秋の章ーその漆ー
大樹くんは車から震えながら降りてくると告げた。
『あやかちゃんが熊に……………………』
そんな言葉を残しへたりこんだ大樹くん。
それはあまりの恐怖だったのだろう……彼の下半身の衣服が濡れていたのが見えた。
『それで何があったの!?』
すると恐怖で震える大樹君は指を来た方向へ向ける。
『ここに来る途中………僕達は目の前にうずくまっていた小熊を見つけたんだ……………。』
そして大樹君は語ったんだ。
◇
◇
◇
『大樹君!!車を止めて。』
『えっ!?あやかちゃん?』
僕はドキドキしながらなにかあるのかと………車を止めたんだ。
するとあやかちゃんは続けた。
『あそこになにか見えない!?』
『えっ!?あやかちゃん?』
僕は目を凝らし見るとそこには小さく丸くなっていた黒い犬に見えたんだ。
『ふぅ………なんだ犬かな?』
『わんちゃん!?み、見てみよっか!?』
『えっ!?あやかちゃん!?』
僕が制止する前にドアを開けて車を降りて向かうあやかちゃん。
そしてあやかちゃんは犬を抱き上げる。
『よしよおし!!あれ?この子…………………もしかして……………クマちゃん!?』
確かに車のライトに照らされていたのは犬の様に見えて小熊だったのだ。
僕も車から降りそれを見ていた。
するとクンクンとあやかちゃんの匂いを嗅ぎ始める小熊。
僕は安堵のため息をつく。
だけど次の瞬間。
嫌な記憶を思い出していた。
『小熊がいるって事は………………もしかしてどこかに母親の熊もいるって事!?』
僕はあやかちゃんに叫ぼうとしたその時。
ガサガサっと周囲の茂みが動き音がしたその時。
グアアアーーーーーーーーーーーーーーッと熊の恐ろしい声が聞こえ、その瞬間あやかちゃんは小熊を落とし震えていた。
『あやかちゃんこっち!!』
『だい………きくん………………』
のっしのっしとあやかちゃんに近づいて行く巨大な熊。
小熊をとられたかと思って寄って来たのかもしれない熊。
僕は震え動けなかった。
そして徐に車のアクセルを踏む僕!!
ブオンブオンっと周囲に機械音を立てる。
次の瞬間。
バアアアーーーーーーーーーッとあやかちゃんと小熊を抱えるようにして大熊は薮の中へと消えていったんだ。
◇
◇
◇
『ど、どうしよう…………ぼ…僕…………………………』
あやかちゃんが消えた事で焦り泣きじゃくる大樹君。
俺達はその恐怖に只々震えるのだった。
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