866 彼女のフラグは折れたかな?
地球:202X年11月7日
火星:1年5月29日
現在、7時50分頃。渋丘の駅前交差点に来た。
予定通り天界から築地にある大和王国大使館に行き、大使館からバスでここまで来た。
メンバーは僕、妻、ウィンドウとアクアオーラ、イブ、護衛8人。僕はヒカリに、ぼたんは金髪碧眼の白人女性に魔法で姿を変えている。ぼたんの名前はローラだ。間違って普段どおり「ぼたん」と呼ばないように気をつけないとね。
「それじゃ皆、行きましょう。私が案内するわ」
「うん、イブよろしくね」
「ヒカリさん、了解よ……まぁ早速、赤信号で待たないといけないんだけどね」
「はぁ……信号機も全てイブの管理下におきたくなるね」
「ヒカリ、私も色々と考えてはいるから、そこら辺はもう少し待ってちょうだい」
「お?ローラも色々と考えているんだ」
「前にも言ったけど、まだやりたい事はあるのよ」
「出来る事があれば協力するよ」
「そうね。お願いするわ。まぁそこら辺は明日ね」
「りょーかい」
「……ん?あれ?あの~すみません。人違いだったらごめんなさい」
なんだろ?紗也華が知らない女性に話しかけてる。多分、まだ20代だと思う。
「ひゃいっ!?わ、私?」
「あっその声はやっぱりそうかも。くろえママだよね?」
「ひぃぇえ!?……あっ!ましろちゃん?一度、会っただけだけど、そうだよね?」
「そうそう!私、ましろだよ。ママ久しぶり~!朝早くにこんな所でどうしたの?」
「久しぶりだね~!ゲートオブスターライトに行くに決まってるじゃないの!」
「あーそっか。ママが家から出るなんて珍しいなと思ったんだ。私達も行くんだ」
「失礼ねって。まぁ基本的に引きこもっているから否定出来ないか。『私達も』って皆さんはどちら様?」
「私の隣にいるのがおっ……」
「おぉっ!そ、そうなんです。はじめまして。私はましろさんのお友達の小鳥遊ヒカリと申します。よろしくお願いします」
「あっこれはこれはご丁寧にありがとうございます。私は神崎くろえと申します。こちらこそよろしくお願い致します」
あっぶねぇ。紗也華、絶対に「夫」と言おうとしただろ!女体化している意味がなくなるから止めていただきたい!
神崎くろえ先生と言ったら、紗也華のアバターをデザインした方だ。
イラストレーターであり漫画家。そしてアニメーターでもあり、作詞家や音楽家でもある。つまり多才でつよつよな女性だ。
「くろえさん。日曜日の朝だからまだ人は少ないですが、ファンを含め誰が聞いているか分かりません。自己紹介は後にしましょう?」
おぉ!イブ、ナイス!
「あっそうですね。失礼しました。ちょうど信号が青になりましたし、行きましょうか?」
「ママ、そうだね。一緒に行こう!」
「うん!いやぁ~ぼっちだと思っていたから良かった~」
僕としては申し訳ないけど、非常にやりにくい!一人称は「私」でなく「僕」でもボクっ娘だと思ってもらえるかもしれないけどね。とは言え男だとバレるリスクは少しでも減らしたい。
まぁそれはまだ良いんだ。社会人なら一人称が「私」なのは普通だから。問題は言葉遣いや仕草だ。
「あっ!そうだった!チャットでも言ったけど、我が娘よ結婚おめでとう!今日は旦那さんは?」
「ママ、ありがとう!夫は仕事があるとかで来られないみたい」
「ふ~ん?そうなんだ?妻思いでハロライブファンなら一緒に来る気がするけどなぁ?」
「ママ、良く知ってるね。ほら、女の子の集団に1人だけ男がいたら悪目立ちするのもあってね」
「それもそっか。今日は妻仲間とお友達で来たの?」
「そうなの。後で紹介するね!」
「うん、よろしく~!……おっ!到着したね~!」
おっ?この従業員専用出入口から入るのかな?
