830 食料向け3つの新魔法
1年10月16日
「イブちゃんが返答に困っているから、判断材料として先に聞きたいんだけど……皆は今日は何時までいられるのかな?」
「おぉ!そうだ!それは私も聞きたかったんだ!出来れば夕食を一緒に……と思っているのだが、どうだろうか?」
「は、はい!父を含め皆と相談しまして、ご迷惑でなければ、夕食もご一緒させていただきたいと思っています」
「おぉ!それは良かった!迷惑だなんて事はない。それでは料理長に伝えねばな」
「あー。それならカレンが料理長に伝えたから大丈夫だよ。安心して」
「あら?そうなの?カレンちゃん?」
「はーい!カレンです!お母さん、何でしょうか?」
「料理長に伝言ありがとうね」
「私からもありがとう。とても助かる」
「いえいえ、お母さん、お父さん。お役に立てて光栄です」
「ふふっ、それでは戻って大丈夫よ」
「はい!お母さん、皆さん、失礼します!」
人工知能のカレンちゃんは姿を消した。
「イブちゃん、例の件を話をしちゃおうよ。仕事の話だけど、時間はあるようだしその点の問題はない。それにここにいるメンバーに無関係な話でもないし、特に商人の立場としてはいつ頃に商品を販売出来るかという情報は重要だと思う。嘘をつくと信用問題にもなるから悩んでいるんでしょ?」
「のぞみちゃ~ん!それ通信で会話しようって言っているのに……無視しないでよぉ~!」
「僕は話すべきだと判断したからね~。……ん?極秘事項だって?大丈夫だって。この世界の場合、話したら問題があるような内容なら神々が止めに来るでしょう」
「あのぉ、国王である僕が知らない極秘事項って何ですかね?国王に話したらマズイ極秘事項って超気になるんだけど」
「だ~か~ら~!つ・う・し・ん!口に出さないでってば!私は仮に問題が無くても倫理的にどうなのかを気にしているの!……光一さん、急ぎの用件ではないからリーベ王国に通わなくなったら話す予定だったのよ。私はここでは話すべきではないと思っているだけでね」
「倫理と言ってもさぁ、この世界の場合は元々、成長速度が異常だから気にする事はないと思うよ。まぁ良いや。イブちゃんが話さないなら僕から話すね。光一さん、実は……」
「ストーップ!分かった!分かったから!通信でも連絡している通り私から話すわ!ここで私から話さなかったら私が悪者みたいになるじゃないのよぉ!」
「光一さん、僕が勝ったよ」
「うん。よく分からないけどありがとう。それで極秘事項って何かな?そんなにヤバイの?」
「光一さん、頭を近付けて」
「うん?何かな?」
あー。なるほどねぇ。これは確かに倫理的にマズイかも。
イブに情報共有された内容で魔法神ちゃんに報告しておこうっと。
……おっ!返信が早いね。対応助かるわ。
「イブ、魔法神ちゃんに対応してもらったから話しても問題ないと思うよ」
「光一さん、ありがとう。助かるわ」
「あー、イブさん。僕達が聞いたらマズイ内容なら無理に話さなくても大丈夫ですよ」
「いえ、ルフレンスさん、多分だけど問題ないわ。光一さんから魔法神さんに最低限の対応をお願いしたから」
「そ、そうですか」
「あっ!そうだ!聞いているだろうけど、生命神さんの意見も聞きたいから来てもらおうかな?生命神さ~ん」
(バンッ)
「ヤッホー。生命神が光一くんに呼ばれて来たよ。いやぁ焦らすねぇ。何の話かな?僕に関係あるっぽいけど」
「それじゃ話すわね。大和王国の学園都市にある魔法魔術学校で研究をして、3つの魔法を開発したの。生物成長促進魔法と発酵魔法。あー発酵は空間投影するとこんな漢字の魔法ね。光る事を目的とした魔法ではないわよ。それから結界内にある、指定した対象の時間を進める時間加速魔法」
「へぇ~。魔法はイメージ次第とは言え、どれも難しそうだね」
