153 商業ギルドのギルマスと会談
1年7月13日
とりあえず受付に行く。
「すみません。国王ですがギルドマスターいますか?」
「こ、国王陛下!はい、ただいま戻って参りましたのでご案内します」
「お願いします」
ギルドの2階の突き当りの部屋まで来た。
職員さんがドアをノックして先に入る。
ガタッという音がした。なんだろね?
職員さんが出てきた。
「どうぞお入りください」
「失礼します」
「失礼します」
「こ、国王陛下、ど、どうぞお座りください」
「それでは失礼しますね」
「私も失礼します」
「部下が何やら失礼をしたと伺い参りました」
「い、いえ!とんでもありません。こちらこそ申し訳ありませんでした」
「あの、詳しく部下から報告を受けずに来たので恐縮ですがお金は受け取っていただけましたでしょうか?」
「あ、はい。それはもう。しっかり受け取らせていただきました」
「私の意図がうまく伝わらなかったようで申し訳ありません。私としてはギルドを舐めたつもりは無くむしろ逆だったのですが」
「そんな滅相もありません。私が勘違いしたのが悪いのです。こちらこそ申し訳ありませんでした」
「私は相場を理解しようとしなかった訳ではありません。理解した上で妥当だと判断しあの金額にしました」
「私の考えが足らず分からないのですが、どういう意味でしょう」
「私は2人に依頼した時に『500万円は高すぎませんか』と言われました。それに対してこう答えました『言外にこれだけ紹介料を払うんだから責任持って信頼できる人を紹介してねというメッセージがあるので妥当です』と」
「なるほどそこまで考えが及びませんでした。『何かトラブルがあったら紹介したギルドが責任を取れよ』という事ですね?」
「そういうことです。それには理由があります。まず文房具店、これは勉強をする子どもはもちろん大人も利用する国民生活に必要なものだと考えています。なので全街に店を設置したんです。次にスーパーマーケット。大規模な食品店だと思ってください。これも国民生活に必要なものです。この世界は慢性的な食糧不足にあります。しかし来月には世界中に輸出出来るだけの食品を生産出来る見込みです。国民の食糧不足を解消するためにこれも全街に店を設置しました。どちらも国民生活に必要なものです」
「なるほどそういう事情があったんですね。一国民として、そして商業ギルドのギルマスとしてどちらも必要性を理解しました」
「正直に申し上げると国営でやった方が楽なんですよ。トラブルが起こる可能性はありませんし、私の管理下にあるので何かあっても対処が出来ます」
「確かにその通りですね。銀行は国営でやられてますし」
「はい。銀行のように存在しないものを国営でやる分には国民の仕事を奪うことにはなりません」
「はい。分かります」
「ですが雑貨店や食品を扱う店は既に存在する。国営でやってしまうと国民の仕事を奪ってしまう。だから今回、国営で運営する案は採用しませんでした」
「なるほど……確かにその通りです。商業ギルドとしても困ります」
「そこで2人の店を営んでいるそれぞれの分野の専門家にお願いしようとしましたが、全ての街は無理だと言われました。そこまで管理出来ないと。そこで商業ギルドを紹介してもらいました。失礼ながら私は冒険者ギルドに所属していますが、商業ギルドの存在を知りませんでした。商業ギルドなら信頼できる人を紹介してくれるだろうと思い今回、依頼させていただきました。各街で信頼できる商人を探すのは手間がかかると思います。表向きは善良そうに見えて悪徳商人というのを紹介されても困ります」
「それは当然の事だと思います。ここまで聞けば私でもあの金額設定は納得しました。相場で依頼してギルドが手を抜いて適当に紹介してトラブルになったら困る。国民生活に直結するから尚更困る。そういう事ですね」
「はい。本来であれば私が最初から事の詳細をお伝えし依頼すれば要らぬトラブルを回避出来たのでその点、申し訳なく思います」
「いえ、国王陛下がお忙しいのは理解しております。私の方こそ勘違いをしてしまい申し訳ありませんでした」
「やっぱりコミュニケーションは大事ですね。私も反省しました。店の仕様もお伝えしますね。すみませんが、こちらを差し上げますのでメモをしていただけますでしょうか?」
僕は新品のボールペンと白い紙を渡した。
「国王陛下から直接、物を頂けるとは大変光栄に思います」
「紙の端の方で試し書きしてみてください」
「おぉ!これは慣れが必要ですが書きやすいですね」
「ペンの先にボールがあるのでボールペンと言うんですが使えなくなりましたら役所にお持ちいただくか記念に持っておいてください。色々な素材を使っているのでそのまま捨てるとマズイんです」
「分かりました。記念に飾っておくつもりですが気を付けます」
「それでは店の仕様をお伝えしますね。まず店内には防犯の為に防犯カメラという機械が至る所に設置されています。機械にとって人間で言う目だと思ってください。機械はその目を使って窃盗などの犯罪を検知します。検知したら店に配備されているエテルノに情報共有されて犯人を確保します。この街の文房具店はご存知ですか?」
「はい。知ってます。依頼を持ってきていただいた方の1人ですね」
「はい。その文房具店で窃盗事件が3件あったんですがいずれも配備されているエテルノが犯人を確保しました。店にとって商品を盗まれるのは大問題だと認識しております。それを防ぐ機能を全店につけています」
「それは素晴らしいですね。私も元は商人だったのでその重要性はとても良く分かります」
「条件としてこれも追加していただきたいのですが特にスーパーマーケットの方についてエテルノが1人だと店が大きくてカバーしきれないかもしれません。その場合は役所にご連絡いただければ無償で増員致します。売上が悪いという場合は考慮しますが最初から人件費を削る目的でエテルノの配備を要請するのは止めていただきたい。これは先程もお話しました人の仕事を奪う事はしたくないからです。エテルノは警備員であり在庫の補充を連絡する為の人員だとご理解いただきたい」
「それは商業ギルドとしても同じ考えです。商業ギルドは働きたい人の職場を紹介する仕事もしていますので」
「それから店の営業利益から3割をいただきたい。多すぎますかね?」
「いえ、店の準備までしてすぐにでも営業できる状態にした上ですし妥当だと思います。エテルノという警備員もいますし」
「それでは振込先の口座はこれでお願いします」
「この条件でしたらまず断る事はないでしょう。各街の商業ギルドに今いただいた情報も含めて共有します。必ず信頼できる人員を紹介させていただきます」
「よろしくお願いしますね。それでは他に質問等はありますか?」
「特にないです。大丈夫です」
「それではそろそろ失礼しますね」
「はい。本日はわざわざお越しいただきありがとうございました。また、問題を起こした件も改めてスミマセンでした」
「いえ、よろしくお願いします。失礼します」
「失礼致します」
ギルドから出て食堂に戻ってきた。皆まだ残っていた。良かった。
「ブリタニアどうだった?」
「思ったより悪い人じゃ無かったわ。コミュニケーション不足による不幸な勘違いね」
「僕も反省したよ。あ、ウィンドウちゃん。ヒビキさんの撮影した内容ってもう公開されている?」
「いえ、まだ編集中です」
「それならギルドマスターの件はカットしといてもらえると助かる。事情も伝えてね」
「分かりました」
「ふぅ、これで一件落着だね」





