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異種族趣味の管理者【アドミニストレータ】  作者: てんとん
3章 正式サービス:魔法界
27/33

*24話 攻略:獣王の森 最終戦①

挿絵を入れました。

作者が描いているのですが、なかなかうまくはいかないですね・・・。

獣王です。

「ほう、それではここにいるのは皆異種族なのか?」


ガリュードさん含め、皆で円陣えんじんを組んで座る。

ガォとガゥは、久しぶりに父親に会えてうれしいのか両(どな)りを陣取ってくっついた。

二人の父親は森の"王"がガォとガゥに危害を加えないか、この連絡橋で見張っていたらしい。

自分が魔法使いの町で暮らしている間に誕生した個体なのだとか。


「はい、まず俺の種族は"人間"です。特に何が得意ということはありませんが、たいてい何でもできます。」

「聞いたことの無い種族だな。魔法使い以外で俺のような知性のあるものはおらんと思っていたが・・・。」


「ナタリーは魔法使いなのです。たぶん説明は要らないですよね。」

「ああ。そうだな。だが、俺らを恐れない魔法使いだ。」

「ぜんぜん怖くないのです。むしろガォとガゥは可愛いです。ガリュードはただの喋る狼なので特に感想はありません。」

「グルル・・・。」


ガリュードさんが笑い声(唸り声)を上げた。

次いで、ミカのほうに目線を向ける。


「ワタシはミカと言うんだ。種族は・・・う~ん。」


ミカが思案顔を浮かべている。

分かるぞ・・・、"種族は神様です"とか何言ってんだってなるもんな。

しばしの思考の後、ミカは苦笑して返答。


「・・・自分でもよく解っていないんだよ。でも一応かなりの上位種だよ!」

「そうか。・・・先ほどの恐ろしい魔力は貴様だったらしい。」

「ふふ、さっきは楽しかったなぁ~・・・。」


拳を握り、恍惚こうこつとした表情を浮かべている。

うげ・・・完全に戦闘狂だ。

掠れば死ぬ戦闘で楽しいとかやばい。

そういえばアーティが、死んでも一応大丈夫とか言ってたな。

"一応"が恐ろしすぎる。

死なないようにしなければ・・・。


「グル・・・末恐ろしい娘だ。お前は?」


そういって、ガリュードさんがアーティの方を見た。


「私はアーティヒュールといいます!マスターの所有物です!」

「ちょ、おま」


どんな自己紹介だ!?


「ほう・・・?そういえばガォとガゥが貴様のことを"ご主人"と呼んでいたな・・・?」

「ひぇっ」

「がぉ、ご主人!」

「がぅ、ご主人!」


ガォとガゥが父親から離れて俺に突撃してきた!

