冬の章ーその参ー
松岡さんは語り始めた。
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こうして眠ったままの娘ですが……娘の名は『雪』……その昔…………私が人生で一度だけ愛した人の子なのです。
私はこの港町に生まれ………そして育てられました…………ですが私の家では昔からのしきたりで港町の巫女として……私は祭事などでその役目を果たしていました。
お役目というのは祭事の際……………一週間という期間…………………とある祠でひたすら神に祈り過ごすというもの…………食事などは定期的に用意され………そして大半を祈りに捧げるだけのものですが…………それを昔からこの港町では行なわれ…………これが海の神様を鎮めてきたこの港町での神事だったのです。
私はそれを十代中頃まで続けました。
それは私がとある時………一人の男性と出会い……恋に落ち…………やがて私は『雪』を授かることになったのでした。
身篭ってしまった私は巫女としては神事に入る事ができなくなっていました。
そして代替わりという事で………私の娘が成長するまでという間………一人の女性が代わりをつとめてくださることになったのです。
それが私の親友だった女性……『あやめ』でした。
街の中では私のこの行動に反論する者も沢山おりました……ですがそんな話から私を守るように『あやめ』はその意を示してくれたのです。
私はそんな彼女に本当に感謝をし……無事………娘の雪を産むことができたのです。
そして『あやめ』も娘の誕生を心から喜んでくれました。
ですが………まだ娘が巫女としてつとめられるようになるにはまだ十年程は必要でしたが………彼女はそれでも自分が納得してやってきた事なのだからと言ってくれましたが………彼女の人生を考えると………私はそんな訳にはいきませんでした。
あやめを巫女としてのままにして自分だけが幸せになる……それが本当に心苦しく………私はそんな彼女の代わりをつとめてくれる人を探していました。
せめて……私の娘が成長するまで。
そんな時でした……………。
私の元に凶報が届きました。
それは親友のあやめの突然の死でした。
私は耳を疑い…………まだ歩くこともままならない雪を抱き………あやめの安置されているという病院へとむかいました。
病院のうす暗い霊安室…………そこに眠るように安置されていたのは私の大親友である、あやめの遺体でした。
『あやめ……………あやめーーーーーーー!!!』
私は泣きじゃくり続けました……私がお役目を押し付けたような形になりこうなってしまった事に絶望し…………私は。
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『そして娘が成長するまでは祭事を行なう事をひかえる事になりました………またあの様な事が起こらないようにとの話でした……ですがやはり港町です………何かが起これば巫女不在で神事をやはりしなければという話はおさまらず……結果……雪がその年齢になった時………また巫女は復活する事になったのです。』
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