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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第五章

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お手紙と交換日記と

 

 シャオマオは晩御飯を食べ終えた後、自室の机の前にちょこんと座ってむんむんと悩んでいた。

「シャオマオ。お茶にしないか?」

「あ、ユエ。ありがとう」


 学校に行って、初日の授業も終えた。

 早速「ぱあぱとにーにとねーねに手紙を書かないと!」と、夜空のレターセットと青空のレターセットを広げていた。


 しかし、いきなり人族の子供たちに「危険だ」と言われたことは流石に書くことができない。

 いいことだけを書こう!と思ってレターセットを取り出したのだが、良くないことを黙っているのはうそではないのかとむんむん悩んでいるのだ。


「シャオマオ。ペンが進まないのかな?」

「あい・・・」

「今日、聞かせた俺がどれだけシャオマオを大切に思っているのかって話を書いてくれれば何枚も書けると思うんだけど」

「う?それはユエの気持で、シャオマオの気持じゃないのよ?とっても嬉しかったけど」

「しゃ、シャオマオ・・・!」


 にーにとねーねのことは心配だ。

 いくら未成年の時から戦闘訓練をしていたとはいえ、15歳で成人してすぐに二人で冒険者(探検家)を始めたのだ。不便なことも多く、辛いこともあるはずだ。

 そして、心からシャオマオのことを愛してくれている。そんな二人にいまシャオマオの心配をさせてしまうのは申し訳がない。


「いただきまーす」

「どうぞ。召し上がれ」

 ユエが用意した程よく冷まされたミルクたっぷりミルクティーと、お茶請けのチョコチャンククッキー。レターセットを汚さないように片づけてから楽しむ。


「おいっしー。ありがとうユエ」

 チョコチャンククッキーは温めてあって、しっとりとしてとろりと甘い。

「よかった」

 ふっと笑って嬉しそうにユエは猫族の里のお茶を飲んでいる。


「シャオマオに友達ができて、守ってくれる人が周りにいることは知らせた方がいいと思うんだ」

「う?」

「例えばミーシャはシャオマオを大事にしてくれているだろ?」

「あい」

「あとは、カラとジュードの犬族の二人だっけ?そのほかの人族はまだかもしれないけれど、確実に二人は仲間だろ?」

「にゃかま!」

 興奮のあまり噛んでしまった。


「そうだよ。二人はシャオマオを正しく感じて守ろうとしてくれている。それもこれも、俺のシャオマオが可愛くて幼気で愛らしいお陰だと思う」

「シャオマオ・・・お友達出来たことはにーにたちとぱあぱに言いたい!でも、妖精だからってお友達になれない子もいるの・・・。それを知ったらにーにたちも悲しくなっちゃうかも・・・」

 うっとりとしたユエをほっといて、シャオマオはもやもやを語る。

 最近シャオマオはユエの扱い方を少し学んできたようだ。こういうときはほっとくと良い。


「いや、あの二人は怒ってダンジョンから出てくるな」

 笑いながらライが現れた。

「ライにーに」

「シャオマオちゃん。レンレンとランランあての手紙に、妖精だからって言ってたやつらの名前を書くんだよ」

「う?書くの?」

「そう。そしたらこっそりレンレンとランランがダンジョンから出てきて上手くやってくれるよ」

「うまく?」

「そう。こんな感じに・・・」

 ライは左右の手で何かを捻るようにしてからちぎるように動かした。

「にゃああああ!!!怖い!!」

「ライ!シャオマオを怯えさせるな!夜眠れなくなる!」

 ひしっとユエがシャオマオを抱きしめたが、ライはケラケラ笑っている。


「だってさあ。妖精だからなんて理由でシャオマオちゃんをはじこうとするなんて。腹立つよ」

 すすすっと里のお茶をすすりながら、ライがまじめな顔をする。

「それについてはミーシャが上手にフォローしてくれたみたいでよかったです」

 サリフェルシェリもやってきた。


「ミーシャも大変なの。多分」

「ミーシャはあのニーカの血を引いてると思えないくらい出来すぎなんだよ」

 ライがにっと笑う。

 ライは上級生の格闘技訓練の監督をしているらしい。


「あいつの格闘技センスは鳥族を軽く超えてる。上級生に交じっても負けてない。普通に力もある。空も飛べる。剣も使える。頭も使う。冒険者になってもそこそこの成績を出すぞ」