「光一なら、どれも簡単に使えるんじゃない?」
「あぁ……ブリタニア。発酵魔法は無理だと思うな。発酵についての専門知識が必要だからね。イメージ出来る気がしない」
「う~ん。光一くんなら、何だかんだゴリ押しで使えちゃう気がするけどね」
「私も生命神さんと同じ考えよ」
「生命神さんだけでなく、ブリタニアまで……僕にも出来ない事はあるんだからね?」
「いやぁ、光一くんは世界管理システムと相性抜群だからさ。知識が無くてもゴリ押しで行けると思うよ?まぁそれは置いておいてイブさん続けてもらえるかな?」
「置いておかれた。……まぁ良いけども」
「分かったわ。生物成長促進魔法と時間加速魔法は、ほぼ同じ魔法ではあるけれど2つの理由で名前を分けた。1つ目は前者は結界魔法が不要だけど、後者は結界魔法が必要な事。この事から別の魔法だと言えると判断。2つ目は開発した研究員が別である事。……研究員は全員がエテルノなんだけどね。2人共、自分の研究成果により人類社会に貢献出来ると思って喜んでいる所、『似ているから同じ魔法名で……』なんて水を差す様な事を言いたく無かったのよ」
「エテルノも大変だねぇ。魔法を開発したのは同じ時期なのかな?だとしたら、またどうして?偶然、同じ時期に同じ様な研究成果という事もないでしょう?」
「その通りよ。同じ時期だし偶然でもないわ。食品の種類をもっと増やしたいと思ったの。例えばコーヒーやお茶ね。しかし植物が成長するまでに時間がかかる。コーヒーノキもそうだけど特にチャノキはね。そこで植物の成長を早められないかと考え研究させた。それから発酵についての研究もさせたの。そう。植物の成長を早める研究と、発酵に関する研究の2つのプロジェクトを同時にさせた。だから大体、同じ時期に同じ様な研究成果が出て来たという訳ね」
「なるほどね。植物の成長速度は地球よりも短縮しているんだけど……待っていられないか。まぁ気持ちはわかる。僕も早く人口が増えないかと思っているからね。それで?」
「それで、研究成果が出た。実験も無事に成功しているわ。しかし、倫理的にどうなのかという話になった。我々としても例えば米を毎日、収穫なんて事をする気はないわ。ただ、本来なら長期間かかる木の成長を早めて、早期に収穫可能にしたいだけ。とは言え自然に反している。更に言うと神が定めた事に逆らう様なものだわ。それに食の安全性の点からも、理論上は問題無くても本当に大丈夫なのか懸念がある」
「ほぉ~そういう事?植物も生き物だからさ。例にあった様な事はしないでほしいけど、それ以外の常識的な範囲でなら大丈夫だよ。安全性についても問題ないよ。植物が人類にとって有害な変化をしたら僕のボットが知らせてくるんだ。魔法のある世界だからね。神々としても魔素や魔法によって、想定外の突然変異をしないか懸念している。だから生命神としてボットに監視させているんだ。だけど、今の所はそういう情報は入って来ていないから大丈夫だよ。検知漏れは絶対にないからへーき、へーき。今後、もし何かアレばすぐに対応するから安心して」
「でも神の定めに反するのでは?」
「あー。その事ね。あくまでも目安だと思ってくれれば良いよ。地球でもそうでしょ?質の良いモノを収穫するためには、農家さんの更なる努力と工夫が必要となる。例えば肥料を撒いたりして収穫量を増やしたり、病気から植物を守ったりする。温度管理等で作物の成長や発酵を短縮したり、そういうものでしょ?技術の発展によって効率化されるのはどの世界でも同じだよ」
「そう言ってもらえると助かるわ」
「まぁこの世界は木を切っても株だけ残しておけば次の日には復活するからねぇ。気にしなくて良いよ。それで発酵魔法と時間加速魔法ってどんなの?時間加速魔法は僕の管轄ではないけど興味深くてね」
