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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第六章

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シャオマオの成長 ユエside

 

 ユエはいつも、シャオマオの動きを見逃さない。

 寝ていても、いつでも気にしている。


 シャオマオが深く眠っているときも、なにか夢見てすっと口を笑顔の形にするときも、片時も見逃したくないと思っている。


 もちろん自分が眠ってしまっている時間もあるが、シャオマオの隣で体温と吐息を感じて眠っていること自体に幸せを感じている。


 あのきらきらと銀の星が散るタオの実色の瞳を閉じるとき、「今日も安らかに眠ってほしい」と願うし、うっすらと瞼が震えて瞳が現れるときには「今日という日の始まりを自分から始めてほしい」と思っている。


 そんなユエが、シャオマオの変化に気が付かないわけがなかった。

 自分の隣で眠るシャオマオから清浄な魔素が爆発したのかというくらい膨れ上がったのだ。


 目を覚ますと、窓からの月光を浴びたシャオマオはすすっと体が成長を始めた。


 髪は美しい銀糸のようなきらめきを持って伸び続けて窓からの光を反射している。

 今ある髪はタオの実色のままで、新しく伸びた部分が銀糸だ。


 体に合わせてすんなりと伸びた手足がいつものようにユエに絡まる。

 ぬくもりを探すように、するするとユエを撫でる。

 ユエの体温と毛皮を感じて口角を上げて「気持ちいい」と小さくつぶやく唇はいつもどおりタオの実色だ。

 ぴるぴると動く耳はいつもの丸い耳ではなく、小ぶりなエルフのように耳トガリだ。

 そこも変化といえば変化だが、一番の違い。

 今までなかったものがある。


 髪と同じ銀糸の豊かなしっぽだ。


 長いしっぽがふさふさと波打つ。


 ユエは自分の全身に鳥肌が立つのを感じた。

 全身に力がこもる。

 思ったように体が動かせない。

 石のように固まってしまった。

 意識はいろんなことを考えて高速で動いているが、全身に力が入って自分の思ったように動かない。

 呼吸は浅くて自分の心臓の音ばかりが聞こえる。


 そんなユエにお構いなしにシャオマオは、桃花はすりすりと全身をユエにぴたりと合わせて来る。

 思わず小さな声を出してしまったが、まったく桃花は目を覚まさない。


 少しホッとした。

 もう少し観察したい。



 小さなシャオマオはユエの体にぴったりと収まるサイズでとてもとてもかわいかった。

 抱けばどの位置に顔がきて、どうやって世話をすればいいのかは考えなくても自然と体が動く。

 シャオマオだって、こてんと頭をユエの肩に預けてきて、安心して力を抜いてくれる。

 かわいい。シャオマオという存在はかわいいの塊なのだ。



 ユエは幼いシャオマオももちろん愛しているが、いまの姿がまぶしくて、美しくて、どちらがいいとは言えないが(どちらもいいからだ)、シャオマオの姿も桃花の姿も同じように愛おしさが溢れて来る。


