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884 光一、意識喪失でピンチ

 地球:202X年11月10日

 火星:1年6月2日


 ~紗也華の視点~


「そっか。お疲れ様。それじゃ……うっ」


 えっ?なに?意識を失った!?


「光一!」


「あ、兄貴!」


「……お待たせ!心臓が止まっているんだ!でも何で!?」


「光一、何もしていないわよ。だ、大丈夫よね?」


「まずい!薬を投与するね……紗也華さん。心臓マッサージの方法は分かる?」


「分かるわ!位置も覚えてるから大丈夫!」


「お願いするよ。僕は後ろを向いているから。孝次さんもね」


「もちろん、見ないよ」


「生命神さんは見ていても……」


「僕は見なくても様子は分かるから大丈夫。それより早く!」


「分かった。人工呼吸もして良い?」


「出来るならお願いしたい」


「了解よ」


 高校で練習したから大丈夫だ。いける!

 私はヒカリの姿をした光一の服を脱がせ、心臓マッサージを開始した。

 そして人工呼吸。うん。練習通りだ。上手くやれてる。


「紗也華さん、いいよ。そのまま続けて」


「生命神さん……ありがとう。続けるわ。でもAEDは?」


「完全に心臓が止まっているから使えない。心静止って言うんだけどね。心停止の最も深刻な形態」


 それってマズイんじゃ?お願い動いて!


 ~約2分後~


「紗也華さん、ウィンドウさんに代わってもらう事は可能?」


「光一の命が助かれば何でも良いわ!何で!何で動かないの!」


「紗也華さん、代わるわ」


「お願い。ウィンドウ」


 ウィンドウに代わってもらった。

 その後、2分間毎にウィンドウ、アクアオーラ、私の3人で交代を続けた。


 ~約10分後~


「生命神さん、光一はもうダメかな」


「紗也華さん、諦めないで」


「でも10分以上経ってる。流石に私でも分かるわ」


「大丈夫だから。ね?」


「ブリタニアさんと、ぼたんさんを連れて来るわ」


「イブ、お願いね」


「うん。行ってくる」


 そう言うとイブは転移魔法で去って行った。

 もう光一は駄目なんだ。


「いっそ。心臓を刺してみようか?」


「紗也華さん、お願いだから止めて」


「それじゃ心臓を殴ってみる?」


「紗也華さん!しっかりして!」


「生命神さん、私は正気よ?」


「戻って来たわ」


「紗也華!」


「あっ!ブリタニア。ブリタニアはどう思う?いっそ光一の心臓を刺して治療するか、殴ってみるか。どっちが良いかな?」


「紗也華!どっちも駄目!あなたがしっかりしなくてどうするのよ!ぼたんもしっかりして!」


「ブリタニア?私、もう駄目かも。私のせいだ。私が言いだしたから」


「ぼたんー?ぼたんのせいじゃないよ?悪いのは犯人。今から犯人をボコボコにしに行こうかー?」


「紗也華!あなたどうしちゃったの?」


「紗也華さん、代われる?」


「うん!代わるー!でもこれが最後かな?これで駄目なら駄目よ」


「本当に大丈夫?紗也華さん」


「アクアオーラ。大丈夫だって。それじゃ代わるね」


 私はアクアオーラと代わった。

 自分でも分かっているんだ。狂っているって。でも精神的にこうでもしてないとね。

 心臓マッサージを30回だー!……そして人工呼吸~!


