881 幸運ステータスは冬休み?
地球:202X年11月10日
火星:1年6月2日
紗也華が泣き止んで食事も終わった。容器はイブが回収して店に返した。もう20時過ぎだ。
「光一、さっきはありがとう」
「うん?あー良いよ。僕の力だけでどうにか出来たら良いんだけどな。はぁ……役に立たないで迷惑をかけてばかりでゴメン」
「謝らないで。光一はいつも頑張っているし、役に立っているから!それは皆も言っていたでしょ?」
「うん、だけどさ。妻がツライ時に力になれないのは、本当に申し訳ない」
「私の方こそゴメン。もう言わない」
「いや、紗也華。良いんだよ。もっと本音を言って」
「それなら謝らないで!」
「う、うん」
「光一、紗也華さんのご家族も私達みたいにしたら良いじゃない?」
「いや、お母さん。簡単に言うけど神界も色々とルールがあるみたいで難しいんですね」
「少しは妻の為に努力はしたらどうなの?あなたそれでも夫?」
「光一のお母さん、良いの。本来、人はいつか亡くなるものだから。仕方ないの」
「紗也華さん……光一!」
「分かりました。お母さん、上司に土下座して頼んでみるよ」
「光一!家族のルール違反!」
「ルールとは破る為にあるんだよってね。冗談です。妻の為になら頑張らせていただきます」
「……やぁ。生命神だよ」
「あっ!生命神さん!治療ありがとうね」
「よく言うよ。腰も腕も激痛で苦しんでいるくせに。鎮痛剤を打つからしばらく横になっていて。トイレは?」
「流石だね。バレたか。トイレはまだ大丈夫」
「僕の部下が悲鳴を上げたからね。分かるよ。良い?しばらく横になっていてよね?」
「そういう事か。了解。ウィンドウとアクアオーラお願いね」
「光一、腕って?あっ!……ゴメン」
「紗也華、謝らないで。言ったでしょ?妻の為になら頑張るって」
「そんな事で頑張らないでよ。私、逆にツライじゃん。看病するどころか邪魔になっている」
「逆効果になって申し訳ない。だけど紗也華。いてくれるだけでも僕は助かっているよ。あーイテテ。2人共ありがとう」
「紗也華さんは光一くんの心の支えだよ?もちろん。ウィンドウさんとアクアオーラさんもだけどね」
「生命神さんの……言う通り。はぁはぁ。生命神さん?横になったら…更にキツイんですが?」
「光一!本当にバカなんだから!」
「紗也華さんの言う通り。光一くんはバカだよ。横になったからキツイんじゃなくて、痛みを意識したからだよ」
「あのー。輸血した方が良いんじゃないですか?」
「アクアオーラさん、血液は貴重だからね。こんな事で無駄にしたくないよ。それに痛いのはどちらかと言うと脳の問題。脳が損傷し、治療したけど、まだ完全に機能が回復していないんだ。それなのに無理矢理に腕を動かしたり、無理をするから痛みを感じる」
「なるほど。それで痛みを認識したから更に辛くなったと」
「そういう事。チクッとするよー」
「うぅっ!」
いってー!何がチクッとだよ!激痛だよ!神経でも刺したんじゃねーか!