「発酵魔法は微生物がいなくても、微生物の働きを真似して思い通りに発酵させる魔法よ。とは言え発酵させ過ぎると腐敗してしまうから、魔法を使う時間の調整が必要になってくるわ。時間加速魔法は発酵に要する時間の短縮の為の魔法よ。この魔法の時間調整を誤ると発酵ではなく、腐敗してしまうという事ね。運用は発酵魔法と時間加速魔法を同時に使い、効率的に発酵させ食品にするの。この時間調節が今後の研究課題になるわね」
「ほぅ、なるほどね。ところで魔法神ちゃんに何を対応してもらったの?」
「これらの魔法を無制限に使えるようにすると危険だと判断したの。私は『植物成長促進魔法』ではなく『生物成長促進魔法』と言ったわ。そう。実験はしていないけど、理論上は植物だけでなく動物にも使える。私達は動物……特に人類に対してこの魔法が使われる事を恐れたの。時間加速魔法も同じ。発酵魔法も悪用を恐れた。だから光一さん経由で魔法神さんに対応をお願いしたの」
「あぁ、そっか。その可能性もあるね。生命神としては例えば人類の赤ちゃんを高齢者にされたりしたら非常に困る。法律で禁止しても良いのかもしれないけどね。魔法管理システム側で防げるならそれが一番。……それじゃエテルノ以外の人類は使えない様にしたのかな?」
「いえ、今回、エテルノ以外の人類は生物成長促進魔法と時間加速魔法について、動物に対する魔法の行使を禁止。発酵魔法は人類と生きている動物に対する魔法の行使を禁止させてもらったわ。発酵魔法でこの様な規則にさせてもらったのは、人類以外の生きていない動物の肉は熟成させたりするかもしれないからね。あっ!時間加速魔法については建築物についても対象外にしてもらったわ。周囲にバレないように建物を老朽化させて破壊されては困るから。『エテルノ以外の人類は』とさせてもらったのは念の為ね。将来的に研究で使う可能性もあるから。……あー、人体実験等の危険な事をする気はないから安心して」
「なるほどね。良いんじゃないかな?僕含め神々はエテルノと君達について信用しているよ。あまり権限を制限されたくない気持ちも分かるなぁ~。それで、それで?他に僕に聞きたい事とかある?」
「コーヒーノキとチャノキを育てたいのだけどどこまで加速しても良いかしら?」
「ん?初回は一定量の収穫が出来る様になるまで育てちゃっても良いんじゃないかな?最低限じゃなくて一定量、つまり最大限ね。コーヒーもお茶も年3回収穫が出来るはず。だから、初回の収穫が終わったら加速しないでほしいかな?コーヒーは地域にもよるけど、リーベ王国なら秋、冬、春の3回ね。お茶は春、夏、秋の3回」
「品質が落ちるとかはないのかしら?」
「年3回収穫をしていればないだろうね。この世界は木を切っても株だけ残しておけば復活するって言ったでしょ?この世界の場合はそれだけ力があるんだよ」
「それなら木を切ってしまえば年3回どころか、毎日収穫出来るのでは?」
「出来ると言えば出来るけど、養分が不十分だから美味しくないと思うよ?養分を十分に貯めた木が一気に芽吹くのと、復活した木では見た目は同じ様に見えても中身が違うね。品質が落ちるから、あまりオススメしないよ~。まぁ地球よりイージーモードだから許してよ」
「大丈夫よ。念の為に確認しておきたかっただけ。年3回、品質が落ちずに収穫出来るだけでも十分よ。ありがとう」
「いえいえ~。他に質問はあるかな?」
「疑問は解消されたから大丈夫。また何かあったらよろしくね」
「了解。それじゃ帰るね~。また気軽に呼んで」
「うん。生命神さん、来てくれてありがとうね」
「良いの、良いの。そんじゃまったね~」
(バンッ)
生命神さんは天界に戻って行った。





