344 アルバート国王の裁判 2
1年9月3日
正義の女神による事件の真相についての解説が終わる。
「あなたは事件の真相を聞いてどう思いましたか?」
「ワシは防衛大臣に騙された……だと?」
「どう思いましたか?」
「情けなく思う」
「因みに昨夜の事件後に世界各国の首脳を招き緊急国際会議を開きました。人権問題は重大な国際問題なので。全会一致で『断固として非難し断交を検討する』となりました」
「そ、そんな……」
「そしてあなたが防衛大臣に騙されて近衛兵に警察官を襲わせた事で近衛兵は殺人罪になり地獄行き決定です。あなたのせいですよ?」
「わ、私のせい?」
「もし昨日の事件が防衛大臣の策略で無ければ、あなたは無罪になっていませんでした。良かったですね。愚かにも罠にハメられて」
「無罪になっていなかった……?」
「そうですよ。近衛兵に命令した時点で責任が生じ『現場が勝手にやった事だ』では済まなかったんですよ?あなたは立派な犯罪者になるところだったんですよ。裁判長、法的にはそうなりますよね?」
「はい。防衛大臣の策略に騙されたから無罪になっただけで、そうでなかったら法的には有罪です」
「そういう事です。あなたも危うく地獄行きになるところだったんですよ。分かりますか?」
「わ、私は地獄行きになるところだった……だと」
「そもそもです。あなたが僕の演説を聞き防衛大臣を責め解任していれば多数の犠牲者と多数の犯罪者が出ることは無かったんですよ。あなたが決断を誤らなければ昨日の事件は防げたんですよ。国民の声に耳を傾け防衛大臣を解任していれば防げた事件です。あなたは無罪かもしれませんが政治的責任は非常に重いものです。先程も言いましたが国民の声を聞かないようでは国王失格です。従って宗主国の国王として僕はあなたに国王退任処分を言い渡します。僕は別に好きであなたを退任させた訳ではありませんよ。リーベ王国の国民の声を聞いた上で判断しました。僕としては仕事が増えるので非常に面倒で困るんですがね。残念です」
「私が国王退任処分?」
「ナビィ、デモ隊は国王退任を求めていたよね?」
「正確には政治的責任を追求する声が大きかったですね」
「僕は国民の声を大事にする。だからこれを観ているであろうデモ隊の参加者に聞く国王退任に賛成なら拍手をしてください」
「ナビィどう?」
「皆さん拍手をしています」
「デモ隊参加者だけに聞くのも何だな。ナビィ、国王退任に賛成か反対かアンケートを取って」
「分かりました。皆さんのスマホに通知を飛ばしました」
「これを観ている皆様、お手数ですがアンケートにご協力ください」
「アンケート……?」
「アンケートの回答率が100%になりました。結果を空間投影します!」
「賛成90%。反対10%……圧倒的多数が賛成だね。という事であなたは国王退任です。お疲れ様でした」
「ま、待ってくれ!私が国王退任になったら誰がこの国を統治するんだ!」
「息子さんにお願いしたい所ですが、残念ながら息子さんはまだ若いです。それに国民に暴行するような軍は改革が必要だと宗主国として考えています。従って息子さんが大人になるまでは我が国が統治する事になりますね。グラウベ聖国やリア王国と同じ扱いです。だから僕としては仕事が増えるので非常に面倒で困るんです。ですが仕方ないじゃないですか。それ以外に方法がないので」
「そ、そんな事は私は認めない」
「あなたが認めなくても国民が認めたんですよ。それにあなたが国王を続けた場合、世界各国は断交する事になりますよ?」
「そ、そんな」
「僕はですね。ブリタニアの夫としてあなたが有罪になったり地獄行きになるのではないかと心配したんですよ。結果的にあなたは防衛大臣に騙されただけなのでそうならずに済み僕は正直ホッとしているんですよ。妻のお父さんが犯罪者で地獄行きとか嫌ですからね。ブリタニアもあなたの事を心配していましたよ。司法、裁判の専門家であり地獄の門番でもある正義の女神から真実を解説してもらった後、正直良かったと思いましたよ。しかし同時にあなたは国王失格だと思いました。何度も言いますがあなたが選択肢を誤ら無ければリーベ王国民や警察官に犠牲者が出なかったし、多数の人が犯罪者となり地獄行きになる事は無かったので。本当に残念に思います」
「そうね。お父様、私も残念に思うわ」
「僕は今、あなたに強い憤りを感じています。何でだか分かりますか?」
「……分からない」
「あなたは自己保身を主張するばかりで犠牲者や国民に対して一切謝罪の言葉を口にしないからですよ!」
「そうね。私はあなたの娘としてリーベ王国民の前で謝罪したわ。でもあなたからは謝罪の言葉が一切ない事を非常に残念に思う」
「リーベ王国の宗主国である大和王国国王の権限によって裁判長の語った判決を認める。異議は一切認めない。被告人、最後に何か言いたい事はあるか?」
「……」
「残念ながら裁判長ないようです」
「それではこれにて閉廷とする」