「失礼だなぁ。激痛なのは感度3,000倍だからだよ」
「ぶふっ!」
「さ、紗也華さん?ぼ、僕は笑えないんですが」
「ゴメン。ついね」
「どう?楽になって来たでしょ?僕の部下が瀕死だったから回復薬も混ぜといた」
「あーそういう事ね。楽になってきてね。このまま天に昇りそうな勢いだよ」
「光一、それは笑えない」
「本当に紗也華さんの言う通り。冗談も言ってはいけない時があるんだよ?」
「いや、冗談じゃなくてマジの話」
「生命神さん、効果が強すぎたんじゃ?」
「そんな事はないよ」
「あー心地良いわ。激痛から解放されるって良いね」
「あなた、どんだけの激痛に耐えていたのよ」
「正直、そろそろ激痛のあまりヤバいかもって思ってたところ」
「光一!」
「は、はい!でもお母さん?妻の為に努力したからであってですね」
「よくやった。でもやり過ぎは良くない」
「はい。すんません」
「光一くん、土下座の件だけど僕と創造神様とエルザちゃん、地球神さんで協議するから来なくて良いよ」
「マジで!?イテテッ!」
「だから起き上がるなっての。地球から僕たちの世界へのお客様に兄弟や姉妹も追加しておいて」
「それは私から皆に伝えるわね」
「イブさんお願いね。光一くん、明日の朝までに治したいならね?早く寝ろとは言わない。おとなしくしていて」
「了解です。でも何でまた、まだ土下座していないのに協議してくれるの?」
「君の頑張りを評価してというのもあるけどね。こちらもこちらで事情があるんだよ。主に我々の世界の人口や文明レベルの面で」
「なるほど?つまり条件付きの可能性が高い?エルフ扱いにするとか?」
「まぁそうだね。しかし、エルフ扱いでは事件や事故の対策にならないから。僕は……っと喋りすぎたね。また今度」
「分かった。来てくれてありがとう。本当に治療ありがとうね」
「うん、頼むからおとなしくしていてよー。そんじゃまったねー」
そう言うと生命神さんは去って行った。
「おーい。妹よ。僕の事を忘れていないかー?」
「スマンな。すっかり忘れてた」
「おいっ!」
(コンコンコン)
「入って」
イブが入室を許可した。誰だろ。
「失礼します。イブお母さん、孝次さんを家まで送る件でしょうか?」
なに?可愛い女の子の声だ!これは10代後半から20代前半だな。
待てよ?確か「イブお母さん」って言っていたから、アルファちゃん?
「あっ!助手ちゃん!来てくれたんだ!」
「はい。何の用でしょうか?イブお母さんが教えてくれないんです」
「僕と結婚してくれないかな?」
「ほぇえ!?あっ失礼しました。理由をお聞きしてもよろしいですか?」
「まず、頭が良い。仕事が出来るだけじゃない。性格も良い。丁寧だけど早い仕事。そして片付けもちゃんとする」
コイツ、仕事の話ばっかりだな。本当に研究バカってヤツだ。
「話していても面白い。その上、とても可愛い。僕と結婚してもらえませんか?」
「あ、ありがとうございます。私、嬉しいです。ですが私で良いんですか?」
「あなたじゃないとダメなんです!」
「は、はい!分かりました。よろしくお願い致します」
「やったー!」
「お母様、お父様。お許しいただけますか?私、ロボットですが……良いんですか?」
「うん!良いわ!よろしくね!」
「お父さんも良いと思うよ」
「ありがとうございます!よろしくお願い致します!結婚式とか住居とか……こ、子どもとかはどうしますか?」
「結婚式と住居かー。どうしようね?子どもはエルフでお願いしたいな」
「分かりました。子どもは何人にします?双子も可能です。二卵性双生児ですね」
「双子が良いかな?それから婚約したから敬語は不要だよ」
「うん、分かった。双子とは欲張りだね。大歓迎よ。このキャラは嫌い?」
「楽に話してもらえれば大丈夫だよ。君の個性は大切にしたい」
「ありがとう。やっぱり良い人だ。お父さんの弟さんなだけあるね」
「おーい!そのお父さんにも顔を見せてもらえないかなー?」
「あっ!お父さん!放置してごめんなさい。嬉しくてつい」
「謝る必要はないよ。おー!可愛いね。弟よ。いいセンスだ!」
「そうだろー。良い子なんだよ」
「結婚式なら一緒にするかー?」
