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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第五章

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入学式の準備は騒々しい

 

「シャオマオ。今日は髪を編み込みにしていいかな?」

「あい。おねがいします」

 シャオマオは部屋のドレッサーの前に座って、ユエに髪を整えてもらう。


「本当にシャオマオの髪は素直だね」

「そうなの?シャオマオにはすなおじゃないのよ?」

 たまにだが、自分で顔を洗った時に「髪も自分でやる!」といってブラシをかけたがまっすぐに整えるだけで飽きてしまった。何度言い聞かせてもシャオマオの行ってほしいところに行かずに反対を向くのだ。


「じゃあ、やっぱりずーっと俺がシャオマオの髪を整えるよ。毎日ね」

「ありがとうユエ」

 この家に来てから毎日のようにこのドレッサーの前に座ってユエに髪を整えてもらっている。

 少しアンティークな、丁寧に磨いて大事に使われていたのが見える家具だ。

 シャオマオも大切に使おうと思っている。


 今日はニーカとチェキータが猫族の里から明日の入学式に着る猫族の伝統服を届けてくれた。

 髪を整えて、みんなの集まるリビングに行くと、みんながシャオマオを待っていてくれた。

「妖精様。こんにちは」

「チェキータ、ニーカ。こんにちは。お荷物ありがとう」

「いいえ。妖精様のドレスを運ぶ栄誉を頂けたのです。こちらこそありがとうございます」

 チェキータはシャオマオの前に跪いて、いつものように指先にキスをして手を自分の頭に乗せる。

 シャオマオも、いつものようにチェキータの髪を撫でて微笑む。

 子供が頭を撫でてもらいたがるように、チェキータはシャオマオに髪を撫でてもらうのをうっとりと喜ぶ。

 いつも王子様のような振る舞いにシャオマオは照れてしまうのだが、この時は子供と大人が逆転してるみたいでちょっと嬉しい。


「さあ、妖精様。これが預かってきた伝統服だよ!着て見せてくれ!」

 ニーカがリボンのかかった箱を見せてくれる。

「ど、どんな服かにゃ?ドキドキする」

 緊張のあまりちょっと噛んだ。


「さあ、開けてみましょう」

 サリフェルシェリに手伝ってもらって細長い箱を開くと、紙に包まれた服が現れる。

 緊張しながら紙を開くと、真っ白な伝統服が現れた。

「まっちろ!!」

 また噛んだ。


 つやつやとした光沢のあるシルクのような生地は染められておらず、真っ白のままだ。

 形はいつもの伝統服で、長めの上着にズボンを履く。

 上着には飾りひものボタンがついていて、いつもと同じ形だが刺繍が鮮やかにされている。

 裾に行くほどに大きな花が銀糸でされているので一見すればシンプルな服に見えるが、しっかりと近くで見ると華やかな手のかかった仕立てであることがわかる。


「靴もついてるよ」

 セットの靴も白で、同じく刺繍がされている。

「さあ、着てみてよシャオマオちゃん」

「こ、こんなきれいなの、シャオマオ着ていいのかな・・・」

「何言ってるの。シャオマオちゃんのために用意したんだよ?この刺繡のところ触ってみてよ」

 ライがシャオマオの手を取って、刺繍の上に誘導する。


「・・・わぁ」

「どう?」

「あい。シャオマオのこと考えてくれたの、わかる・・・」

「でしょ?」

「シャオマオが学校楽しく行けるようにって、考えてくれてるの・・・」

「うん」

「うれしい・・・」

「よかったね、シャオマオ」

 シャオマオがほろりと涙を流すのを、ユエが指で掬い取ってくれた。


「誰が刺繍したかわかる?」

「いっぱい・・・。ここはスイ」

 一番大きな花をなぞる。


「ダァーディーからの手紙が入ってるよ」

 まだ読めないので、ライが読んでくれる。


 猫族のみんながシャオマオを歓迎してくれていたこと。

 シャオマオのお陰で魔素が薄れたことを感謝していること。

 みんなが学校に行くシャオマオを応援してくれていること。

 学校に行くのを決めた頃から、シャオマオのお母さんになりたい女性が集まって、みんなでデザインを考えて刺繍してくれてたこと。


 そんなことがたくさん書いてあった。

 シャオマオはもう涙が止まらなくなって、ぎゅうぎゅうとユエに抱き着いてユエの服に涙を吸わせた。


「シャオマオ。さあ、涙が止まったら着てみようね。サイズが合っているか確認しないと」

「・・・あい」


 ぬるいハーブティーをサリフェルシェリに飲ませてもらって水分補給をしたら、部屋に戻って服を着てみる。

「うん。少し裾上げした方がいいかと思ったけどちょうどだ。妖精様、背が伸びたんだね」

