861 恩赦と腐ったみかんの方程式
1年11月7日
「あっ!そうだ!イブさん、明日中に工事が完了する予定なんだよね?」
「えぇ、その予定よ?交渉や工事が予定通りに進めばだけどね」
「それじゃ商業ギルドに行って来ないと……」
「あー!良いから、良いから。今、代わりにうちの社員が商業ギルドの受付で事情を話しているわ。何人雇うの?」
「そしたらお言葉に甘えて、51人でお願いしたいな」
「51人ね。分かったわ…………明日、月曜日の13時に面接になるけど良いかしら?」
「はやっ!いくらなんでも早すぎない!?」
「システムで管理しているお蔭でね。仕事を探している人の中から、条件に合う人を簡単に探せるのよ」
「な、なるほど……流石だね。大丈夫だよ。明日、月曜日の13時だね」
「了解よ。明日、月曜日の13時に決まったわ。よろしくね。それじゃ工事完了までの流れを説明するわね」
「うん、ありがとう。それじゃ説明よろしく」
「説明を始めるとまず……」
~イブが説明を始めてから約5分後~
「……まぁこんな感じね」
「お、おぉ!凄いな!」
「お父さん、そうだね……凄いとしか言えないよ。店内の商品の配置まで考えてくれてありがとう!助かるよ」
「いえ、良いのよ。それじゃ仕事の話は終わりで良いかしら?」
「うん、大丈夫だと思うよ。皆さん、改めて色々とありがとう!イブさん、相談しなくて申し訳ない。今後は相談させてもらうよ」
「父親として私からも本当にありがとう」
「イブ、良かったね」
「そうね、光一さん。ルフレンスさん?もちろん、相談してくれた方が私としても嬉しいわ。でも、私に相談しなくても別に構わないの。だけどね?あなたは良い人過ぎるのよ。経営者なら最低限、契約書の内容を確認してから冷静に判断しなさいな」
「は、はい!すみませんでした!」
「分かってもらえれば良いの。マドレット!あなたもよ!少しは学習しなさい!」
「はい!イブお母さん!以後、気をつけます!」
「はぁ……まぁ良いわ」
「ちょっと思いついた事があるんだけどね。参考までにリーベ王国に亡命して来た、エルフの女性3人に教えてもらいたいんだ。気分を害したらゴメン。まずはアメリエットさんから。赤の他人であり、二度と会いたくもないと聞いているんだけど……アメリエットさんの父親は論外として、お母さんとお兄さんも性格が悪い認識で合っているかな?」
「えぇ、だけどアレは性格が悪いどころではないわ。最悪よ?救いようがない程にね」
「死刑判決が出て、檻の中で反省するとかは?」
「絶対にあり得ないわね。そもそも既に死刑になったか、人種差別の件で亡くなっているんじゃないかしら?ごめんなさい。質問の意図を教えてほしいわ」
「こちらこそゴメンね。人口が減って困っている。そういう事情もあるけど、中には幼い子どももいたりする。だから、実行犯を除きまともな人は僕達の結婚式を機に、条件付きで恩赦にしようかなと思ってね」
「光一さん。少なくともあんな人達は絶対に駄目!まともではないわ。異常よ!」
「そっか。分かった。安心してちゃんと、まともな人かどうかを確認するから。そうじゃないと最悪、罪のない人が犠牲になる恐れがあるからね。それでイブ?死刑執行の状況と、人種差別の件で何人亡くなったかを教えて」
「どちらもゼロよ。まず、前者の理由だけどね。実行犯とそうでなくても情状酌量の余地のない囚人は反省を促す為。光一さんの言うまともな人に該当する囚人は気の毒だから保留。後者については恐らくだけど、人種差別派に該当しても死刑囚だから命を奪われなかったのだと思うわ」