「お父さん良いの!?」
「えっ!?マジで?」
「僕は構わないぞー。イブ?大丈夫だと思う?」
「全て計画通りだから大丈夫よ」
「だそうだぞー。ちなみに今、メールが来てな。創造神様も生命神さんも大歓迎だそうだ」
「えーでも全世界に配信されるとか、恥ずかしいんだけど」
「でもこの機会を逃すと寂しい結婚式になるぞ?」
「孝次さん?」
「分かったよ。妹よ。よろしくね」
「仕方ないなー。イブ、住居も良い感じにお願い出来る?僕、考えたくない気分」
「マンションの空いている部屋に引っ越しで良いかしら?」
「イブさん、お願いします」
「了解よ。引っ越しはどうする?」
「イブお母さん。私がいるので大丈夫です」
「あっ!明日、天使の力でお願い出来ないかな?」
「天使2人は今からでも大丈夫だと言っているわ」
「それじゃ帰ったらお願いします」
「了解。アルファの名前を決めてあげて」
「優紀でどうかな?優しいという漢字と、日本書紀の紀だね。優秀で優しいからね。それから僕との幸せな思い出を記録してもらいたいから、日本書紀の紀を選んだんだ」
「私は優紀。気に入ったわ!素敵な名前をありがとう!」
「それじゃ孝次さん。大学の案内よ。読んでみてもらえるかしら?」
「お母さんにも見せて」
「お母様とお父様の分もありますよ」
「あら、ありがとう」
「ありがとうございます」
「……紗也華」
「なに?光一」
「可愛いね」
「ありがとう。でも、どうしたのよ?」
「動けないからさ。視界に入るのは紗也華だけなんだよ。それでね。ボーッとしてきてさ」
「少し寝る?あなた疲れているのよ」
「そうだね。3分だけ寝かせて」
「もっと寝ていたら?」
「良いん…だ……よ」
僕は眠りに落ちて行った。
『光一くん、起きて』
「はっ!はぁはぁはぁ……」
「光一くん、大丈夫かい?」
生命神さんの声?
「ぜぇぜぇ……」
何だろう息が苦しい。
「僕の声が聞こえていたら頷いてもらえる?」
僕は指示通りに頷いた。
「良かった。心臓の働きを強くする薬を投与したよ。心臓が止まっている時間が長かったからね。まだ不安定なんだ。もう大丈夫だからね。落ち着いてゆっくり呼吸して……そうそう。良い感じだ」
「はぁはぁ……スーハー。生命神さん?」
「そう。僕だよ」
「僕の幸運ステータスは冬休みかな?何分間寝ていたの?」
「約2分半かな?その内、心臓が止まっていたのが約30秒」
「僕、本当に大丈夫?今晩は寝ない方が良い?」
「大丈夫だよ。寝ても問題ない。むしろ無理せず寝て。また何かあったら僕がすぐに来るから」
「悪いね。ありがとう」
「良いんだよ。それじゃ帰るよ。ゆっくり休んで」
「うん。そうするよ」
「それじゃ皆も心配かけて悪かったね。失礼」
生命神さんの気配が消えた。隣を見ると紗也華が泣いている。
「紗也華。怖い思いをさせて悪かったね。僕のベッドに入って。こっちのベッドは大きいから大丈夫」
「うん。バカァ!眠るのは良いけど永眠は許さないんだからね!」
紗也華が僕のベッドに入って来た。温かい。
「分かっているよ。紗也華、温かいね」
「あなたが冷たいのよ」
「そっか。イブ、皆には?」
「悪いけどちゃんと報告はしているわ。皆、あなたの事を心配しているの」
「それは明日、会うのが怖いね。両親と弟は?」
「いるわよ。こっちの心臓も止まりそうだわ。心配だから私も泊まって行こうかと真剣に悩んでいるところよ」
「それは止めて。寝言で眠れなくなるから」
「失礼だね!そろそろ本気で怒るわよ!」
「すみません。冗談ですんで許してください。だけど親がいると気が休まらんのです」
「分かったわよ」
「弟よ。代わりに泊まってはどうかな?社畜ごっこは楽しいぞ?」
「そうだな妹よ。仕方ない泊まってやろうじゃないか。感謝しろ?引っ越し作業が終わったらまた来る」
「おや?断ると思ったのに意外だな?」
「特別個室に泊まったら自慢出来るからな~。紗也華さん大丈夫?」
「私は大丈夫よ。光一のベッドで寝るから平気」
「安心して。風呂やトイレは自宅で済ますし、優紀もいるから変な事はしないよ」
