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金と銀の物語~妖精に生まれ変わったけど、使命は「愛されて楽しく生きること」!?~  作者: 堂島 都
第四章

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年跨ぎの準備

 

 シャオマオの学校入学準備はどんどん進められていく。

 必要なことを買いそろえるのももちろんだが、シャオマオが学校へ通うことになるので、四六時中一緒にいたユエが「シャオマオ離れ」できるように訓練するのも必要だった。


 訓練とは何ぞ、と言われれば

「視界に入らないところまでシャオマオと離れていても平常心でいられること」

 それに尽きる。


 シャオマオ不足に陥って、高濃度魔素をまき散らしてしまってはいけないのだ。

 はっきり言って、慣らし保育だ。


 最初は1時間。次は2時間。徐々に時間を伸ばして、今のところ低学年の子供が通う半日は離れていても平常心でいられるようになった。


 最初は大変だった。

 不安定になってしまうのはもちろん。シャオマオと会った時の甘えがひどかった。

 シャオマオがどこへ行くにもずっとついて回り、ずっとどこかを触っていようとした。

 それを見守っていた全員が、「逆だろ!」とツッコミを入れたいところだったが、シャオマオがまじめに丁寧に対応していたので静かに見守った。


 お風呂も最初はシャオマオが入るときには目隠しをしたユエがずっと湯船のそばにいて、シャオマオに話しかけられてにこにこしていたし、食事はいつもと逆で食べさせてもらいたがっていた。

