうだ!生命神さんにメールするわ!』
『お願いするわ』
メールを作成して送信。
『今、メールを送信したわ』
『了解よ』
「……ウィンドウさん、大丈夫?」
「生命神さん!私は良いから、光一さんの確認をして!」
「部下から報告がないから大丈夫だと思う……は?」
「ど、どうしたの?」
「なんで!?紗也華さん!ブリタニアさん!孝次さん!起きて!」
「はっ!なに!?」
孝次さん、流石。病院で夜勤をした経験があるからね。バッと目が覚めたわ。
「……んー!生命神さん、なに?」
「だれー?今、何時よ」
「紗也華さん、ブリタニアさん!寝ぼけていないで起きてってば!」
「はっ!どうしたの!?」
「えっ?なになに?」
「紗也華さん、ブリタニアさん。光一くんの心臓マッサージを急いで!早く!」
「分かったわ!光一!……マズイ!マズイ!光一の体温が!……心臓マッサージするわ!」
「紗也華さん、お願い!まだかろうじて光一くんの魂は身体にあるから諦めないで!」
「かろうじてって……生命神さん、どういう事よ!ごめんなさい。責めるつもりはないけど説明して」
「ブリタニアさん、何故か僕の部下が全滅しているんだ。いつの間にかね。イブさんと優紀さんは充電の為、不在。アクアオーラさんはセンサー関連に深刻な故障が見つかりメンテナンス中。ウィンドウさんもセンサーが全て使えない。下半身も動かない状態。ウィンドウさんは障害通知が無くて、異常に気付くのが遅くなった」
「え?最悪な状況じゃないの。ウィンドウ大丈夫?光一がこうなってから最大で何分?」
「ブリタニアさん、ごめんなさい。最大で10分」
「10分って……生命神さん、正直に言って。助かる確率は?」
「……10分だとゼロから2%だね」
「そ、そんな……」
「そうだね。10分はマズイね。心静止?つまりもう完全に心臓が止まっている?」
「孝次さん、認識の通り。心静止だよ」
『イブお母さん』
『ごめんなさい。ウィンドウの通信を盗聴させてもらっているの。状況は把握しているわ。私の責任よ。身体の1つが50%まで充電出来たわ。今、そっちに向かう』
『イブお母さん、了解よ!』
「……ごめんなさい。お待たせ」
「イブ、来てくれてありがとう。ウィンドウを助けてあげて!」
「ブリタニアさん。今、大和王国の職員が来るわ。ウィンドウ。あなたは何も気にする必要はないからね」
「イブお母さん、ありがとう」
「……お待たせしました。ウィンドウさん。私達が運びます」
「2人共ありがとう。お願いするわ」
~紗也華の視点~
ウィンドウが去ってから約2分が経った。
「イブ、代わってもらえる?」
「了解よ。紗也華さん、代わるわ」
「お願い。ウィンドウとアクアオーラの子どもは大丈夫?」
「問題ないわ。2人共、頭の問題だからね」
「そっか。良かった」
「光一おかしい!不運過ぎるわ!タイミングも悪いし、ウィンドウとアクアオーラの2人に異常が発生するのはおかしい!」
「そうね。エテルノの母親役としてもそう思う。偶然というのはあり得ない。特にウィンドウの症状は変だわ」
「ステータスを確認してみる!……ひぃっ!」
ん?ブリタニアが青ざめた。何だろう?
「イブ!す、すぐにナビィとエイドを呼んで!早く!」
「わ、分かったわ」
「他の妻の安全確認もお願い!起こさなくても良いから!」
「すぐに対応するわ。でもどうしたの?」
「邪神よ。アイツまだ生きてる。絶対にそうよ!紗也華もステータス見てみて!幸運ステータスと加護だけで良いから」
「分かった」
ステータスを確認する。
【幸 運】1,500(指輪;3,000)(加護:-3,000)
【加 護】創造神の加護、光一の加護、邪神の加護
幸運ステータス1,500が指輪の効果で2倍になって、それが加護でマイナスされてゼロになっている。
そして加護に邪神の加護がある。なんで?私は生命神さんにそれを説明した。
「チッ!だからだ。しつこいヤツだな。アイツ光一くんの中で生きているんだ」
「それはおかしいわ。私、ナビィさんとエイドさんに確認したの。邪神は完全に消えたって言っていたわ。判断材料は邪神が食べた魂が解放されてキラキラと飛んでいる事。先程までは少し臭いがしたけど完全に消えた事よ」
「うん。でもその時はそこに光一くんはいなかったでしょ?2人の話は事実ではあると思うよ。魂の解放と臭いが消えた事。でもね。言葉ではなんて言えば良いんだろうな?邪神は自分の魂を分けるのが得意なんだ。分霊って言うのかな?」
「分霊?」
「そう、紗也華さん。自分が消える直前に魂を分けて生き延びたんだ。本当に器用でしつこいヤツだよ。言われてみればかすかに臭う。どこにいるんだ?……みっけ。光一くんの魂にしがみついている。やぁ?邪神くんよ。聞こえるかい?」
返事がない?