 着替えを手伝ってくれたチェキータがにこにこしている。

「うれしい。お姫様の気分よ」

「みんなにも見せてあげよう、お姫様」

 ウインクしてくれたチェキータに、ぽぽぽっと赤くなってしまうシャオマオ。

 本当に子供のいる人妻とは思えない色気である。


 もう一度リビングに行くと、みんながびっくりした顔をしたのでシャオマオもつられてびっくりしてしまった。

「な、なに?変なの?」


 走ってきたユエに抱きしめられる。

「シャオマオ。今すぐ結婚しよう」

「け!けっきょん!?」

「ユエ!落ち着け!」


「だめだ!こんなきれいなシャオマオを有象無象の前に出せない!番登録をして、俺のものだとはっきりさせておかないと!!」

「お、落ち着けって!!」

 シャオマオを抱えて外へ飛び出そうとするユエの首と肩を抱えてライが慌てる。

「ユエ!落ち着きなさい!まだ番登録はできません!未成年です!!」

 サリフェルシェリもユエの前に立ちはだかって、進路を妨害する。

「きゃ~」

 シャオマオは抱えられて何が何だかわからない。


「落ち着くんだ!」

 珍しくチェキータが大きな声を出した。

 驚いてみんながピタッと止まる。

「ユエ、妖精様を離しなさい。服がシワになる」

 ユエはすっとシャオマオを下ろした。


「妖精様、大丈夫ですか?」

「あい。・・・びっくりした」

 チェキータにほつれた髪を耳にかけてもらったり、ゆがんだ服を少し直してもらう。

「まったく男たちときたら。妖精様が美しくて驚くにしても先に言うことがあるでしょう?」

 もう一度みんなの前に立つと、みんなにっこり笑ってくれた。


「この星で一番かわいいよ」



 夜になって、ライのご飯を堪能したチェキータとニーカは笑顔で帰って行った。

 服は無事にみんなに披露できたし、明日の入学式の準備は万端だ。

 着替えてハンガーに釣ってある明日の服を見てから、カバンに入れた荷物を何度も何度も確認する。

「ハンカチと。水筒と。・・・念のため、ノート。ペン。インク」

「うん。明日は入学式が終わったら教室につれていってもらう」

「あい」

「そこで教科書をもらうだけ」

「あい」

「教科書は重いから、みんな親に持ってもらうんだって。だからダァーディーに運んでもらうといい」

「あい」

 明日のことを考えてドキドキするのを繰り返しているが、ユエは何度も何度もシャオマオに付き合ってシミュレーションをしてくれる。


 シャオマオが学校に通うとなったときは、シャオマオではなくユエが慣らし保育を必要とするくらいだったが、今度はシャオマオが動揺している。

(ユエと離れるんだ・・・・・)


 ユエがいなくて、自分で何でもやらないといけない。

 怖い。けど、楽しみでもある。

 前の星でも学校に通ったことがない。

 自分と同じ年の子供と触れ合えたのも、ほんの小さな頃だけだ。

 あとはずっと個室の部屋でしか過ごしていない。


 ユエは本当にシャオマオと離れることにもなれたのか、ずいぶんと落ち着いているように見える。

「ユエは明日、入学式のときどこにいる?」

「俺は少し離れたところにいるよ」

 生徒の隣には保護者が一人だけ座ることができる。

 今回は父親のダァーディーが座るので、ユエたちは少し離れた後ろの席だ。


「近く?」

「うん。なにかあったらすぐに駆け付けるよ」

「見えるところにいてくれる?」

「うん。シャオマオから見えるところにいるよ」

「シャオマオうまくやれるかしら」

「大丈夫だよ。シャオマオは大人しく椅子に座って待つことができるだろう?」

「あい」

「入学式は小さい子に合わせて短い時間だけだよ。不安だったら横のダァーディーがずっと手をつないでくれる」

「あい」

「本当はシャオマオの一番近くに居たいんだけどね」

「ユエ」

「うん。決まりだからしょうがない。ぱあぱとの思い出を作って」

「ユエ。ありがとう!」

 ぎゅうと抱き着く。


 シャオマオはユエがどれだけ自分と一緒に居たがっているか知っている。

 同じくらい、ユエはシャオマオがどれだけ「家族」というつながりを特別に思っているのかも知っている。

 だから、思い出を作ることを優先してくれたのをとてもありがたいと感じている。


「安心して。シャオマオ。明日は待ちに待ったダァーディーに会えるんだから。たくさん寝て、元気な顔で迎えてあげようね」

「あい!」

 ユエが大人の対応をしてくれるんだから自分も頑張ろうと、シャオマオは鼻息を荒くしたのだった。


式典には伝統衣装を着る人が多いです。

あまり裕福でない人でも、貸衣装屋さんがあるので安価に派手な衣装を着ることもできるので、入学式などではこれでもかと派手な格好をして遊ぶ人もいます。

人族はお祭り好きです。

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