599 元防衛大臣と7度目の面会
1年9月14日
「光一さん、面会準備が出来たわ」
「イブ、報告ありがとう。それじゃ一旦、失礼しますね。面会が終わったらまた来ます」
「おー!光一くんよろしく頼む。それからハミルトンにパソコンをありがとう」
「いえ、楽しんでもらえると幸いです。では失礼します。イブお願いね」
「分かったわ。ゲート」
「イブ、ありがとう」
「良いのよ」
僕達はゲートで拘置所に来た。
「こっちよ~」
「了解~。今日も案内よろしくね」
しばらく歩いていると面会室と書かれた部屋の扉の前に来た。
「ここだ!案内ありがとう。それじゃ入ろう」
扉を開いて皆で中に入る。
「ブリタニアの椅子を用意して。はい。どうぞ!」
「光一、ありがとう!」
僕達は椅子に座った。
「それじゃ僕はカメラマンね」
「うん。のぞみよろしく~。そんじゃ笑いを禁止する結界を張るねー!魔法発動!」
アクリル板を挟んで部屋の奥にある扉が開いた。元防衛大臣が刑務官と一緒に入ってきた。
「囚人番号1番!座れ!」
元防衛大臣が椅子に座った。
「はぁ……お疲れ様です。今日は4人ですか?」
「うん。お疲れ様~。昨日は妻を紹介しに来たから人数が多かったのね」
「そうですか……はぁ」
「何?ため息をついて。ちゃんと食べてる?」
「お陰様で今日はトイレに食べたモノを戻さずに済みました」
「おー!良かったじゃない。何で元気ないの?」
「そ、それは……」
「死刑の予行練習で1回お漏らししちゃったのよね?」
「イブそうなの?お漏らしの回数が減っているのはえらいえらい。赤ちゃんが成長していて僕も嬉しいよ」
「だから赤ちゃん扱いは止めてくださいって」
「お漏らしするんだから赤ちゃん扱いされて当然でしょ?でも何で1回お漏らししちゃうかな~?駄目でちゅね~」
「頑張ったんです!これでも頑張って1回は耐えたんです!無心。何も考えないようにして死刑の予行練習をしたんです!だけど2回目でつい考えてしまって……ぎゃぁぁあ」
「どうしたの?急に叫んで」
「2回目の死刑の予行練習で死にかけて地獄に入りかけたのを思い出したんですぅ!」
「おー!ついに入りかけたのね!次は入りかけでは無く入るかもだ!」
「何で嬉しそうなんですかぁ!そんなに人の不幸が面白いですか?」
「え?君、人じゃないでしょ?ゴミ虫くんでしょ?ゴミ虫くんで遊ぶの面白いでしょ?」
「もう反省したんでゴミ虫扱いは止めてくださいって。死刑囚だからって遊ばないでくださいって」
「さて、お漏らししたから罰として1回、死刑の予行練習の回数を増やします!」
「そ、そんなぁ~」
「元に戻っただけだって。頑張ってねぇ~」
「減らすには?減らすにはどうしたら良いんですか?」
「う~ん。僕は優しいからね。1度もお漏らししなければ減らしてあげる」
「そんなぁ。お願いですよぉ。もう勘弁してください。あなたが昨日、食事だと思わせて死刑の可能性を言ったから、失禁はしていないけど。靴音がしたら便器に座って、扉が開いたら大と小をトイレに出して気絶しているんですよぉ!」
「そんなのは知らないよ。さっきさぁ『死刑囚だからって遊ばないでください』って言ったけど良いのかな?」
「え?どういう事ですか?」
「僕は優しいからね。お漏らししないアドバイスをしてあげる。こう考えたらどうなの?僕がゴミ虫くんで遊んでいる間は死刑にならないって。僕が君に興味を持たなくなったらその時が終わりの合図だって」
「はっ!?なるほどなるほど。その発想はなかった。ありがとうございます。本当にありがとうございます」
「これで死刑の予行練習が怖く無くなったね」
「怖いですが漏らさない為にも自分に暗示をかけます」
「そうだよ?次、死にかけたら本当に死んじゃうかもしれないんだからさ。気をつけてよね」
「はい!私も地獄に行きたくないので気をつけます!正義の女神様によろしくお伝えください」
「伝えても良いけど……それ逆効果じゃない?地獄に行きますのでよろしくって受け取るかもよ?まぁ伝えておくけど」