「そっか。力が弱すぎて喋れないか。光一くんも言っていたけど寄生虫みたいだね。会話を出来るようにしてあげるよ」
『ギャァァァッ!どいつもこいつも本当に腹が立ちますね!』
「あっ!聞こえた」
私、思わず反応しちゃった。
『おや?本当に聞こえているんですか?それならざまーみろ!火星神は死にました!ギャハハハハハ!』
「いやいや、死んでないから。死んでいたら寄生虫の君も消えているでしょ?やっぱり頭悪いね」
『ギャァァァ!本当の本当に腹が立ちます!不快です!』
「あなたね!私が分かる?第一王妃のブリタニアよ!良い?あなたは今度こそ死ぬの。そしたら光一は幸運ステータスが元に戻り、意識を取り戻すわ!あなたの負けよ!」
『ギャハハハハ!僕は死にましぇーん!よいしょっと!』
ん?私の中に何か入って来た気がする。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!痛い!痛い!助けて!」
私は激しい頭痛に襲われた。頭をナイフで抉られる。そんな痛さだ。
「紗也華!?」
「紗也華さん!」
私はその場に崩れるように座り込んだ。
『火星神め。貴様の負けです。ギャハハハハハ!』
「嫌だ!嫌だ!嫌だぁ!」
私は次から次へと辛く嫌な記憶を思い出した。特に拷問されたりと地獄の様な日々を思い出して絶望した。
「紗也華さん!何をされているのか僕に教えて!」
「紗也華!」
私は涙が出て来た。
『この女は弱い。ギャハハハハハ!』
「嫌だぁ!もう止めて!私の心をグチャグチャにしないで!その記憶は嫌っ!」
「マズイ!紗也華さんの魂が弱っている!イブさんまだ!?」
「今、来るわ。それから全員の安全確認も終わった。無事よ」
私はその言葉を聞いて安心すると共に、意識を失った。
気がつくと私は拷問されていた。見覚えがある。フォルター帝国に拉致された時だ。
痛い。苦しい。辛い。これは夢じゃない。あの頃にタイムリープでもしたのかな?
あっ……身体を切断される。嫌だ!嫌!止めて!
知らない男の人達に身体を切断された。
もう嫌。光一が助けに来てくれると思って、今まで耐えていたけど助けに来ない。
今回は私、死んじゃうんだ。だったらもういっそ……そう思った時に声が聞こえた。
『紗也華。助けに行けなくてごめんね。でももう少しだけ耐えて。僕も頑張るからさ』
「こ…う……いち?」
『そう。僕だよ。辛い思いをさせてごめんね。今、助けに行く』
バカッ!遅いわよ!私はもう耐えられないわ。
『ごめん。もう少しだけ。もう少し耐えて。今、行くから』
分かったわ。
~ブリタニアの視点~
紗也華が倒れた!
「イブ!」
「本当に今、来るから」
「……お待たせー!」
「エイドもお待たせー!ナビィちゃんヤバいよ!」
「ヤバい!ヤバい!イブさん!シャーロットさんを呼んで!早く!この強さだと、ナビィ達は妨害しか出来ない!」
「わ、分かったわ!」
「ナビィちゃん!『我は汝に誓う、我が祖国』よ!」
「了解!せーのっ!」
2人は歌い始めた。良い歌声ね。
『オギャァァァァッ!や、止めてくださーい!ギャァァァッ!』
「効いているわ」
「いや、ブリタニアさん。邪神は紗也華さんの魂を食べて強くなってしまった。ナビィちゃんが言ったように妨害しか出来ていないよ」
「そんな……紗也華は大丈夫なの?」
「どんどん弱っている。もうマズイかも。本人が諦めたら紗也華さんは助からない」
「そ、そんな……生命神さん、何とか出来ないの?」
「紗也華さんの魂に寄生しているから無理なんだよ。それも奥に入り込んでいるからね。紗也華さんの魂も破壊してしまう」
「光一みたいに魔法で何とかならないの?」
「魂の奥に入り込んでいるから、紗也華さんの魂が防御壁になってしまうんだよ」
「イブ!シャーロットは?」
「今、目が覚めたわ。今から来る……え?」
「光一!良かった。助かったのね!紗也華が大変なの!」
「ハイパー…エクストラ……ホーリー…エクソシズム!僕の……妻に手を出す…な!」
『ギャァァッ!やっぱりお前は化け物デスかぁ……』
(バタッ)
「え?光一!光一!」
光一が倒れた。何で?