「ここは私に任せてもらえるかしら?」
「それじゃイブ、お願いするよ」
「ましろさん、了解よ。人数が多いから少し待っていてね」
そう言うとイブは何の躊躇もなく、ドアを開けて中に入って行った。
そして、少し待つと戻って来た。
「うん、大丈夫よ。行きましょう」
僕たちはイブの案内で中に入った。中に入ると通路で少し歩いた左側に警備員室があった。
あー、なるほどね。イブは警備員さんと話していたのか。
更に通路を少し歩いた所でイブが立ち止まった。
「くろえさん、ここで自己紹介をしましょう。私は大和王国、国王補佐官のイブと申します。よろしくお願い致します」
「は、はい!イブさん、こちらこそよろしくお願い致します!……ん?あれ?国王陛下はお仕事なのに、国王補佐官さんが来ているんですか?」
「これも仕事の一環です。大和王国はハロライブさんを支援しているので、国王陛下の代わりに視察に来たんです」
「あー!そういう事ですか。これは失礼致しました」
「いえいえ」
「あれ?そう言えば副大統領もイブさん……?あれ?」
「あぁ。私、この国の副大統領でもあるのよね。人工知能だから」
「えぇ~!」
「まぁ今日は副大統領というよりも、国王補佐官としての仕事なのよ」
「そ、そうですか」
その後、第一王妃のブリタニアから順番に自己紹介をして行った。
「うわぁ~凄い。こんな大人数と結婚するなんて。大和王国の国王陛下ってそんなにイケメンなのかな?神様だしきっと凄い人なんだろうな。私も玉の輿に乗りたいな~!」
「ゴホッゲホッ、コホッコホン……」
「えっ?ヒ、ヒカリさん大丈夫ですか?私、何か変な事を言いました?」
驚きのあまり、むせちゃったよ。フラグは早めに折っとこう。
「い、いえ。失礼しました。大丈夫です。失礼のついでにお聞きしても良いでしょうか?くろえ先生は独身なんですか?」
「あっはい!独身ですがそれが何か?」
「私はましろさんのお友達なので、国王陛下を見たことがありますが……そのぉ結婚は止めておいた方が良いですよ?30歳過ぎのおじさんですし、太っていて不健康そうな見た目ですからね。残念ながらイケメンとは程遠い方です」
「あー!ヒ、ヒカリさん、か、神様にそんな事を言うと消されちゃいますよ!」
「チョット!こ……こ、このアホ!わ、私の夫になんて事を言うのよ!」
だから紗也華ぁ。今、光一って言おうとしたでしょ?止めてってば。
「私、くろえ先生の大ファンなので、先生の幸せの為なら消されても構いませんよ。ましろゴメンね。でも事実だから」
「あ、あなたの様な可愛い子が、私の大ファンなのは嬉しいですが……そ、そこまで言ってくれるのは嬉しいですが…お願いです。私の為に無茶はしないでください」
「はい。くろえ先生が素敵な方に出会える事を心から願っています」
「はいはーい。これ以上はヒカリさんが消されそうだし、時間がもったいないわ。早く行きましょう?」
「イブさん、そうですね。ヒカリさん、ありがとう。行きましょう!」
「はい!」
そうして僕たちは移動を再開し、店内に入った。
「「「「「おー!」」」」」
すげぇ。店内がハロライブ仕様になっている。
「物販コーナーはこっちよ」
しばらくイブに付いていくと物販コーナーに到着した。
「それじゃ、ましろ達はポスターにサインしているから、くろえママはグッズとか見てて」
「あっ!私もサインしたーい!駄目かな?」
「う~ん?良いんじゃないかな?それじゃイブ達は先にグッズを見てて」
「ましろ。グッズって買ったら駄目かな?」
「1人あたり全種類1つまでなら大丈夫だって聞いてるよ。通信販売の関係もあって在庫は山程あるみたいだから」
「ふ~ん?イブさん。国王陛下の為に全種類のグッズの購入を私はオススメするわ!」
「あら?ヒカリさん?どうしてかしら?」
「多分だけど買って帰らないと激怒すると思うの」
「うーん?でも物販会場にあるTシャツはLサイズしかないわよ?着られないものを買ってしまうと逆に怒るのでは?通信販売なら様々なサイズを販売するから、それを待っても良いと思うわよ」
「そ、それは大丈夫よ。こういうTシャツは観賞用だから問題ないわ」
「はぁ……それじゃ買ってくるわね。ヒカリさんは良いの?」
イブ、分かっていて嫌がらせしているな?僕は現金を持っていないのだ。全てイブが管理しているからね。
だからイブに買ってもらうしかない。
「わ、私は残念な事にお金がないからね。見るだけで我慢するわ」
「そう。それじゃ一緒に行きましょう。選ぶのを手伝ってくれる?」
「わ、分かったわ」
~紗也華の視点~
イブと光一、ハロメン以外の妻は物販コーナーに入って行った。
「ねぇ?ましろちゃん?あなた達の旦那さんは大丈夫?嫌がらせとかされてない?」
「くろえママ、嫌がらせとかされていないから大丈夫。とても妻思いの優しい夫だからね」
「そう。それなら良いんだけど……何か弱みを握られているとか、夫婦生活で悩みがあったら遠慮なく私に相談してね」
「うん、ありがとう。でも本当に大丈夫だから安心して」
まったく!光一は何を考えているんだか!いくら本人でも知り合いの前で夫を悪く言われると腹が立つ。それに恥ずかしい!