「紗也華さん!」


「……なにー?生命神さん?」


「心室細動だよ!ウィンドウさん、魔法でAEDの真似は出来るかな?除細動!」


「もちろん出来るわ!」


「紗也華さん、離れてウィンドウさんに任せて!ウィンドウさん、安全確保したら除細動を行って!」


「え……?」


 私は数秒間、何を言っているのか理解出来なかった。


「紗也華さん!離れて!早く!」


「……あっ!ウィンドウ、分かったわ」


「ウィンドウさん、待って!生命神様、ウィンドウには子どもがいます。優紀がやります」


「あーごめん。そうだったね。焦って忘れてた。ごめん。優紀さんお願い」


「ウィンドウさん、代わるわね。私に任せて」


「うん、お願いね」


「ショックを行います!近付かないでください!……実行します!……ショックが完了しました」


「うん、大丈夫だよ。ウィンドウさん、心臓マッサージをお願い」


「いえ、このまま私がします。その方が効率的です!」


「分かった。優紀さん、お願い」


「了解です!」


「光一!しっかりしなさい!ブリタニアよ!」


「ぼたんさん、聞こえるかしら?」


「……なに?イブ?」


「光一さんは助かるわ。だから元気を出して。光一さんに呼びかけてあげて」


「でも……」


「光一さんはね。ずっとあなたの事を心配していたわ。元気な声を聞かせてあげて。この病室は防音対策はしっかりしてあるから大丈夫よ」


「心配してくれてたの?」


「そうよ。ずっとね。明日もあなたとの時間を作りたいって言っていたわ。心配だからってね」


「そっか。私、何やってんだろうね。一番、辛い人に心配かけてどうするのよ。スーハースーハー。うん!大丈夫!」


「紗也華さんも!何をボケーってしているの?声をかけてあげて!」


「光一!私よ!ぼたんよ!戻って来なさい!この大馬鹿者!」


 私もしっかりしなきゃ!


「私の声が聞こえたら返事しなさい!光一!紗也華よ!」


「……あー。あぁ」


「優紀さん!心臓マッサージを止めて!光一くん!聞こえたら返事するか頷いて!」


「……あぁ」


「よし。もう少し我慢してね!脳を治療するから!」


「あーあー」


 生命神さんは光一の頭に手をかざして光を注ぐ。私は緊張しながらその様子を見守った。

 何分間経っただろう?数分だと思うけど、とても長く感じた。生命神さんは光を注ぐのを止めた。


「生命神さん、光一は?」


「紗也華さん。少し眠ってるよ。ごめんね。結局、僕、見ちゃったね」


「光一が助かるなら何でも良いの!後遺症は?」


「一時的な記憶の混乱かな?他は治したから大丈夫。今の内に服、直してあげて」


「それならウィンドウがするわ」


「お願いするね。ぼたん、抱きしめたいんだけど良い?」


「紗也華、私を?それなら同じ気持ちだったから良いわよ」


「ありがとう。心細かったの」


「同じよ。中身オバサンなのに何やってんだろうね私。一番、しっかりしなきゃなのに」


「ぼたんさん、仕方ないわ。あなたも疲れているの。明日、ゆっくりと休んで」


「そうね。イブ、いつもありがとう」


「良いのよ」


「あー紗也華。あなた温かいわね」


「ぼたん、あなたも温かいわ」


「ちょっと!私も仲間に入れなさいよ!」


「それならそうと言えば良いのよ」


「ブリタニア、ぼたんの言う通り」


「抱きついてやる!」


「おーっ!ブリタニア、あなた強いわね」


「そりゃ紗也華、私は経験者だからね」


「あー、そうだったわね。あなたも沢山、苦労して来たわよね」


「まぁね。でも紗也華よりマシよ」


「それもそうか」


「光一さんの服、直したわ。孝次さん、大丈夫?」


「えっ?あぁ。僕なら大丈夫だよ。ウィンドウさん、お気遣いありがとう。何だか現実感がなくてね。様子を見ていないってのも大きいのかな?まぁ医療現場でも働いていたからね。それも夜勤で。人の死には良くも悪くも慣れているかもしれない。感覚が麻痺しているとも言うかな?」


「そうなんだ。大丈夫なら良かったわ」


「おっと!意識が戻るよ」



 ~光一の視点~


「……うぅ?」


 何だ?何だ?頭がボーッとする。


「……い……。こう……く…。きこ……か…」


 誰だろう?誰と言えば私は誰だろう?うーーん。思い出せない。

 目は?……まぶたが重くて開かない。腕は?手は?……どっちも駄目。真っ暗闇で身体が動かない。不安になってきた。


「き…える…い?」


『聞こえたら左右に首を振って』


 左右に首を?……振れた!


『自分の名前が分かる?』


 自分は誰だ?こう(ズキンッ)いてっ!頭が痛い!


