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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
第二章 中世

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第33話 小田原城包囲


氏康が死去した。すでに当主の座は氏政に譲っていたとはいえ、北条家に与えた衝撃は大きかった。


それでも、氏綱の時ほどの混乱はない。葬儀も終わり、北条は平穏を取り戻した。

武田と再び同盟を結び、上杉と小競り合いをしながら、徐々に勢力図を広げていく。

北条が最大の版図を手に入れていたのはこの時代である。240万石もの大領地を有する大大名だった。


大きな国の代名詞、加賀百万石ですら足元にも及ばない。


彼の元で、関東は平和な時代を迎える。

ずっと争っていた里見義堯さとみよしたかとも和睦した。

下総しもうさの火種をずっと抱えているよりは、和睦した方が良いという判断だった。


氏政は関東を立派に治める。だが、時代は移り変わっていた。


信長が本能寺で倒れ、羽柴秀吉が台頭する。


あれよあれよという間に九州までも飲み込んで、立派な天下人となっていった。


そして、関東の覇者である北条を目障りに思った。



北条家の方針は固まらなかった。抗戦か恭順か。恭順の場合は国替えをしなくてはならないらしい。


豊臣秀吉は北条征伐の軍を起こす。

その数20万。天下人の動かす軍勢は圧倒的だった。


北条も5万の軍勢を集めて対抗するが、多勢に無勢である。



小田原城は包囲された。



4人と明は、まだ城内にいた。


「どうする?」


将門は尋ねた。


「これで北条は終わりだそうだ。愛着はあるが仕方ない。」


「ご主人様の元に向かいましょう。」


「まあ、秀吉さんは焼き討ちもしてへんし。恨みもないわあ。」


話はまとまった。


小太郎は氏政に挨拶をしにいく。


「ここを離れるだと。どうやって。いや、愚問か。」


「お許しいただけますか。」


「早雲様より代々言付かっておる。お主らがいつかはいなくなるだろうと。そして、自由にさせよと。」


「北条に仕えた日々は、充実しておりました。ありがとうございました。」


小太郎は退出した。早雲以来の家臣の離脱。


北条の凋落ちょうらくは誰が見ても決定的だった。



屋敷に戻った小太郎。


引き払うことを使用人達に伝え、食料は自由にして良いと言う。


彼らを慕っていた使用人達は涙を流して引き止める。

だが、もうここでやることはないとわかっている彼らを止めることはできなかった。



小太郎は技能「雲乗り」を発動した。

将門と銀孤を掴んで乗せる。


「私が母さまを運びますね。」


成長した明がそう主張した。


彼女はすでに技能「雲乗り」を物にしている。


体も成長して、もう少女と呼んで差し支えない。

外見は幼い。

普通の人間と比べれば成長は遅いのだ。

とはいえ、もう36歳になる。

そろそろ一人前だった。


他の四人はだいたい800歳を越えている。大和杉はだいたい3500歳だ。36歳なんて誤差である。



小田原城を十重二十重とえはたえに取り囲む秀吉軍。


彼らは、その日、奇怪なものを目にすることとなる。


小田原城内から、何かが飛んできた。


それは、よく見えなかったがどうにも人のように見えた。


20万の将兵の目は釘付けになる。


それを知らぬげに。彼らは北へ飛び去った。


北といえば、越後である。


謙信公の残された魂が、今、落城を前に満足して戻っていったのだ。


人々は噂しあった。



小太郎達が北に飛んだのは大和杉との関係を感づかせないためだった。


十分距離を開けたのを確認し、東に進路をとる。


間も無く、大きな木が視界に入ってきた。東国の象徴、大和杉である。

何千年の歳月を経てなお若々しく茂るその姿は神にも例えられている。


ようやく主人の元に帰ることができる。四人の表情は晴れやかになった。

明も嬉しそうだ。彼女もおじいちゃんとお姉さんが大好きである。

一緒に暮らせるとあっては顔が緩むのも仕方ない。




彼らは、大和杉につく少し前に地面に降りた。すぐ近くに秀吉の大軍がいて住民は気が立っている。慎重になったのも無理からぬことだろう。


だが、それが災いした。

100騎ほどの兵が通りかかった。

見慣れぬ旗指物に4人は悟られぬように警戒する。

明だけは無邪気に興味を隠そうともしていない。



それに先頭の男が気づいた。

三日月型の飾り物が特徴的な兜で、目に眼帯をした若い男である。


「お前、すごい才能があるな。」


「⋯⋯? わたし?」


明は首を傾げた。


「ああ。もしよかったら、俺と一緒にこないか。臣下として召し抱えたい。俸給も出そう。」


「政宗様、それは⋯⋯。」


「なんだ? 俺の人を見る目がないとでも?」


「いえ、そうは言っていませんが、今は早く小田原に馳せ参じるべき時では。」


「この才能を前にして放っておけるか。」


「いい加減にしてください。」


「固いこと言うなよ小十郎。」



「ありがたい話なのですが、遠慮させていただいてもいいでしょうか。」


愛が恐る恐るという様子を装って、そう言った。

あくまで今の彼らは普通の旅行者である。村人だ。無用な騒ぎを起こすわけにはいかなかった。


「は? 出世したくないのか?」


「そんなこと、恐れ多くて、とてもとても。」


「お前はどうなんだ。ちっこいの。」


「わたしは⋯⋯。」


明は悩むそぶりを見せる。彼女には、彼の誘いがそんなに悪いものだとは思えなかった。



「久しぶり。明、元気にしてた?」


別の声が投げかけられた。天上の音楽のような耳に心地よい声だ。

そこにいる人々は皆、彼女を見る。


その類稀なる美貌を見つめてしまう。

輝夜が生まれてから800年余り。

それでも彼女の美しさは少しも衰えていかなかった。


「輝夜おねえさま!」


明は政宗を忘れて、輝夜の胸に飛び込んだ。


「信じられねえ。こんな才能を持つ人間がいるのかよ。」


政宗は茫然自失している。


小太郎達は目配せしあった。今のうちにと言うことらしい。


「失礼しましたー。」


そんな言葉を残して風のように去って行く6人。


伊達政宗とその一行は、何もできずに見送った。


「政宗さま。早く小田原に向かいましょう。秀吉殿が怒っておりましょう。」


「気が重い。あの子を部下にする方が重要だと思うんだが、ダメか?」


「ダメに決まっているでしょうが!」


政宗の乳母うば兄弟である片倉小十郎は苦労性だった。


文句を言う政宗をなんとかなだめすかしてここまで連れてきたのだ。


今回も粘り強く説得する。


なんとか、小田原に向かうことを承服させた。



しかし人の才を見分ける力を持つ政宗さまにこう言わせるとは。

人を残して探させてみようと思う小十郎だった。


まあ、当然ながら徒労に終わるのだが。


戦国編終了です。

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