こうして、くろえママから心配されるし本当に迷惑だ!表に出さないようにしているけど、皆も怒っているのは雰囲気で分かる。
いや、落ち着け私。光一は意味もなくそんな事をしない。私は光一の思考回路と近いんだろう?考えるんだ。
う~ん?……あーそっか。分かった。くろえママが「私も玉の輿に乗りたい」発言をしたからか。「光一」の好感度を下げて、フラグを折ろうと考えたんだな?本当に困った夫だ。ちょっと意地悪してやろ。
「ふふふっ」
「ん?ましろちゃん、どうかした?」
おっと、つい笑いが漏れた。
「う~んとね。どうしたら、くろえママに安心してもらえるかなって考えていたんだ」
「そうなの?」
「うん。それでママ?私の夫は確かにイケメンと言える程ではないわ。そして、30歳過ぎで太っていて、不健康そうな見た目だったとも聞いている……というか身体を壊したと聞いているわ。そう。見たのではなく、聞いているの」
「どういう事?」
「私の夫は元社畜でね。社畜生活により身体を壊したの。そんでまぁ色々とあって、異世界に行く事になった。その際に若返って健康的な身体になったから、私達はそういう姿だったと聞いた事はあるけど見たことがない。イケメンではないけどブサイクでもないわ。普通よ」
「え?でもヒカリさんは見たことがあるって……?えぇ?」
「ママ?総理……あー、今は大統領か。ぼたん大統領とも結婚しているのよ?見た目が最悪で性格も最悪。そんな人と結婚すると思う?弱みを握って無理矢理に結婚したり、性格に問題がある人が神になれると思う?」
まぁ邪神はいるけど、今その話をするとややこしくなるから言わないでおこう。
「ま、まぁ確かに……?あれ?それじゃヒカリさんは嘘つき?私のファンじゃなくてアンチ?」
「さっきも言った通り、完全な嘘ではないわ。今は違うけど、過去にそういう事実があったみたいだからね。若返っても中身が30過ぎというのも変わらない。まぁ身体が若返った事で精神年齢も若返ったと私達は感じているけどね。それからヒカリはママの大ファンだというのも事実」
「うーん?そしたら何でだろ?」
「私の夫は『これ以上、妻を増やしたくない』って、いつも言っているからね。くろえママが『私も玉の輿に乗りたい』発言をしたから、私の夫の好感度を下げてフラグを折ろうとしたんだと思うわ。それと、多数の妻がいるような男性なんかより、他の素敵な方と出会って結婚した方が幸せだと考えたんじゃないかな?」
「「「「「あー!そういう事か!」」」」」
私の話を聞いていたハロメンの妻一同、納得したようだ。
「うわぁ~!面倒なタイプのオタクくんだったー!余計なお世話だーい!流石の私も会う前から結婚するとは決めないぞ?私の結婚相手や結婚して幸せかどうかは私が選択するの~!後は相手の男性次第。オタクくんには関係ないんだー!という事でましろちゃん」
「ん?ママ、何かな?」
「旦那さんに会わせてもらえないかなぁ?私も27歳だからね。中身が30過ぎでも気にしないのだー。『30過ぎ』という事は少なくとも40歳未満のはず。会うだけ会って決めるのだ~!」
「うーん?どうしようかな……あっ意地悪をしているわけじゃなくて日程調整がね。ママも忙しいでしょ?」
「我が娘よ。それは嫌味かー?今は何の仕事もないのー!」
「あっゴメン。本当に悪気はなかったの。売れっ子のママに仕事がない?」
「まぁ色々とあるのだよ。そんな事より今日じゃ駄目なの?」
「きょ、今日はこの後、ランジェリーショップに行く予定でね。明日じゃ駄目かな?」
「おー!良いなぁ。ママもついて行っちゃ駄目?」
「「「「「え……?」」」」」
「い、いやぁ~。今回は恥ずかしいタイプの商品だから勘弁してください」
「あれあれ~?ましろちゃん?友達はオッケーなのに何でママは駄目なのかなぁ?」
ヤベェ……どうしよう?結婚すると決まってもいないのにマズイなぁ。でも断れないし仕方ないか。結婚するまでヒカリが光一だとバレなきゃセーフでしょ?