「あー大丈夫よ。私と光一は魔法で身体をキレイにするからお風呂に入らないわ。孝次さん、せっかく広いお風呂があるんだから入ったら?トイレも私は気にしないわ。私も最初は病院のトイレはちょっとなーと思ったけどね。この部屋のトイレは高級ホテルの様にオシャレだし、清潔感あるから良いと思うわよ?」
「それじゃお言葉に甘えて、お風呂は入らせてもらうけど、トイレは遠慮しておくよ。僕も男性だからね。あまり信用しない方が良いよ」
「信用出来ないタイプの人は自分からそんな事は言わないから。だけど私も無理に言わない。分かったわ。よろしくね」
「こちらこそよろしく」
「あっ!警察の方が来たわ」
(コンコンコン)
「どうぞ」
今回もイブが答えた。
「失礼します……お久しぶりです。淡雪の父の南條圭です」
あっ紗也華と一緒に寝ているのはマズイかも。
紗也華もそう思ったみたいで慌ててベッドから出ようとする。
「あー、そのままで良いですよ。お気になさらずに」
「え?でも……」
「圭さん、お久しぶりです。すみません。こんな姿ですが僕が光一です。心臓を刺された関係で身体が弱っていましてね。起き上がれないので、このまま失礼します。実はつい先程も心臓が止まって治療してもらったところなんです。紗也華が心配して泣いてしまったので、同じベッドに入ってもらったんですよ」
「心臓を刺されたとは聞いていましたが……大丈夫なんですか?体調が優れないようなら後日、来ますが」
「いえ、大丈夫です。もしも危険な状態になったら担当者が来ますから」
「そうですか。紗也華さん、本当にお気になさらずに。泣いていたのは分かりますし、事情は把握しましたから」
「すみません。ありがとうございます」
「いえ、淡雪から聞いていますよ。紗也華さんにはいつも何かとお世話になっていると。いつもありがとうございます」
「そうなんですか?」
「はい。あっ!光一さんのお父さんとお母さん。それから弟さんかな?いつもお世話になっています」
「お久しぶりです。光一の父の誠です。こちらこそお世話になっております」
「この度はわざわざお越しいただきありがとうございます。息子がご迷惑をおかけします」
「弟の孝次と申します。よろしくお願いいたします」
「お母さん、ご迷惑だなんてとんでもない。孝次さんですね?淡雪の父で警視庁捜査一課の南條圭です。こちらこそよろしくお願いします……副大統領、私に連絡してくださいよ」
「ごめんなさい。お忙しいかと思ったのと、いつもの刑事さん2人の方が裁判を進める上で有利なのかなと思ってね。ほら。身内が関わると不利になるって聞くから」
「書類仕事で忙しいですが、事件が優先です。それから淡雪が直接関わらなければ大丈夫ですよ。今回も事件現場に淡雪はいましたが問題ありません。今回は淡雪から事情を聞いて私が来ました。光一さんが町中を歩いている姿は機密レベルが高いですからね」
「僕としても助かります。毎回、姿を変えるのは面倒ですから」
「光一さん、淡雪の父としては次がない事を切に願いますよ」
「本当に申し訳なく思います。結婚式前に何やってんだって話ですよね」
「そう思う必要はありませんよ。私も警察官ですからね。私は勇敢だと思いますよ。ただ、事件現場では犯人を完全に拘束等するまで油断しないでください。次がないのが一番ですが忠告はしておきます」
「はい。おっしゃる通りです」
「しかし、同じく妻を持つ立場として、長時間の買い物、本当にお疲れ様です」
「ありがとうございます。ただ、妻の楽しそうな表情の為なら頑張れますよ」
「あれ?光一?あなたにとっては頑張るような事だったの?私は楽しかったけど、楽しくなかった?」
「紗也華。妻の楽しそうな表情を見るのは幸せだよ?でもね。楽しくないし疲れるよ。5店舗は多すぎ」
「冗談よ。分かっているわ。付き合ってくれてありがとう」
「まぁいつも退屈な会議に付き合ってもらっているからね。良いんだよ」
「会議だけど私は退屈どころか楽しんでいるわ」
「淡雪もいつも楽しいって連絡してくれましたよ」
「そうですか。それなら良かった」
「さて事件について聞かせてください。お疲れのところスミマセン」
「いえいえ、よろしくお願いします」
そうして事情聴取が始まった。僕も流石に慣れたよ。