『分からないか……ごめんね。頭が痛かったね』


 うん。痛かった。


『もう少し休んでいようか』


 うん。何だか眠くなって来たよ。おやすみなさい。


『うん。おやすみ』



 ~紗也華の視点~


「生命神さん、どう?」


「紗也華さん、一時的な記憶障害と身体の機能喪失だね。眠ってもらったよ。5分後に再度確認しよう」


「分かったわ。ぼたんとブリタニアどうする?帰る?」


「まだ心配で帰れないわよ」


「ブリタニアの言う通り」


「それじゃ待ちますか」


 ~約5分後~


「今度は紗也華さん、試してみて」


「分かったわ」


「今、眠りから覚めるはず」



 ~光一の視点~


「……ん」


 眠っていた。どれくらいだろう?頭がスッキリした。

 自分の名前は……光一!いえーい!調子が良いぞ!


「光一、聞こえる?」


「聞こえるよ。チョット待ってね」


 今のは誰だ?……紗也華!


「紗也華!相変わらず心地良い声だぜ!」


「ありがとう」


「目はどう?」


「おー!見事にモザイクですなぁ」


「どこまで覚えている?」


「えーっとね。ぼたんの記者会見を観た後に死んだ!」


「いや、生きてもろて」


「でも合ってるでしょ?」


「合ってるわ」


「どれくらい死んでた?」


「10分以上よ。その間、心臓が完全に止まっていたの。心臓マッサージと人工呼吸をしたわ」


「わーお。よく生き返ったものだ。自分、偉いぞ。人工呼吸は誰がしてくれたの?」


「私とウィンドウとアクアオーラよ」


「おー!ありがとう!……うなぎの味がするぜ!」


「唇をなめないで!恥ずかしい!それから優紀が除細動をしたの」


「という事は……紗也華、すまねぇ。胸、弟に見られた?」


「見られていないわ。後ろを向いていてくれたから。ただ、生命神さんには見られたけど」


「スマン!本当に申し訳ない!」


「光一の命の方が大切だから良いの。助かって良かったわ」


「うーむ?人影が……沢山?誰がいるの?」


「生命神さん、孝次さん、優紀、ウィンドウ、アクアオーラ、ブリタニア、ぼたん!」


「ゲッ!ブリタニアとぼたんもいるの?」


「チョット!どういう事よ!失礼じゃない!」


「まったくもう!心配したのよ!もう駄目かと思ったんだから!」


「ブリタニア、ぼたん。いやね?わざわざ来てもらって申し訳ない。それからご心配とご迷惑をおかけして本当にごめんね」


「謝るより感謝の言葉の方が私は好きだわ」


「そうね。ブリタニア」


「2人共ありがとう。本当にありがとう。特にぼたん。また記者会見させてしまって……それは謝らせて。ごめんね」


「謝る必要はないわ。私の仕事だもの。私こそ心配かけて、ごめん」


「いやー。僕が勝手に心配しただけだから謝らないでよ。元気ー?」


「私は元気よ。ありがとう」


「そっか。おっ!モザイクがなくなった!おー!僕の可愛い妻がいっぱいだ!ウィンドウとアクアオーラもありがとう」


「ウィンドウはお役に立てて幸せよ」


「アクアオーラもね」


「そっか。生命神さん、来てくれてありがとう」


「良いんだよ。腕はどう?手もだけど」


「正直、首から下の感覚がないっすね。まぁ痛くないだけマシだわ」


「大丈夫。すぐに感覚は戻るよ」


「そりゃ良かった。優紀もありがとうね」


「お父さんのお役に立てて幸せよ」


「そっか。おー!弟よ。心配したかね?」


「いや、まったく」


「相変わらず可愛くないヤツだ」


「おまえもなー」


「優紀、本当にこんなヤツで良いの?もっと良い人は沢山いるぞ?」


「お父さん、愛しているんだから邪魔しないで!」


「はーい。おっ!感覚が戻って来たぞ!手も腕も動く。問題ない!」


「それは良かった。それじゃ僕は帰るね」


「うん!生命神さん、ありがとう!またねー」


「ばいばーい」


 そう言うと生命神さんは去って行った。


「ぼたん。1つだけ言っておくぞ」


「なにかしら?」


「きっかけを作ったのは自分だと思っているけどね。それは違う。それを言ったら話を持ってきた生命神さんだよ。そしてもっと言うと、前回、事件に巻き込まれた僕が悪い。更にもっと言うとな、悪い事をしていた邪神が悪いんだ!だから自分を責める事はないぞ」


