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過日の亡霊――転生冒険者と死亡した転生元王女。ただし転生冒険者は現在副業中  作者: 剣崎月
第三章・正義の亡霊

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【09】

 第三室に顔を出し、室内にある小さな階段を上るとオルタナの執務室がある。ドアをノックして、許可が出る前に開いて入るとオルタナの机には資料が広げられていた。


『ヴェデリオン・パールス殺人事件の資料みつかったのか』

『ああ。思いのほか、ちゃんと調査してて、ちょっと驚いている』


 調査してて驚くとか。わたしも驚いたけど。


『ただ、驚くほど杜撰だ』

『ちゃんと調査してるけど、杜撰って』

『調査資料があるだけで、驚いたんだよ』

『それはそう』

『だが、この調査資料、ふわふわしてんだよな』

『ふわふわ』


 ふわふわした調査資料ってなんだよ。


『ただこの資料を開いたとき、俺の未来視が、これを書いた奴の子孫が侯爵殺害事件関わってくる(・・)と訴えている』

『天与が』


 オルタナは未来視というギフトを持っていている。それは唐突に関連した未来が見えるというものだ。

 「唐突」ってところが黙示系の特徴ともいえる――とても重要な情報だけど、ギフトを持っている本人は「この時点」では重要だとは全くわからない……が、ギフトなのは分かるので、重要だとは理解できる。

 でもこれが思いのほか驚くのもんなんだよ。


 だってこっちは、何も知らない訳だから。


 わたしは占いの他に過去視という黙示系ギフトも持っていて、これも未来視と同じく、唐突に来るんだ。

 過去だから未来よりも驚かないだろ? いや、むしろ関連している未来を教えられるよりも驚く。

 意味不明な過去を唐突に差し込まれるんだから。これが人間の場合はさらに最低というかなんというか、感情まで込みで脳内に挿入されるんだ。


 今回のオルタナの未来視は、基本は感情を伴わない黙示。

 過去は感情と共にあるので、過去視の場合は感情がセットでついてくることが多いな。


『ああ』

『お前の天与がそう言うなら、そうなんだろう』

『調査するしかない……と言いたいが、現時点では、まだ事件に関わっていない』

『事件に関わっていたら、未来じゃないから降りてこないから、そうなるよな……第二の殺人事件とかあるってこと?』


 未来視なので、当然未来しか視えない。要するにまだ起こっていないこと(・・)しか視えない。

 そしてこの未来が視えてしまうと、どれほど未来を変えようとしても、変えることができない。


 頑張って未来を変えようとしても、変えることができない、超強力なギフトと言える。


『未来視は第二の事件を示唆してはいない。だから侯爵殺害事件に関わることだ』

『死んでるのに?』


 ここから起こる第二の事件ってなんだよ。


『ああ』

『使い勝手悪いな』

『戦闘では使えるからな。単純にこういう事件に使いづらいだけであって』


 迷宮でトラップ避けながら魔物と戦いながら「右左上下どちらへ進むべきか!」とか言うときに、導いてくれるらしい。

 オルタナの万能型危機回避能力の一つともいえる。「一つ」なの? ああ、オルタナはたくさん持っているんだよ、このタイプのギフト。

 そしてたしかに今回は使う場面間違ってるっていうか、でも発動したということは、大事なことなんだろう。


 これはもう、使いこなしていないオルタナが悪い!

 おまえは過去視使いこなしているのかって? 使いこなしているわけない! いきなり降ってくるんだから。わたしは他人に適当で、自分に甘いんですよ。


『それはそう。でもまあ、まだ何も起こっていないのなら、調査もなにもできないな。長官に天与(ギフト)の未来視が訴えてます! とか言っても通らないし』


 ギフトが調査機関で証拠として採用されない最大の理由は、証明できないこと。

 オルタナの未来視を、法廷で再現するのは不可能だからな。だってそのときには、すでに事件が起こっているのだから。

 証言したところで、ただの後出しじゃんけん――過去視は使えるのでは? 未来視と同じく形がないものなんで。根本的に黙示系は、形がないタイプでなー。正しいことは分かるんだが、証明が困難というかほぼ無理。



