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過日の亡霊――転生冒険者と死亡した転生元王女。ただし転生冒険者は現在副業中  作者: 剣崎月
第三章・正義の亡霊

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【05】

 事件現場は関係者以外、立ち入り禁止の措置がとられたまま――封印しているのはわたしだけれど。


「エリニュス主幹」

「少し調べたいことがある」

「エリニュス主幹も調査に?」

「そう……といえば、そうなのか? 侯爵関連についての調査ではある」

「分かりました。どうぞ、お通り下さい」


 通過許可を出す職員――自分で張っている結界なので、許可なくても通れるけど、そこは決まりってことで。


「どちらへ?」

「爆破された出入り口のほうを、まずは確認したいんだ」


 案内付きで現場へ連れていかれる。基本的に、現場にいる職員は一人にならない。一人だと、細工などができてしまうので、それを阻止するためだ。

 わたしにも、案内の二人が同行している。


 本気出したら、瞬殺できるし、意識を乗っ取って勝手に動けるけど。まあ、しないけど。


「なぜここが爆破されたんだ?」

「ここが犯人の侵入口だと思われます」

「なぜ?」

「この建物は、入り口が三箇所あって、この入り口だけは、監視カメラが設置されていないそうです」

「へえ……なんで?」

「ここには、メヤスバコというものが置かれていたそうです」

「メヤスバコ……目安箱か……目安箱なあ」


 これはもう、転生者確定だ侯爵。


「メヤスバコというのは、匿名庶民から再調査を受けるものでした」


 説明聞かなくてもわかるけど、ここは説明きいておかないとな。


「ものでした? 過去形?」

「はい。メヤスバコというものは、調べて欲しい事件が起こった年、被害者などを匿名で記入するものだったのですが、庶民は文字が書けないので、メヤスバコはあまり使われなかったそうです」


 識字率問題が立ちはだかったのか。

 ちなみに紙とかペンとかは、この場に用意されていたらしい、爆発でふっとんだが。そして識字率かあ。

 識字率の問題は頭にあっても、前世の記憶のせいで、簡単に意見を集めることができると錯覚してしまったのだろう。

 純正この世界の貴族なら、庶民が文章で訴えるなんて、考えもしなかった筈だ。


「侯爵のことだ、代案を出したんだな?」

「はい。メヤスバコはそのままにしましたが、主軸は聞き取り方式にしたそうです」

「匿名性が失われるんじゃないのか?」

「仕切られた個室に入って、話を聞くそうです」

「対面じゃなくてか」

「そうです」


 仕切られた個室も吹き飛んでいたので、設計図を見せてもらったが、キリスト教の告解室みたいな形式だった。これなら、匿名性は守られるかもな。


「再捜査希望について聞き取りしていた人は?」

「爆破で亡くなりました」

「そっか。あれ? たしかここで二人の死亡があったと思うんだが、もしかして、事件を持ち込んだ人も爆破に巻き込まれた?」


 匿名で再調査頼んでいる最中に殺された? それはまた……運が悪いというか、なんというか。


「もう一人のほうは、全く身元が分かっていません。失踪届なども出ていませんし」

「そうか」

「もしかしたら、施しを受け取りにきた人だった可能性もあるそうで」

「施し?」

「はい。ここに監視カメラがついていないのは、事件の再調査依頼を匿名で受ける他に、生活に必要な物資を置いていたそうで、自由に持ち帰っていいことになっていたそうです」

「盗難を考えて、監視カメラを付けたほうが良かったんじゃないか?」

「そのような意見はあったそうですが、盗む人も結局は必要としている人だから……ということで」

「へえ」

「そうはいってもここは、数々の罪を曝いたユセリラルダ侯爵の邸ですので、犯罪者は近づかなかったそうです」


 後ろ暗いところがある人にとっては、近づかないほうがいい場所だから、そうもなるか。


「犯人は食料や衣料品などが置かれていた棚に、ここを爆破するための魔石を置いたようです。この箱は匿名の寄付も受け付けていました」

「危険な品を忍ばされたりしたら、どうするんだ?」


 善意の品ばかりじゃない。事実、ここに魔石を仕込まれて爆発してしまったのだから。


「それはここで冤罪事件について聞き取りをしていた人が、確認していたそうです」

「確認していたのか……確認か……」


 質の悪い魔石を寄付……あまりに質が良い魔石だと、盗まれる可能性もあるしなあ。でも……確認しなかったから、この連鎖爆破が起こったわけだ。どうして確認しなかったんだ? 仕事なんだから、すぐに確認するべき……顔見知りか。