「イブさん!心臓マッサージを再開して!早く!」
「あっ!そ、そうね」
イブは心臓マッサージを再開した。え?
「ごめんなさい。困惑してしまったの。光一さんの心臓は止まったままだったわ。私のセンサーの故障を疑ったけど違った」
「うん。心静止のままだったよ。光一くん、無茶しやがって」
「どういう事?だって光一は……え?」
「愛する妻を守る為に光一くんは頑張ったんだよ。はぁ……本当にさぁ。脳細胞も殆ど死んでいるくせに。自分もボロボロのくせに。何やってんだよ」
「妹は……心臓が戻っても脳死かな?」
「いや、心臓が戻れば治療する。だけどいつ目が覚めるか分からない。さっき無茶をした影響で魂もボロボロなんだ」
「そっか。教えてくれてありがとう」
「お役に立てずに申し訳ない」
「いや、生命神さん。十分だよ」
「……お待たせしました。あれ?皆様、悲痛な顔をされてどうかされましたか?邪神は?」
「シャーロットさん。邪神は完全に消えた事をナビィは確認したわ。今度こそ本当に消えた」
「……エイドも確認した。光一さんが頑張った」
「え?」
「シャーロット。状況は後で話すわ。生命神さん、紗也華は大丈夫なの?」
「今、治療をしている。紗也華さんは精神的にもだけど魂がボロボロでね。いつ目が覚めるか分からない」
「紗也華……それだけ辛かったのね。シャーロット、せっかく来てもらったのにごめんね」
「いえ、お役に立てずに申し訳ない気持ちでいっぱいです。状況を教えてください」
私はシャーロットに状況を説明した。
「そうでしたか……愛の力で。生命神さん、光一さんの手を握っても良いですか?」
「うん、良いよ。握ってあげて」
「それでは失礼して……光一さん。体温が低いですね。魔法で温かくしてあげても良いですか?愛で温かくしたいんです」
「良いよ。シャーロットさん」
「生命神さん、ありがとうございます。それでは……ハイリヒリーベ」
あっ!光一が数秒間、光に包まれた。
「温かくなりましたね!光一さん、聞こえますか?疲れましたよね?でも頑張ってください。愛していますから」
「イブさん!」
「分かっているわ!シャーロットさん離れて!」
「え?」
「シャーロット!お願い!離れて!光一の心臓が動き始めたの!」
「あっ!は、はい!」
「よし。良いわね。ショックを行うわ。近付かないでね……ショック完了!心臓マッサージを再開するわ!」
「イブさん、お願いね」
「ナビィ歌うー!」
「エイドもー!ナビィちゃん。また『我は汝に誓う、我が祖国』にしよ?」
「了解よ。せーのっ!」
ナビィとエイドが歌い始めた。相変わらず良い歌声。
そして約2分後、1番の歌詞が終わると光一に反応があった。
「イブさん!」
「分かっている。後はお願いね」
「了解。僕に任せて。皆、光一くんは助かるよ」
「イブ、それからシャーロット、ナビィ、エイド。ありがとう。生命神さんもよろしくね」
「ブリタニアさん、任せて」
「私は少しでも役に立てたなら嬉しいわ」
「なに言っているの?イブのお蔭よ。ありがとう」
「こちらこそありがとう」
「私、お役に立ちました?手を握っただけですが?」
「シャーロット、あなたの愛が光一に伝わったのよ」
「そうですか。それなら良かったです」
「ナビィは歌っただけだけどね」
「エイドも」
「2人のお蔭で紗也華も光一も助かったのよ。2人の歌声はきっと届いたわ」
「そう?」
「ナビィちゃん!」
「「いえーい!」」
光一と紗也華。お疲れ様。ゆっくりと休んで。