 天は真理を与えているゆえ、証明の必要はないってとこかな。問題は真理を受け取れるのが一人しかいないってこと。



『通るわけねえな。それにしてもふわふわしてんな、この調査資料。一家(クラン)の調査報告でこれ出したら、ぶん殴られるぞ』

『暴力はんたーい。でもお前の未来視って、生死がかかるとまでは言わないけど、重要な時に降りてくるもんだよな?』


 世界の方向を決める一撃みたいなもんだからなあ。


『そうだ……こんなに分かり辛いのは始めてだ』


 脳内で会話を終えたあと、


「退庁時間になったんで、帰ります」

「なんか、分かったか?」

「侯爵殺害犯の、侵入経路が分かったぞ」

「優秀だな。俺が見込んだ通りだ」

「いつから、見込まれてたんだ」

「昔から見込んでたぞ」

「そりゃ、知らんかった。映像についてだけど」


 さらっと口頭で説明をし――


「じゃあ、あとは任せました。失礼します」


 帰ろうとしたんだが、


「少し付き合えよ」


 そう言われるよね。

 分かってた。分かってたよ。だから言わないで帰るという選択肢……は、さすがになかった。

 これでも、調査官だからね!


「ええー。残業かよ」

「残業とは言わず、徹夜でいいんだぞ」

「嫌だけど、多分徹夜になるんだろうな」

「ところで、なんで俺のところに来た?」

「とりあえず、誰が犯人か分からないんで、多分犯人じゃないし、恐らく犯人と繋がりはないだろうオルタナに伝えにきた」

「それは長官も該当するのでは」

「長官は該当するけど、オルタナという緩衝地帯を作らないと。録画カメラの記録映像を、説明しなきゃならないからな”長官に”」


 ”長官に”を強調したら、


「それは……俺が説明するのか」


 オルタナをして怯みやがった! 


「頑張れぇぇぇぇ! 頑張れぇぇぇぇ!」

「うるせえぞ、コスパ」

「コスパはやめろ。また(・・)バベルの塔で、すり潰されたいか。竜喰い」

「誰だよ、か弱いエリニュスちゃんしたいって言ってたの」

「バベルの塔での出来事は、ここでは分からないからな」


 そんなことを言いながら、映像解析室へと引き返し、


「眠い」


 画像についての説明などをし「移動時間に寝ればいいだろ」と、徹夜を強要された。

 これだから、旅の風情が分かんない上司は困る。

 目的地に到着するまでの風景だって楽しみたいんだよ……寝るけどね。

 なんとか解放されたので、一度家に帰って前もって用意しておいた旅行鞄を手に、すぐに駅へと向かう。


「さて、近場で骨休めしてくるか……ああ、今日は日差しが目に痛い」


 いつもは嬉しい日差しだけど、徹夜明けの目には眩しすぎる。駅のホームに入って、行き先を選ぶ。

 目的地は決めてないの? ホテルは取ってないの?

 わたしの旅は、いつでも行き当たりばったり! 心赴くままにいくぜ! 勤め人だから、休暇は考慮するけれど。


 よし、行き先は決めた! 駅員に金を渡して切符を受け取り――


「大変だ! ユセリラルダ侯爵閣下の殺害の容疑者が捕まった!」

「えっ?」


 駅のホームに、突然人が飛び込んできて、大声で叫んだ。

 急展開過ぎないか?

 どこから犯人浮かんだ? 昨日の時点で、容疑者未満は大勢いたけど(元婚約者とか、国王とかそういうやつら)決定的な証拠につながりそうなものは、何一つなかったはず。


「犯人は誰だ?」

「機関の長官だって」

「機関の長官? エルトハルト長官のことか?」

「そう。ラッカンネール・エルトハルト長官が、逮捕された」


 は? うちの長官が犯人? 逮捕? 今逮捕って言った? 長官を逮捕?! ラッカンネール・エルトハルトが!…………休暇は取り消しだな。

 キャンセル料があったら、経費で払うわ。っとに、誰だよ、長官を犯人って言ったやつ! なんで逮捕されてるの? エルトハルト長官! そしてなんで逮捕してるの? クアルバーグ参事官!


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