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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第六章

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緊急招集

 

「妖精様!緊急の手紙です!」

 ジェッズの声だ。


「ジェッズ?サラサも?」

 二人はペアで飛んでいるので一緒に尋ねてくることが多い。

 二人はあんなにサリフェルシェリに怒られて気を付けていたのに、窓を破壊しそうな勢いで家の中に飛び込んできた。


「一緒です!ギルドに魔物が溢れました!」

「緊急の呼び出しです。ユエとライ宛です」

 真っ赤な紙を片手に二人は肩で息をしながらライとユエに手渡す。


「上位冒険者全員に緊急要請です!」

 ユエとライは慌てて立ち上がると無言で自室に走り出した。


「ユエ!ライ!」

「サリフェルシェリと居るんだ」

 慌てて声をかけるシャオマオに、振り返りもせずに二階に向かうユエは叫んだ。

 二人はギルドに所属して、上位冒険者として様々な優遇措置を受けている。

 それはこう言う時のためなのだ。


 ユエが自分のことを人に任せたことなどない。

 こんな風にシャオマオの顔も見ないで話をすることなど一度もなかった。

 だからこれが曲がらないことなのだとシャオマオは理解した。


「いや」

「時間が惜しい。言い合いをしている場合じゃないんだ。サリフェルシェリの指示で逃げろ」

 素早く武器を担いだライとユエが現れた。

「必ず迎えに行く。シャオマオ」


「逃げない。シャオマオも行く」

「シャオマオ!」

 ユエはいつになく強い口調で止めようとした。


「勘違いしないで。妖精のシャオマオが行くと言ってるの。誰も邪魔できない。ユエでも」

 シャオマオが銀の瞳をギラギラさせながら提案する。

「ユエ。虎になって。シャオマオを乗せて走って。ギルドに急ごう」


 妖精のシャオマオの意向に逆らったらどうなるかわからない。

 それはシャオマオが意識しなくとも、だ。


「鳥族の誰かを呼び出して武器を運んでくれ」

「俺たちもまだ飛べる。任せてくれ」

 ユエは息を整えて水を飲んでいたジェッズに武器を任せる。


「シャオマオ。君を連れて行く。必ず守る」

「うん。信じてる。ユエ急ごう」

 ユエは服を脱ぎ捨てて虎姿になり、シャオマオを乗せてジェッズたちが入ってきた窓から大きく飛び出して夜の街を駆け抜けた。


 ライと薬箱を持ったサリフェルシェリは街に走っていった。

 馬を借りてから向かうのだ。



「ユエ。絶対に落ちないから好きに走って!」

「ぐるああああ!」


 ユエはシャオマオを乗せているのにいつもより体が軽い事に走りながら驚いた。


 風の精霊がほんの少し背中を押している。

 木の精霊がほんの少し道を広くする。

 大地の精霊がほんの少し雨でぬかるんだ道を走りやすくする。

 水の精霊が雨をユエ達の進む方向だけ避けてくれる。

 それがこんなにユエの走りに影響を与えるとは。

 シャオマオも、全く重さを感じない。

 まるで自分一人で走っているのと変わらない。

 いや、それ以上だ。

 空を飛んで追いかけて来るジェッズを引き離して置き去りにしそうなスピードが出ている。


 自分の上に座っているぬくもりも安定している。

 自分を掴む手の感触。

 まったく存在を煩わしいと思わせない。

 それどころかユエを軽く操縦している。

 一人でいるよりよっぽど体が動く。



 ユエは走り続けて考えられる時間の半分とまではいかないが、緊急要請を出した事務局員が驚くほどのスピードでギルドに到着した。


「ぐあああああ!」

 シャオマオを乗せたまま、ユエは街の人を襲っていた建物くらいの大きさの魔物を爪で引き裂いた。


「ユエ。シャオマオ一気に魔素をきれいにしてみるから、そのまま町の中いろんなところ走りまわって!」

 ユエは一声鳴くと町中を縦横無尽に走り回り、魔物を見つけては爪や牙で攻撃していく。


(魔素、高濃度魔素、薄く、薄く、みんなが楽になるように。すべての人が楽になるように。もちろん魔物も!!)