支えきれずに体勢が崩れ仰向けになる俺。

二人の尻尾がブンブンと振られ、ぐりぐりと腹に頭をこすりつけてくる。

恐る恐るガリュードさんのほうを見る。

尻尾が地面に付き、悲しそうな表情だ。

あ、なんかちょっと怒られて落ち込む犬っぽい・・・。


「あ、あのですね・・・、ご飯に誘ったら懐かれたというかなんというか。」

「いや・・・良いのだ、嬉しいことだからな。・・・ただ、サミュが言っていた親離れとはこういうものかと思ってな・・・悲しいものだ。」

「なんか、すんません・・・。」

「・・・貴様、本当に何者なのだ?」

「はい?」

「これだけの種族が貴様の周りに集まり、皆慕っている。はっきり言おう、これは異常だ。」


う~ん、異常だと言われてもな。


「貴様が持っているのはなんだ?他種を圧倒できる膂力りょりょくか?知力か?それとも何か特別な能力か?」


「別に、何もないですよ?・・・ただ、皆同じような境遇なので、一緒に固まってたら楽しいかなって。そんだけです。俺がしたのは、一緒に居ないかって言っただけ。」


そう、ただそれだけ。

寂しいなら、寂しい同士集まればいいんだ。


「・・・なるほどな。」

「本当に、タクムくんは異種族たらしだよねぇ。」

「一番言われてうれしい言葉なのですよ・・・それは。」

「私も、大勢いるほうが楽しいと感じるようです。」

「がぉ、寂しくない。」

「がぅ、わいわいやる。」


ガリュードさんは一声、心底愉快(ゆかい)そうにグルルと唸った。



ザリッっと、土を踏みしめる。

草は、自身が立ち入れる場所ではないと諦めるように、その一帯から消え失せていた。

気色が明らかに変わった。

ミニマップ上には"黒い"マーカー。

"王"だ。


--さあ、ここが終着点。最大、最後のボスバトル。


"獣王の森(ガルドフォレスタ)":最深部。

その地の名称は"王のやしろ"。

霊樹れいじゅと呼ばれる青白く淡い光を放つ大樹が幻想的にそびえ立つ。

無数にあるその樹の中心、切り取られたぎょくの為の台座。

祀られる王の名は "獣王":ズヴェーリャル。

森でただ一個体の"冠名ネームド"。


--ガァァァァアアアア!!!!


佇む銀狼ぎんろうは、よくぞ来たと言わんばかりに、けたたましく咆哮ほうこうを轟かせた。



「ぐぅっ・・・!?」


獣王じゅうおうえた瞬間、音圧が俺らをし潰す!

魔喰咆哮グラトマナ・ハウリング』 銀狼の固有技(ユニークスキル)

その咆哮は、周囲の魔力を喰らう。

それは草木だけでなく、生物も例外ではない。

ガリッっと、MPバーが減少を見せた。

・・・不味いな。


「ガォ、前進だ!!持久戦じゃ勝てない!!」


相手はMP吸収技を持っている!

則ち、長引けば長引くほど戦技と魔法の使用回数が減るということだ。


「がぉ、了解!!」

「がぅ、サポート任せる!」


ガォとガゥが疾駆を始めた。

同時に、ナタリーに命令を出す!


「ナタリー、何でもいい、獣王に向かって魔法を打て!!咆哮を止めないと勝ち目がない!!」

「分かったのです!!」


ナタリーが詠唱を始める。


--!?

ミニマップ上に変化があった。

赤いマーカーが警告灯のごとく点灯する。

潜伏ハイド』の魔法を解いて、出てきたのは白い体毛の狼。

固有名:"迅飢餓狼(ガル・エリート)" 飢餓狼(ガル)の上位種。

くっそ、新手か!!


「ミカ、俺と対処だ!!」

「りょうかい!!」



「がぅ、ガォ、隠して!!」


先行したガォの盾に隠れて、ガゥが魔力を槍に溜めた。

穂先に魔力を走らせ、刺突の威力を引き上げる。

同時に持ち手にも魔力を宿らせ、突き出しの速度向上を図った。


ギギギ・・・っと槍を引きしぼり、戦技を放つ!


「がぅ、『一閃突ピアシング・ストライク』!!」


--一閃。

ゴウッ!!と音を立てて穂先が走る。

空気を裂き、突き出した赤線せきせんが銀色を標的に据えた。



彼我の距離は3m。

ここからなら、届く。

俺はアイテムボックスを開き、とある"素材"を取り出した。

片手に剣、もう片一方に"それ"を持つ。

持った剣が鈍色に閃光をあげた。


「『転斬アラウスラッシュ』」


剣を空中で振り、回転させる!

この技は"剣士ソードマン"の戦技であり、斬撃は飛ばせない。

一見、無意味に見える戦技の空打ち。


--思い起こすはさきの戦い。

ミカと女王の死闘。

自転の勢いを利用して、手に持った"矢毒女王蜂トキシンホネット・クイーンの毒針"を白狼はくろうに向け、投擲した!



--槍と針が、狼に迫る。


挿絵(By みてみん)

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