 シャオマオは丁寧に丁寧にユエに接して、まるで母親のようであった。


 シャオマオも、小さくなった時にはわがままを言いまわっていた。

 やんやん暴れたり、みんなの愛を試すようなことをした。

 怖い思いをした時には、ユエにかじりついてよだれまみれにもした。

 だからシャオマオは落ち着いてもう一度成長をやり直すことができた。

 それをユエにもやってあげたいのだ。


「シャオマオ様は本当にユエより大人ですね」

 今日はサリフェルシェリと外出して、おしゃれなカフェで休憩しているところだ。

 ハーブティーを飲みながら、目の前のシャオマオにため息交じりに語り掛けた。


「う?シャオマオも一緒よ?ユエはシャオマオで、シャオマオはユエなの。シャオマオが大人だったら、ユエも大人」

 にこっと微笑む姿にサリフェルシェリはほんのり顔を赤らめた。

 目の前の、アイスクリームを浮かべたジュースを美味しそうに飲んでいる幼女がとても子供には見えないような笑顔を浮かべたのだ。

 透き通るような、星に溶け込んでいきそうな美しい笑顔だった。



 ユエは何とか年跨ぎの1か月前に平常心を取り戻した。

 今は半日離れていても、ひどく不安になることもなくなったようだった。

「シャオマオは出かけても、ちゃんと自分のもとに帰ってくる」というのが身に染みたようだ。


 シャオマオのプライベートも尊重することができるようになってきたが、一緒に寝るのだけはお互いやめられない。

 シャオマオは寝る準備ができると、続き扉をノックしてユエの部屋にって一緒に寝る。

 お互いの溶けた体温が混ざって同じになるような感覚が好きなのだ。


「シャオマオ、今日は何をしたの?」

「今日はね、学校の建物の近くまで行ってみたの。行くのにどれくらいかかるのか調べたのよ」

「それで?」

「シャオマオ歩くの遅いから、思ってるより早く家を出ないといけないかも」

「そっか。今日はサリフェルシェリとお出かけだったね。何を食べた?」

「あいしゅくりいむの入った黒いジュースよ!」

「気に入った?」

「美味しかった~。ユエにも食べさせてあげたかった。こんど一緒に行こうね」

「そうだね。食べさせてくれる?」

「いいよ!」

 こうしてあっていない短時間のことでも二人は共有して、気持ちを言い合い、なんでも自分のことのようにして喜び合う。

 学校に通うようになれば、今までと違った生活になることを二人とも感じている。

 でも、変わらずに二人は片割れなのだ。

 そこは変わることがない。


「おやすみ、シャオマオ」

「おやすみ、ユエ」

 二人はお互いの瞳に散る星屑のきらめきを見てから挨拶をして目を閉じる。

 これが最近のお休みの合図だ。

 相手の瞳に映る自分の姿と、相手の持っている自分とは違う星屑の色が重なると、自分が完全になったような気持ちになる。

 満足して眠ることができるのだ。



 それから1か月。とうとう年跨ぎの前日だ。

 年跨ぎを経て、新しい年に改まると、大体5日程度はみんなお休みをとる。

 みんな一つ年を取る、というよりは、年を一つもらうような感覚だ。

 素敵な1年のプレゼントをもらう。

 そのお祝いで5日間はお休み。

 商店もお休みになるので、たくさんの保存のきく食料を買い込んで、年跨ぎの間までに熟成させながら食べる伝統的なアルコールの染みたしっとりケーキを用意した。

 少しずつ熟成するのを待ちながら端から食べるものらしい。


 たくさん食べる獣人とエルフの集まりであるので、保存庫とキッチンには驚くほどの食材が積みあがっている。

 今回はダァーディーだけではなくて、みんなが飲むのでお酒も準備されている。

 猫族が飲むのはお米のお酒。エルフはワインを好んで飲んでいる。

 その2種類だけでも樽が積みあがっている。

 人とはこんなにお酒を飲めるものなのだろうか。

 シャオマオは目を丸くした。


「さあ。年跨ぎに食べる伝統料理を作るよ」

「あい!」

「これは各家庭で違っていてね、猫族は年跨ぎから5日間は作った保存食を食べるんだ」

「あい!」

「じゃあ、シャオマオ隊員!レンレンとランランの手伝いで、野菜を洗ってきてください!」

「あい!」

 びしっと敬礼を決めて、大きな籠を抱えたレンレンとランランについて井戸に行く。


 季節はシャオマオが知る「お正月」の寒さとは全く違っていて、少し肌寒いくらいだ。

 中央は南寄りなので、雪が降ったり凍えるほどの寒さにはならないらしい。

 レンレンが手押しポンプでガンガン水をくみ上げると、籠の野菜たちに水がざぶざぶかかる。

「きゃあ!すごい!」

「さあ、シャオマオ、野菜を洗ってねーねに渡して。皮をむいていくよ」

「あい!」

 ランランは小さな椅子に腰かけて、シャオマオが洗った芋の皮をササっと剥いて空の籠にどんどん入れていく。

 シャオマオも負けないようにどんどん野菜を洗う。

「シャオマオ、辛くなったらいつでも休んでいいからね」

「ありがとにーに!できるところまで頑張るね」

 途中からはレンレンも皮むきに加わって、なんとか腕が上がらなくなる前にはすべて洗って皮むきまで終わってほっとする。


「よし、兄さんの所に持っていこう」

「あい!」

 ちょんと手を添えるだけになっているが、みんなで籠を持ってライのところまで行くと、ライは巨大な寸胴鍋にお水を入れるところだった。

「お!ありがとう。ちょうどいいタイミングだ」

 野菜をゴロゴロ入れて、水を入れたら火にかけてしばし待つ。

 その間にも、ライは手際よくどんどんいろんな料理を作ってしまう。


「ライは何でもできるのね」

「そうだよ、シャオマオ。兄さんは何でも作れるんだからおねだりするといいよ」

「兄さんは甘いものを作るのが好きだから、ちょっと年跨ぎの料理は張り合いがないのよ」

 伝統料理なので、調理が簡単で、彩も少ないらしい。

 イメージはもうお節料理になってしまっている。

 シャオマオは以前の人生でもお節料理を食べたことがない。

 テレビや漫画で見るお節料理は家族団らんの象徴だ。

 どんなものでもみんなで食べるのが楽しみだ。


「年跨ぎの前にはみんな新しい服を着て、自分が一つ年をもらうことをきれいな自分で迎えるんだよ」

「だから、温泉に行こうね」

「お~んせ~ん!」

 ぴょんぴょん飛んで喜びを表現するシャオマオを、屋敷の掃除を終えたユエがキャッチする。

「シャオマオ。掃除も終わった。ライの料理がすんだらみんなで温泉に行こう」


「中央の温泉は水着を着て男女一緒に入れるところもあるんだよ」

「う?そうなの?シャオマオ水着あったかな?」

「大丈夫。温泉の入り口でも売ってるから可愛いのを買おうね」

「やった~」

 中央にある温泉は王様の温泉好きのお陰で巨大なテーマパークのようになっているらしい。


「できたよ~。あとは食べる前に手を加えたら大丈夫。みんなで温泉に行って汗を流そう!」

 ライが頭の三角巾を外しながら、鍋に蓋をした。


「一度行ってみたかったよ、中央の温泉」

「お肌にいいお湯があるらしいのよ」

 レンレンとランランがはしゃいでいるのを見て、シャオマオは首をかしげる。

「う?ねーねツルツル」

「ふ。乙女はどこまでも美を求めるものよ・・・」

「しょーなんだ」

「鉄の三節混振り回す乙女・・・」

「兄さん、なにか?」

「なにも・・・」

「ふん!」

 乙女は難しい年ごろなのだろう。


中央の温泉は裸で入れる男女別れたところもありますし、水着で入れる温水プール的なところもあります。

療養目的で滞在する人もいるので、温泉の効能が高いところは人気があります。

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