 シャオマオの姿は闇の中で薄く銀色に輝いていた。

 そして、大きな虎に乗って銀の尾をなびかせながら、銀の光をまき散らしながら町中を浄化する。


「大神様・・・?」

「銀の大神?」

「銀狼様?!」

 町中の人がシャオマオを見かけるたび、驚いて叫ぶ。


「ユエ、みんな避難する場所、普段から訓練してるんだよね?」

「ぐる」

 ギルドの街はギルドの冒険者に守ってもらえる代わりに「何かあっても自己責任」だ。

 もちろん引退した冒険者もたくさんいるし、冒険者が住んでいることで守ってもらえることも多い。


 その代わり、ダンジョンには近い。

 魔素も比較的濃い。

 普段から何かあっても「自分の身は自分で守ろう」と思えるような心意気がないと住めないような町だ。

 なので、住民は普段から備えをしっかりしているほうだ。


 道の先で魔物に襲われている人も40代くらいの女性だが、大きな大剣を振り回して魔物と果敢に戦っている。


「うりゃあ!!」

「ぐわう!」

 大剣で魔物の右腕をはじいたところで、ユエが背中から魔物を引き裂いた。


「助かったよ!」

「おねーさん気を付けて逃げてね!」

「銀狼様!?」

「ううん。妖精なの」

「ええ!?」

 驚いた女性を置いて、次の場所に向かう。



 遅れて妖精の住まう屋敷から、虎が女性を乗せて駆け抜けていったという報告が王城に上がった。

「シャオマオ様か?」

「いえ、子供ではなく成人女性だったと言います」

 ウィンストンの報告に、ダニエル王は首をひねる。


 あの虎のユエがシャオマオ様以外の女性を背に乗せて走るとは思えない。

 何が起きているのかと考えた瞬間だった。


「王様!ギルドから避難要請です!!」

「なに!?」

 王の執務室の扉を乱暴に開けた兵士が駆け寄ってくる。


「魔物が北のダンジョン方面から現れて、現在交戦中。ギルドで足止めしているとのことです!!」

「ウィンストン!住民に知らせを。訓練通りに女子供から避難させよ!!」

「はい!」


 城は魔物が溢れた時のために城の庭園から入れる住民のための地下避難場所がある。

 女子供、戦えない老人たちは普段からそこに逃げる訓練をしているのだ。


 人族は戦えるものが少ない。

 力も弱い。

 生命力も弱い。

 そのため徹底的に多くの人が生き残れる道を探して実行に移している。


「シャオマオ様が心配だ。シャオマオ様の屋敷に使いを」

「はい!」

 兵士は走って部屋を出ていく。


「王子の部屋に行き、王子を避難させよ。住民と同じ地下へ。地下の住民を守るようにと伝えよ」

「はっ!」

 もう一人の兵士はジョージ王子の部屋に向かっていった。


「ギルドでうまく食い止められればいいのだが・・・」

 ダニエル王は祈るようにつぶやいた。



「ユエ。ギルドの方、なんだかすごく変な感じよ」

「ぐあう」

 町の中央でやっと到着したライとサリフェルシェリと出会えた時には、町中の大型の魔物はユエがほとんど退治してしまった後だった。


「ギルドの本部が騒がしいな」

 目線の先にはギルド本部がある。

「ここから先はユエとライに任せましょう。けが人の手当てをサリーと一緒にしましょう」

 サリーの提案に頷こうとしたところでドン!と大きな音が響いた。


 ギルド本部の屋根が一部破壊されたのが見えた。


「ギルドの中に魔物か?」

「ぐるううう」

 ユエとライはそのまま走って行った。


「さあ、魔物に攻撃されて高濃度魔素の影響を受けている者がいます。シャオマオ様行きましょう」

「はい!」

 シャオマオは不安な気持ちを抑えてサリーが走り出したところへ一緒についていく。


(なんだろう・・・すごくそわそわする。怖い?焦ってる?ううん。違う)

 自分でもよくわからない気持ちが胸いっぱいに広がっている。

 それでも街中を走りながら、高濃度魔素が薄れるように祈るとシャオマオの体は銀色に輝く。

 先を走っているはずなのに、その気配を感じたサリフェルシェリは涙を流しながら走る。


「泣かないでサリー。集会場に急ぎましょう」

「申し訳・・・ぐす・・・」


 広場に建てられた簡易テントの周りにはけが人を守るための冒険者が数人いて、手当の心得があるものがテントの中を行き来している。

「魔素中毒者はシャオマオ様が癒します。一番ひどいものは?」

「奥のテントです。ありがとうございます」

 有名なエルフのサリフェルシェリが紹介してくれたおかげで、冒険者たちも素直にシャオマオを受け入れてくれた。

 それがなくてもシャオマオが現れたとたんにテントの周りの魔素が薄れたのも信用に値したのだろう。


「シャオマオよ。手を握っていい?大丈夫。魔素をきれいにするだけ」

 テントの中でけが人を見つけたシャオマオはすぐにけが人の傍らに座って優しく話しかけた。

 シャオマオが手を握ってすぐに、けが人の体内の魔素が正常に戻った。

「あ、ありがと、ござい・・・」

「いい。休んで。怪我はまだ治ってない」

 シャオマオは笑顔で短く返事する。


 一人を癒したが、まだまだけが人はいるようだ。

「サリーどんどん癒していくね」

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