「くろえママ、そ、それじゃ一緒に行こうか」
「やったぜ!お昼ごはんは焼き肉にしよー!ましろちゃんの奢りでよろ~」
「焼き肉は良いけど、私の奢りなの?ま、まぁ良いや。イブに出してもらおう」
「おー!言ってみるもんだね~。ところで……うーん?やっぱりそうだよね?ヒカリちゃん、誰かと結婚しているの?」
「い、いや。独身のはずだけどどうして?」
「ここからだと遠くてよく見えないけど、左手薬指に指輪を着けているから」
あっ!ヤバい。ヒカリが光一と同じ指輪をしていたら、光一に会わせた時にバレる!
「あー、アレね?魔除けって言ってたわ。変な男が寄って来ないようにってね」
「そういう事~!納得~!」
「あっ、香蓮。ちょっとお手洗いに行きたくなってきたにぇ」
ともりナイス!
「祭も~!それじゃ皆、ちょうどサインを書き終わったし行って来ようか」
まつりパイセンもありがたい!
「それじゃ私も行っておこうっと。ましろちゃんは?」
「私は良いや。気にせずにママ行って来てね」
「そう?そんじゃ行ってくるね~♪」
ふぅ~。ママと数人のハロメンでお手洗いに向かって行った。
「ふふふ。紗也華お疲れ様です」
「彩花~!完全に失敗した!ちょっと光一に話してくる!」
「そのようですね。ドンマイです。ここに残ったハロメンで作戦会議をしておきますね」
「よろしくね。それじゃまた後で」
~光一の視点~
「いやぁ~イブ、ありがとう!僕はグッズを買えて満足だよ!」
「ふふっ良いのよ」
神崎くろえ先生と別れてから、僕は異世界組の妻から「さっきの自分を悪く言ったのはどういう事だ!」と問い詰められたから説明に苦労した。
購入したグッズはアイテムボックスにしまっておこうっと。
「ヒカリ!」
おぉっ!ビックリした!後ろから紗也華に声をかけられた。僕は振り向く。
「ん?ましろ、どうかした?」
「実は……」
僕は紗也華から何があったかの説明を聞いて絶望。
「おい、こらー!僕の努力を台無しにして~!やっぱり僕はランジェリーショップに行かないで帰る!」
「多分、私が意地悪をしなくても、この後の予定を聞かれたらついてきたと思うわよ」
「まぁそれもそうか。とりあえずバレても困るし、身内以外と店に入るのはマズイから帰るけど文句ないよね?」
「その手があったかと思っているけど、ローラはどう思う?」
頼むから常識人のぼたんよ。賛成してくれ!
「光一の言う通りだと私は思うわ。残念だけど光一には帰ってもらおう?」
よっしゃ!ぼたんありがとう!
「ヒカリ?何だか嬉しそうね?」
「ブリタニア?誤解しないでほしいな。皆と一緒に買い物出来ないのは残念だよ。でも他人と一緒にそういう店に入らないで済んだのは嬉しいという事だからね」
「そう。まぁ仕方ないわね。後でヒカリに見せる楽しみが出来たと思う事にするわ」
「うん。僕も楽しみだよ」
「ヒカリ、そんな事を言っている場合じゃないわ。指輪を他のに替えて」
「おー、そうだった!」
しかしなぁ。超幸運の指輪はつけておきたい。
「とりあえず今の指輪はしまってっと。ちょっとお手洗いに行ってくるよ」
「それじゃ私も一緒に行くわ」
「ローラも来てくれるの?」
「当たり前じゃない。あなた1人だと危険だからね」
「ご迷惑をおかけします」
「良いから行くわよ」
「あっ!その前にましろ、僕が帰る事はまだ伝えないでね。僕から言うから」
「うん、分かった」
そして僕とぼたんはトイレに向かった。





