696 第四種警戒態勢と憲法バグで詰んだ日本
202X年6月21日
「イブ、第四種警戒態勢に移行を宣言するよ」
「了解!」
「光一、第四種警戒態勢ってなんだっけ?」
「ブリタニア、情報収集の強化と警戒態勢の上昇という意味だよ。アメリカの『デフコン』を基にしているんだ」
「私から補足すると『デフコン』とは『Defense Readiness Condition』の略で日本語すると『防衛準備態勢』ね。『デフコン5』が平時の状態。『デフコン1』が最高度の防衛準備状態よ。『デフコン3』だと通常より高度な防衛準備状態。軍の使用する無線は、機密コールサインに変更される事になるわ。現状は『デフコン3』にする程ではないけど平時の状態ではなく、情報収集の強化と警戒態勢の上昇をすべき段階にある。光一さんは国王としてそう判断したという事ね」
「説明してくれてありがとう。理解したわ」
「光一さん……アメリカ合衆国大統領が行方不明。副大統領が大統領権限を継承したわ」
「……色々と言いたいけど良いや。副大統領はどんな人?過激?それとも温厚?」
「安心して温厚で冷静な女性よ。我が国から派遣した職員と行動を共にしてくれてお互いで情報共有をしているわ。各州にも人員を派遣して情報共有をしたいと言っていて、こちらも同じ考えであると伝えているわ。あちゃー。やっちゃったわね」
「な、何を?」
「日本政府に我が国の職員を派遣したら分かった事なんだけど……総理含め大臣全員が行方不明なのよ」
「アメリカみたいに総理大臣権限の継承は?」
「継承順位にある人の全員が大臣だから出来ないみたい」
「はぁ……というかさぁ。内閣全員って何をやらかしたんだろう?」
「さぁ?日本政府も火星の件で中々しつこかったから光一さんの悪口でも言っていたのかもしれないし、他に何かやらかしたのかもしれないから分からないわね」
「つまり実質、内閣総辞職という事になるのかな?国会で新内閣を組閣するしかないんでは?」
「……先日、国会を閉会しちゃったのよねぇ。殆どの国会議員も電話回線パンクもあり連絡がつかないから官僚はパニックよ」
「非常事態だし連絡がつく議員だけで国会を開会?召集?……とにかく国会を開いて対応するしかないのでは?」
「それも無理ね。憲法第66条に『内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する』とあるわ。そして憲法第53条に『いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない』と規定されている。連絡がつく議員だけで勝手に国会を開く事は憲法違反になる。更に言うと連絡がつく議員が四分の一以上いたとしても内閣が存在しないから召集を決定出来ないという罠ね」
「た、確か。天皇陛下の国事行為に『国会を召集すること』とあったはず!」
「憲法第7条第2号ね。だけどそれも無理。天皇陛下の国事行為は内閣の助言と承認が必要と憲法第7条の頭に書いてあるからね」
「あーもしかしてだけど……日本って詰んでいる?」
「だから官僚がパニックになっているのよ。詰んじゃったから。私、前々からこれをリスクに思っていたのよ?閣議等で閣僚が集まる事は良くある事だから、国会閉会中にこれを狙われたら詰むってね。戦前や戦中にテロやクーデターが発生して、総理や閣僚が亡くなったケースもあるからね。あり得ない事では無かったのよ」
「イラス連邦が僕達や学校ではなく閣議中の閣僚を狙えばあり得たね。……いや、本当に大臣何したん?もう詰んだ詰んだじゃん」
「やっほー!光一くん、ただいま~!」
「あ、生命神さん。お帰り」
「いやぁ~それね。たまたま見ていたから知っているんだけどね?組閣後に大臣達でパーティーをしてね~。光一くんに対して、まぁそれは中々の暴言を吐いていたね。酒の勢いでついってヤツなんだろうけどさ。ほら特に性格の悪い人間ってその場にいない人の悪口を言って盛り上がる事もあるじゃない?それと同じだよ」
「あーそういう事ね。イブ?お友達内閣だったのかな?」
「まぁそう言えるメンバーだったわね。全員が男だし」
「どうせあれでしょ?『何が火星神だ。フザケやがって。火星人の間違えじゃないのか?』『全くですな』『国王等と言っていますが、所詮は顔を表に出さない引きこもりです。どうせブサイクで太った男でしょう』『ワハハハハ』とか、国王代理の千代ちゃんや大和王国の大臣が若くて可愛い女性しかいないから、舐めたり、僕とそういう関係にあるんだろうとか、下品な発言をしたり、僕が聞いたら不快な発言を連発していたんでしょ?」
「おー!良く分かるね。全く同じとは言わないけど大体、同じ様な発言だよ」
「そりゃ酒の席での僕の悪口なんて言ったら何となく分かるよ。はぁ……同盟国に対してそれかぁ。救いようがないな」
「うん。そういう事だから内閣全員、お亡くなりになっているはずだよ。強制的な内閣総辞職だね!」
「イブ、外務省の職員に言っても仕方ないけどさ、行方不明ではなく死亡という事を伝えると共に、断固抗議をしたいんだけどどう思う?」
「私も同じ気持ちよ。流石に頭にきたわ」
「申し訳ないけど唯のお父さんの石原一馬さんをここに呼んでもらえるかな?」
「分かったわ。いえ、この際、全ての省の職員に来てもらうわ。ただでさえ横の連携が出来ない上、通信回線が死んでいるからね」
「了解。よろしくね。いや、本当に本来なら国会議員に文句を言うべきなんだろうけどさぁ仕方ないよね」
「光一くん、お疲れ様。また何かあったら来るよ。そんじゃばいば~い」
「うん。ありがとう」
「良いの、良いの」
生命神さんは消えた。