「ぎゃぁぁぁぁぁ。待った!待ってくださいぃぃ!やっぱり無しで!伝えないでください」
「う~ん。でもさぁ僕って神々から注目されていてね。多分、正義の女神ちゃんも観ていると思うんだよねぇ」
「え?」
「もう多分、伝わっちゃってるね。お疲れ様」
「ぎゃぁぁぁ!正義の女神様!どうか!どうか!まだお待ちください!まだそちら側に行きたくないのでお許しください!反省したので!どうか!どうか!減刑してくださいぃ!あそこは駄目ですって!あんな酷い所に行きたくないのですぅ!」
「あっそうそう。大事な事を教えてあげるね。事後連絡になってゴメンね」
「え?何ですか?」
「この面会の様子を『元防衛大臣失禁シリーズ』として動画投稿サイトに投稿したの。再生回数は凄い数みたいだよ!おめでとう!」
「はぇ?これ全世界の人が観ているんですか?」
「うん。いえーい、みんなみってるー?」
「元防衛大臣失禁シリーズ?」
「そう。面会の度にお漏らししているからね。そのタイトルにしたみたいだよ」
「そんなぁ。世界中の人々に恥を晒しているという事じゃないですかぁ」
「うん。その通り。あなたの裁判も世界中の人々が観ていたからね。今更でしょ?」
「うわぁ~ん。そんなぁ……あなた達には人の心がないんですか?」
「いやいやいや、死刑になって地獄で最も重い罰が決定する様な事をした、あなたにだけは言われたくない」
「それはそうかもしれませんがぁ。そんなぁ。恥ずかしくて恥ずかしくて死んでしまいたい」
「そっかぁ。残念だけど死んでしまいたいのなら仕方ないね。それじゃ死刑にしますかね」
「うぎゃぁぁぁぁぁ。ま、待ってぇ!待ってくださいぃ!死んでしまいたい気分ですが死にたくないんですぅ!」
「いや、どっちよ」
「死にたくないの!死刑になりたくないの!地獄に行きたくないのぉ!」
「それじゃぁこれを観ている人々にメッセージをどうぞ」
「私の様に死刑と地獄行きに怯えて毎日を過ごしたく無ければ悪い事は言いません。そうなるような事はしない方があなたの為です。バレなければ良いと思うでしょうが、必ずいつかバレるんです。そしてこうなります。毎日毎日、死刑と地獄行きに怯えて過ごす。まさに生き地獄です。ここには人権なんてモノはありません!夢も希望もありません!あるのは絶望と恐怖だけです!」
「貴重な生の声をありがとう。これがまさか最期のメッセージになるとはこの時はまだ誰も思っていなかった」
「おぎゃぁぁぁ」
「あれれ?赤ちゃんが産まれた?」
「不吉な事を言わないでくださいぃ!冗談キツイですって!私は死にましぇーん!」
「いや、分からないよ?何度も死にかけて心臓に負担がかかっているからね。心臓発作でお亡くなりになる事もありえる。うん」
「嫌だぁ!生命神様ぁ!お願いします!どうかこの愚かな老いぼれを長生きさせてくださいぃ!」
「さて、元防衛大臣は果たして次に僕が会いに来るまで生きているのだろうか。どうなるかは神すらも知らない。次回、親子で共演!お楽しみに!って事で僕は帰るわ。お疲れ様でした~。う~ん。今回はお漏らししなかったからタイトル詐欺とか言われないかな?」
「え?親子で共演?どういう事?」
「さっき、あなたは『不吉な事を言わないでくださいぃ!冗談キツイですって!私は死にましぇーん!』って言ったよね?」
「言った。言いましたが何ですか?」
「何で冗談だと思ったの?この後、死刑にされると思わないの?親子で共演とは親子で死刑という意味だと考えないのかな?」
「は?はひぃ?し、死刑になるの?されるの?冗談じゃなくて?」
「『お疲れ様でした~』ってさっき僕は言ったけど、その前に『今まで』って付いている可能性を考えないのかな?」
「今まで……お疲れ様でした~?今までお疲れ様でした……ひぃぃぃぃ地獄行きになるの!?嫌だぁぁぁぁおぎゃぁあぁぁ」
(ジョボジョボ…ブチブッチブツチチブチチチ……プ~…バタッ)
「臭いを防ぐ結界発動!あっ…赤ちゃんが産まれたと思ったらお漏らしして倒れた。何で毎回毎回、おならするかなぁ?」
「オイッ!ホラッ!囚人番号1番!起きろ!」