「イブ、とりあえず3人に迷惑をかけたくないからさ。急ぎ3人の関係者を魔法で確認してもらえるかな?人種差別派かどうか等も含め、まともな人かどうかを確認してほしいな」
「一応、確認させるけども……意味ないと思うわよ?私は取り調べの担当者から詳細に報告をしてもらったけど、全員が全員、最悪だったらしいからね」
「まぁ、一応よろしくね。リリアナさんもアメリエットさんと同じ意見かな?」
「私も全く同じ意見よ。だから逃げ出して来たんだもの。居場所がなくてね。もしも、居場所があったら私は逃げ出していなかったから、そしたら私も一緒に死刑囚になっていたわね。そう思うと複雑な心境。良かったとも良くなかったとも言えないからね」
「そっか」
「はいはーい!光一さん、私も同じく~!ヒンメル王国に帰る気も全くない程ね。あの国は駄目だ。少なくとも王都にいるのは殆ど腐ってやがる。箱の中に1つでも腐った果物があると、他にも腐敗が広まるのと同じなんだ」
この世界にも腐ったみかんの方程式ってあったのね。
「あっ!ヤベッ!ヒンメル王国の王女様がいるんだった!」
「あー良いわよ。気にしないで。何故、第一王女の私が第二王女のリリアナよりも後に光一と結婚したのかって話。それは!結婚相手を頑張って探したけど、どいつもこいつも腐ってたから!まぁ光一と結婚したのは、光一が素敵だったからでもあるけどね」
「ヤベェ……ヒンメル王国の王女様が私と同じ側だった。あの国は大丈夫かな?」
「宗主国の国王であり、将来、ヒンメル王国の王になる子の親の立場として、本当に僕もそれが心配だよ。イブ大丈夫かな?」
「シルヴィー女王もその件でよく頭を抱えているわよ。まぁだけど大丈夫じゃないかしら?腐った果物は神々によって処分されたはずだからね」
「それなら良いんだけど。それでイブ、恩赦の条件について話すね。条件はアーシア大陸の国々なら大阪に。オーエス大陸の国々ならエクセポートシティに強制的に移住させる。理由は3つ。1つ目は住んでいた場所、場合によっては国内では周りの目があって、生活出来るとは思えないから」
「まぁ公開裁判だからそうでしょうね。恩赦にしたら裁判に関する情報は削除するわ。完全に恩赦の対象外の裁判だけ動画等を残せば良いかな?」
「うん。それでよろしくね。理由の2つ目は保護して経済的援助をする為。貧困を理由に犯行に及ばれても困るからね。3つ目は2つ目とも関係してくるけど、大和王国の国内なら管理がしやすいから。僕の都合で他国に迷惑をかける訳にはいかない。あー、後それから恩赦する事は一般には非公表でよろしく」
「分かったわ」
「ヤ、ヤベェ……国家機密を聞いちまった。死んだ。絶対に今度こそ私、死んだ。消されるんだ」
「いや、消さないから!生きてもろて。イブ、それから恩赦後に元死刑囚のメンタルケアをよろしく。特に幼い子どもは心的外傷による影響が懸念されるからね。各国首脳等の関係者と連携して恩赦を進めてもらいたい」
「了解よ。その方針で進めるわね。大丈夫、後は任せて」
「うん、よろしくね。そういえばルフレンスさん、結婚した事を娘さんに報告しなくて良いの?」
「あっ!お兄ちゃん、私から連絡しておこうか?」
「ま、待って!今、連絡したらここに来ちゃうから!少なくともハミルトン王子と、初音さんにご迷惑をおかけしそうだから止めて。10日の水曜日に可能ならお邪魔させてもらって、店の事も含めて話そうかなと思っているよ」
「うん!お兄ちゃん分かったー!」
「えっ!ルフレンス。あの噂、本当だったんだ……ヤベェ。そりゃ大国の国王と知り合いにもなるわけだわ。という事はマドレットちゃんってエテルノ?」