「どうしました? エリニュス主幹」

「ここで冤罪事件について聞き取りをしていたのは、過去に犯罪調査に関わったことがある人物か?」

「経歴を見る分には、そういった経験はありません。なんでも侯爵の意向で、専門家の視点をいれず、聞いたことをそのまま受け入れられる人を配置したそうです」

「たしかに、下手に機関の元調査員なんか配置したら、自分が調査した事件が”冤罪です誤認です”って素人に持ち込まれたら、苛つくか」

「あるかも知れませんね」


 素人目線なのはいい。下手に専門知識を持っている奴じゃないほうが、受け入れやすい。でもなあ……


「となると、その聞き取りをしていた人は、見逃したり、危険に気付かなかった可能性があるのか」


 それを専門にやっている側からすると、随分と危険なことをしているな……と思うことがある。ユセリラルダ侯爵自身、殺害されてしまったからな……まだ事件の再調査や冤罪を晴らしたのが原因とは判明していないが、おそらく”そう”だろう。


 だって今更「可哀想な異母妹王女ちゃんを守る、格好良い男五人(現在は落ちぶれ)」が仕返しにくるとも思えない。


 いや、あいつ等も充分犯人の素質あるのか。ピンクブロンド可愛い異母妹を、悪辣な姉から守る騎士クンたち……いまは、見る影もないが。


「前歴は冒険者なので、それなりに危険の察知能力は高そうなんですが」


 冒険者の危機察知能力といっても千差万別なんだよなあ。万能型の危機察知能力……いないとは言わないけど。

 それこそオルタナがそうだけど、あれくらい危険察知能力が高かったら、こんな死に方はしないけど。


「冒険者人生を無事に終えて、ここに再就職できたんだから、たしかに察知能力は高いだろうが、身元が判明している被害者についての書類は?」

「不明の二名以外は、完成しています」

「帰ったら、読んどく。次は侯爵の殺害現場に、室内を通って行きたい」

「分かりました」


 裏門を抜けて、建物内に入り殺害現場となった部屋へと向かう。途中、廊下を見上げると監視カメラ。

 特にどれも壊れてはいなさそう。

 そして殺害現場に足を踏み入れる――室内は荒れてはいるが、部屋が消し飛んだというほどではない。殺すことに重きを置いていたからだろう、床の破損が激しい。窓ガラスはもともと壊れやすいので、吹き飛んでいるが、室内の壁はほぼ無事だ。


「破壊規模は、さほどではないな」

「そうですね」

「床を削り取った感じがするな」

「何人かエリニュス主幹と同じことを言ってました。魔法爆発の専門の人からみると、そう見えるんですか」


 床は所々、階下が見える程。


「いや専門じゃないけど。それにしても、床の抉られが酷いな」

「魔石をばらまいて、連鎖爆発を起こさせたようです。その際、魔石の質が一定ではないので、貫通した部分もあれば、抉られただけの部分もあると」

「なるほど」


 室内に霊魂の気配がない――消されたか。

 霊魂を消す魔法は難しくないし、魔法を使える人間なら誰でも取得できるし、なによりこれは、魔力紋が残らないからなあ。

 殺害には魔力紋は残るけど、霊魂を消滅させる魔法に、紋は残らない――対象が存在しないから、当然なんだけどさ。


 念入りに証拠を消してるな。


 犯罪者の教科書ともいうべき、ユセリラルダ侯爵の本を読んで実行に移したやつは何人かいるが、実際に行ってみるといろいろと大変で、大体痕跡を残す。

 侯爵の本に間違いはないんだけど、読んだだけじゃ対応できないことが、無数にあるんだよ。

 でも、そういった失敗がない。かなり慣れた犯行だ。実際に何度も犯行を行ってきたか、それとも犯行をよく見てきたか――それとも両方か。


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