刑務官さんは元防衛大臣の頰をベシベシ叩いている。いつもお疲れ様。
しかし元防衛大臣は起きない。
「……呼吸がない!心臓マッサージをします!」
「まさかの伏線回収?」
AEDを持った応援の刑務官が来た。
『胸を裸にしてAEDからパッドを取り出してください』
応援に来た刑務官がパッドを取り出した。
『パッドをシートからはがして図のように貼ってください』
応援に来た刑務官がパッドを正確に貼り付ける。
『電気ショックが必要です。充電しています……体から離れてください。点滅ボタンをしっかりと押してください』
応援に来た刑務官が点滅ボタンをしっかりと押した。
『電気ショックを行いました。体にさわっても大丈夫です』
「……ハッ!ふはぁ!はぁはぁはぁはぁはぁはぁ…グスンスンッ」
元防衛大臣は目を覚まし必死で呼吸を整えている。しかも泣いている。
「地獄嫌だぁ!地獄に入りかけたよぉ!国王陛下、お願いします!もうこれ以上はイジメないで。本当に本当に死んじゃいます。また冗談ですよね!お願いですから冗談って言ってくださいぃ!もう嫌だぁ!」
「僕は別に死刑になるとは言ってないよ。こういう風に考えないのかな?って疑問を言っただけで」
「もう嫌だぁ!理不尽極まりない!お願いしますよぉ!もう!もう十分に反省しましたから!私がどれだけこれまで酷い事をしていたかをよーく理解しましたからぁ!これを観ている人の中に被害者や遺族がいたら謝ります!本当に!本当に!申し訳ありませんでした!国王陛下、もう十分に苦しみ反省しました!」
「ブリタニア?嘘かどうか確認してくれるかな?」
「分かったわ」
「あなたは自分が犯した罪を認め反省しますか?」
「はい!」
「本当らしいわよ」
「先程の謝罪は心からのモノですか?」
「その通りです」
「これも本当らしいわ」
「そっか。ならイブ、死刑の予行練習は無しで普通の死刑囚と同じ扱いにしてあげよう」
「光一さん、分かったわ」
「やっと反省したか~。長かったなぁ~お疲れ様」
「ま、待ってくださいぃ!まだ貴方様と会いたいです!」
「あー今のお疲れ様は反省した事に対するモノだからね。毎日毎日、汚物の処理をした事に対するモノでもある」
「死刑にならない?」
「それは僕は断言出来ない。僕はいつ死刑になるか聞いていないからね。普通の死刑囚と同じだよ」
「それはそれで困るんですが……」
「僕としては明日は息子さんと一緒に面会したいなぁと思うけどね。息子さんが反省していなかったら説教しようね」
「はい!お願いします!死刑の予行練習が無くなるだけでも十分に幸せです。ありがたいです」
「僕の予想を言って良いかな?予想であって断言出来ないけどね」
「参考までにお願いします」
「僕の祖国では朝一番に死刑執行のパターンが多いと聞いたね。食事と運動くらいは楽しみたいだろうから参考までにね」
「それで今の私には十分です。刑務官さん。いつもご迷惑をおかけしスミマセンでした」
「いえ、これが我々の仕事ですから」
「食事をしっかり食べて運動して寝て、健康的な囚人生活を送るんだよ」
「はい。ありがとうございます」
「それじゃ帰るから。皆、この人はお漏らしの処理をしないといけないんだって。帰ろう。結界を解除するから皆、先に出て~!」
「き、今日もですか?」
「仕方ないでしょ?お漏らしした上、おならまでしたんだから」
「それはそうですが……まぁ良いです。赤ちゃん扱いされなくなっただけマシです」
皆、のぞみ以外は部屋を出て行った。
「それじゃ光一さん。いつも通りお願い!」
「了解!魔法解除!うん。それじゃ刑務官さん、いつもお疲れ様」
「はい!お父さん、お疲れ様です」
「そんじゃ失礼」
僕は部屋を出た。その後にのぞみが部屋を出てきた。
「僕とのぞみに浄化魔法。僕のオモチャが無くなった……息子がオモチャになるかなぁ?」
「フフフッ。光一、お疲れ様。失禁シリーズが終わっちゃったわね」
「どうかなぁ?まぁそれは明日のお楽しみということで、ハミルトンくんの所に戻りますか。ゲート」
僕達は転移魔法でリーベ王国の城の会議室前に出た。