「そう……ね」


「もしかしたら、また発作があるかもしれない。しかーし!僕は滅びぬ。何度でも蘇るさ。フハハハ!」


「光一、それ死亡フラグだから笑えない」


「紗也華、そりゃ残念だ。でもな?フラグとは折るためにあるのだよ」


「光一、フラグを回収した事はあっても、折ったことあった?」


「……さぁ?」


「駄目じゃない」


「妹は相変わらず頭が悪い」


「おい!そこー!兄に向かって失礼だぞー!」


「事実を言ったまでだ」


「もう帰れよー。可愛くないヤツめ」


「やーだね」


「男のツンデレは可愛くないんだぞ」


「ツンデレじゃないわ!」


「そんじゃ天の邪鬼か。帰るなよ?」


「うん。帰らないよ」


「わけが分からないよ。弟よ。泊まるのは今日だけだよな?」


「そうだよ?今日は話がしたいから泊まるんだよ」


「……なら話が終わったら帰れよ」


「はぁ……察しの悪い妹だな。頭が悪いから仕方ないか」


「おい!」


「あのな?これでも心配はしているんだ。そして色々と感謝もしている。いても何も出来ない事を心苦しくも思っている」


「いや、心苦しく思う必要はないぞ。仕方ない。生命神さんでさえ苦労しているんだから」


「それでもだよ。役に立たないけど一緒にいさせてよ……親や上司に報告する必要もあるしさ」


「おいっ!最後ので台無しだよ!あのな?結婚するならもっと素直になれ。言葉で伝えるようにしろ?優紀に対してもそうだがな。職場でもそうだぞ」


「安心するが良い。妹に対してだけだ。言わせんな恥ずかしいってヤツだ」


「そっか。でもな?気持ちは分かるが恥ずかしがるな。素直に気持ちを伝えてくれないと分からん。異世界生活や結婚生活で困った事があっても、それを伝えてくれないと支援出来ない」


「仕方ないなぁ。優紀の為に出来るだけ頑張るよ」


「そうだぞ。今回もブリタニアに言うところだった。『こんなヤツ追い出して代わりにブリタニアが泊まる?』ってな」


「あーそれなら僕はソファで寝るからブリタニアさん、ベッドで寝ていきなよ」


「それは正直、助かるけど良いの?」


「良いよ。僕は明日、仕事は休みだし何の問題もないよ」


「ブリタニア、大丈夫だ。僕なんて夜勤の時は椅子で寝ていたからな。それに比べソファなら快適」


「それじゃお言葉に甘えるけど、光一は論外ね」


「何で!?ブリタニア、ソファで寝る人は結構いるんだよ?見たまえ。ソファにはクッションという名の枕があるではないか!」


「私は椅子で寝ていた件を言っているのよ。そんなんだから身体を壊したんでしょ?」


「その通りです」


「それじゃブリタニアさん、ベッドどうぞ」


「うん、ありがとう!」


「ぼたん、色々と辛かったね。明日はゆっくりと休んでよ」


「ありがとう。でも今晩は心配で眠れそうもないわ」


「いやいや、寝て。そうだ!誰かと一緒に寝なよ」


「今日は彩花と一緒に寝る予定よ。光一、愛しているから生きて」


「うん、もちろんだよ。僕も愛している。だから僕からは1つだけ。また何かあっても諦めないで。必ず戻って来るから。妻と子どもの為に戻って来る。だから皆、よろしく」


「分かったわ。それじゃ私は帰るわね。皆、光一をよろしく」


「それじゃ代表して紗也華どうぞ」


「ブリタニア、ありがとう。ぼたん、こっちはブリタニアもいるから大丈夫。そっちはよろしくね」


「分かったわ。でも皆、私より強いから大丈夫よ」


「ぼたん。皆、強がっているだけ。疲れているところ悪いけど皆をよろしく」


「そうね。了解よ。それじゃ光一、お大事に」


「うん、来てくれてありがとう」


 僕の言葉に頷くと、ぼたんは去って行った。

 894話までは2021年12月中。910話までは1月中に書きました。

 そして、2月中旬頃に体調を崩し、しばらくお休みさせていただきました。

 お待たせした方、ご心配された方スミマセン。ストックはありますので、マイペースで書いていこうと思います。

 引き続きよろしくお願いします。

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