 桃花は大きくなってしまったせいで、着ていた服が小さい。

 ほとんど体が露出してしまっているので寒いのかもしれない。

 だからいつもよりすり寄ってくるのかも、といろんなところを見ながら考える。


 とにかく起こして、ユエのシャツでも着せて、肌を隠さねばと思った。

 寝たまま着替えさせるか、起こして服を着てもらうか考えて、起こすことを選択したのだが、口からついて出て言葉が


「結婚しよう」


 だった。


 思わず心からの自分の気持ちが先立ってしまった。

 無意識だったが声が震えていた。

 とりつくろったりしていない、本気の言葉がでてきたのだ。



 タオルケットでシャオマオの体を包んで抱き上げた。


 なんてきれいに成長したんだ。

 俺の桃花。

 こんなに美しい俺の片割れ。俺の番。俺の花嫁。


 知ってはいたが、なんてきれいなものをもらったんだと改めて自分の幸運をかみしめた。



 そして、驚いた桃花の声で、少し我に返った。



「敵襲!」

「シャオマオ様!!」

 ライとサリフェルシェリがそろってユエの部屋のドアを蹴破って入ってきた。


 ライはククリナイフのような大きな大きなナイフを持っていたし、サリフェルシェリも珍しく精霊の力を借りるための札を持っていた。


 二人の目に飛び込んできたのは、女性をタオルケットでぐるぐる巻きにして横抱きにしている半裸の人姿のユエだった。


「・・・・・・・説明してくれ」

 ライはそれしか言えなかった。



「桃花、君のサイズの女性の服がないので、俺のシャツを。下は履かなくても―」

「お待ちください。サリーの持ってる布がありますので」

「ち」


 どんどん話が進んでいるし、みんな普通にシャオマオが成長したことを理解している。

 しかし、当の本人は受け入れられなかったようだ。

「こ・・・こんなの、ど、どうしよう・・こわい・・」

「桃花?」


 小さく小さくつぶやいて、体を縮めてカタカタと震えている。

「桃花。桃花。俺の桃花。大丈夫。大丈夫だよ。深呼吸して」


「はふ、ひ、ひ、ひう」

「大丈夫。何も変わらないよ。息をゆっくり吐いて」


「水持ってくる」

 ライがキッチンへ走っていく。


「シャオマオ様。大丈夫ですよ。怖いものはサリーが追い払いますよ。ほら。精霊たちがたくさん集まってきてきれいですよ」

 風の精霊がサリフェルシェリの札に呼び寄せられて集まってきたのだろう。

 部屋の中で風が吹いて、青ざめた桃花の髪を弄んですこし汗を冷やす。


「・・・きれい」

 涙の盛り上がった銀の目できょろきょろと周りを見回す桃花。

 どうやら精霊がきちんと見えているようだ。


「桃花。服を着て来る?それとももうしばらくこのままでいる?」

「ひ、ひひ、ひとりに、しないで」

 まだ少し震えてる。


「わかったよ。桃花。俺の桃花。一緒にいるよ」

「サリー。サリーも手をつないで」

「もちろんです。シャオマオ様」

 ひょこっとシーツから出した手をサリフェルシェリに差し伸べる。

 サリフェルシェリは両手で桃花の手を握る。

 大きくなったと言っても、まだまだ小さな手だ。

 すっぽりと隠れてしまう。


 ユエの部屋にはベッドしかないので、ベッドに腰かけて、きゅうと抱きしめる。

 シャオマオのように全身がきちんと抱きしめられていないことに違和感を感じているようだったので、できる限り小さくなった桃花をきゅうと抱きしめてあげる。


「シャオマオちゃん。お水飲める?」

「のませて」

「うん」

 ライに甘えて少しずつ水を飲ませてもらう桃花。


 まだ自分がみんなに甘えて受け入れてもらえるのかを確かめているようだ。


 小さなコップはシャオマオのコップだ。

 いまの桃花には小さなコップだけど、いつも使ってるコップが目に入って少しホッとしているようだ。


「もっと飲む?」

「ううん。にーに。ありがとう」

「どういたしまして。俺の妹。かわいいシャオマオちゃん」


「にーに・・・。シャオマオ。怖くない?」

「怖い?どうして?」

「シャオマオは怖い・・・こんなに急に大きく、大人に、なって、こわい」

 シャオマオの瞳にはこんもりと涙が盛り上がる。


「にーにはなにも怖くないよ?だって、シャオマオちゃん、なにもかわらない」

 瞬きをした瞳からころりと落ちた涙をライが拭う。


 なんてきれいなんだ。

 なんて美味しそうなんだ。

 全部嘗めとってしまいたい。味わい尽くしたい。


「かわいくてかわいくてしょうがない。何をしてもかわいい俺の妹だよ」

「そうですよ。なにもかわらない。かわらなくていいのですよ」


 ああ、そうか。

 俺はまた自分の気持ばかり。

 俺の桃花を不安にさせた。

 桃花。桃花。こんなに小さくてかわいい桃花が不安に陥っている。


「ごめんね。シャオマオ。俺のシャオマオ」

「ユ、エ」

「うん。ごめんね。びっくりさせたよね」

「びっくりしたの。もう、大人になったの、怖い」

「ううん。シャオマオ。心のままに。シャオマオの心が決めるんだよ?シャオマオがしたいようにするんだ。見た目にとらわれなくていいよ」


「け、結婚、すぐしなくていい?」

「う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」

 すぐしたい。

 今したい。

 本当なら誰にも見せないで今すぐゲルに戻って二人っきりになりたい。


「シャオマオの気持が優先だよ。シャオマオ。ごめんね」

「ううん、ユエもびっくりしたのよね」


「本当にびっくりした。俺の宝物がまたきれいになって驚いた」

「きれいなの?」

「うん。部屋で鏡を見て来るといいよ。ついでに着替えて来る?」

「う・・・うん」

 シャオマオは自分の姿と向き合う気持ちになったようだ。


 強い。

 俺の宝物は流石だ。


「シャオマオ。ゆっくりと準備していいからね。リビングで待ってるから」

「うん。わかった」


 部屋に連れて行って、俺のシャツと、サリフェルシェリの腰布を置いて部屋からでた。





「んにゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」




 鏡を見たであろうシャオマオの悲鳴がまた響いたが、とにかく落ち着くまで待って居よう。


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