「そうだよ~!噂は本当。あれ?私がエテルノだって気付かなかった?さっきからそんな感じの会話をしていたと思うけど?」
「いや、あれ?おかしいな~?とは思っていたけどね。どこからどう見てもエルフなんだもん」
「そっか。まぁエテルノだけど仲良くしてね!」
「もちろんよ。こちらこそよろしくね。私は差別とかしないからね~。差別なんてしたら神々によって消されるんだ。いやぁ~考えただけでも恐ろしい!……はっ!ま、まさか!リリアナもエテルノ?」
「なんでよっ!違うわよ!エルフよ!私もあなたと同じだってルフレンスが言ってたでしょ?それにさっき光一さんから私も元家族について聞かれていたじゃないの!」
「そっか、そっか。これは失礼。いやぁ~安心した……ねぇ?リリアナ?私、1つ心配事があるの」
「ん?何かな?」
「ルフレンス、51人も雇うんでしょ?その内の何人が女性か分からないけど、1人以上と結婚しそうだなってね」
「は、はぃい!?」
「あー。私は飽きて捨てたりせずに、愛してさえくれれば別に構わないけど……ベネディットは嫌なの?」
「お、おぉ。流石は最初に結婚しただけあって強い。う~ん?私は相手にもよるかなぁ?性格次第!」
「それはそうね。イブさん?51人中、何人が女性か分かる?後は私達と同じ子はいるかな?」
「う~ん。そうね……全員、女性ね。51人中4人がエルフよ。4人共あなた達と同じ。年齢も皆、18歳だから同じね。保護していたエルフで就職先が見つかっていないのは……この4人で最後ね。差別がなくなった関係で他の人は次々と就職先が決まっていったのよね」
「それじゃぁ……最後まで残ったって事は性格か、何か問題を抱えているとか?」
「いえ、性格を含め特に問題はないわ。ただ、4人は就職先で何か問題に巻き込まれたくなかったから、条件が厳しかったのよ。雇用主はAランクで出来れば若い男性が良い。または女性である事。若い男性の場合は、エルフかハーフエルフである事……というのが条件ね」
「イブ~。それ条件が厳しすぎない?まるで結婚の条件みたいじゃん」
「雇用主による暴力等の問題に巻き込まれたくないというのは事実よ。Aランクならその心配はないから。だけど、ついでに結婚相手が見つかれば良いなと考えているのも事実ね」
「それじゃイブ、その4人の関係者についても恩赦の対象になるか確認してもらえるかな?」
「はぁ……分かったわ。だけど、言っておくわね。全員、無理だろうなってね。さっきリリアナさんも言っていたけど、逃げ出して来たのにはそれなりの理由があるのよ」
「まぁ一応、よろしくね」
「ちょ、ちょっと!僕はそんな大勢と結婚だなんて無理だよ」
「あら?ルフレンス?あなたなら大丈夫よ」
「リリアナ。僕は君との時間を大切にしたい。もちろんベネディットともね」
「嬉しいけど、私は私の仲間を幸せにしてあげてほしいな」
「僕と結婚しなくても幸せになれるよ」
「それはない」
「うん、リリアナの言う通りそれはないわね」
「えーっと……あったあった。おっ!説明書もある!誰だろう?」
「ふふふ。私よ。もしかしたら渡すかもと思ってね。部下に指示を出して入れておいたわ」
「おっ!イブ、ありがとう!それじゃ、これをルフレンスさんにあげる!説明書を読んでね」
「ん?ありがとう……?何だろ?…………お、おぉ!こ、光一さん、これ貴重なアイテムだよね?良いの?」
「あー良いの、良いの。僕なら簡単に手に入るし」
「ありがとう!使い方には注意して大切に活用させてもらうよ!」
「ルフレンス?何をいただいたの?」
「うん、リリアナ……」
ルフレンスさんは家族全員に説明していく。説明が終わると皆に大変、感謝された。嬉しいね。