「そうですね。成績もいいですし、学習意欲も高い。魔力も強そうですし将来が楽しみです」

 サリフェルシェリもニコニコする。


「氷の王子様なんて呼ばれてたのがウソみたいに今は感情豊かだけどな」

「シャオマオ様のお陰ですよ」

「う?最初からニコニコしてたよ?」

「シャオマオちゃんに会えるのを相当楽しみにしていたみたいだよ?」

「鳥族のみんな、シャオマオにとっても優しいの」

「そういえばユエはミーシャのこと全然気にしてないな?」

「何を?」

ユエはむぐむぐクッキーを膝の上で食べているシャオマオの頭を撫でながらライに聞く。


「いや、シャオマオちゃんのことに関しては俺に対しても嫉妬するほどのお前が、ミーシャには全然だろ?」

「ミーシャはシャオマオを正しく崇拝している。妖精としてだけではなく、シャオマオという存在自体を尊いものとして感じている。そして、俺に対してもシャオマオの片割れとして接している。特に何も気にすることがない」

 シャオマオの可愛いつむじをじっと見ながらユエが答える。


「ユエに警戒心を抱かせないなんて、ミーシャ出来すぎでは?」

「神童とはミーシャのことでしたか」

「出来すぎて怖いよ」

「ミーシャが卒業したらエルフの大森林にある高等学校に留学してもらいましょうか」

 ライとサリフェルシェリがこそこそ話す。


 クッキーを食べ終わって、濡れタオルで手を拭いてもらったシャオマオは、何も書かれていないテーブルの端のレターセットを見てため息をついた。


「・・・シャオマオ」

「ユエ・・・。お手紙どうしよ」

「楽しいことをたくさん書いてあげて。シャオマオが楽しいと思ったことを」

「怖いって言われたの、書かなくていい?」

「友達ができたことと、授業が楽しかったことや頑張ったことを書いてあげて」

「シャオマオ様。今日は書き取りを頑張りましたよね。きれいな字を書けていました。その美しい文字で書く初めての手紙が届くのですから、それだけで喜んでもらえますよ」

「そうだよ。シャオマオちゃんが書いた手紙が届くだけでみんな喜ぶよ!」

「俺だってシャオマオの手紙が欲しい」

「ユエ。お前がねだるなら俺だってほしい」

「わたくしも欲しいのを我慢しているのですからおやめなさい」

 大人気なく三人がギャーギャー言い合ってる間に、シャオマオはノートに下書きする。


「サリーせんせ。これ、間違ってないか確認してほしいの」

「はい。シャオマオさん。添削しますね」


「シャオマオの書く文字は、大きくて、ゆったりとしていて、とてもやさしい。姿はこんなに愛らしいのに、文字は落ち着いて大人のようだ・・・・」

 うっとりとした顔でノートの文字を覗くユエ。


「ユエはどんな字を書くの?」

「俺は文字を書くことがなかったので下手なんだ。人の姿になれるようになってから、少しずつ練習していたんだけど・・・」

 シャオマオが新しいノートとペンをユエの前に置くと、少し照れたようにしながら一生懸命シャオマオに向かって手紙を書いてくれた。


『俺の桃花(タオファ)。今日はいろんなことがあって、たくさんのことを考えたかもしれないけれど、君は君だよ。誰にも妨げられない。自信をもって。俺の大切な片割れ。俺の唯一。大好きだ』

 ユエの文字は、書き慣れていないという言葉通りかもしれない。

 でも、丁寧に、丁寧に、ゆっくりと、シャオマオにまっすぐ伝わるようにと綴られていた。


「ユエ。ありがとう・・・」

 こんなに気持ちのこもった手紙をもらったのは初めてだ。

 胸の奥が熱くなる。


「シャオマオちゃん。このままこのノートでみんなと交換日記しようよ。ユエも文字の練習ができる」

「う?こーかん?」

「交換日記。シャオマオちゃんが今日あったこととか、相談したいこととか、思ったことでも何でもいいからここに書く。シャオマオちゃんも誰かが書いたことに返事する。みんなで順番に書くね」

「ああ!『交換日記!』」

「シャオマオとは寝る前に今日あったことをたくさん話しているから大丈夫だ」

「え?でも書き留めておくと記念になるぞ?」

 文字を書くのをめんどくさいと思ったのか、一旦断ろうとしたユエが、「記念」の言葉にピクリと耳を動かした。


「シャオマオ様!シャオマオ様の前の星の言葉も書いてくださいね!私は別の星の言葉を覚えたい!」

「俺も覚える。シャオマオのことは何でも知りたい」

「ああ、暗号みたいでいいな。シャオマオちゃんと俺たちだけで通じる言葉」

「嬉しいです。シャオマオ様にいつ教えてもらおうかと悩んでいたんですよ」

 三人はきゃっきゃと喜んでいる。


 こんなに喜ばれてしまっては、断れない。

 シャオマオは、手紙に続いて交換日記にも頭を悩ませることになってしまった。

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