表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過日の亡霊――転生冒険者と死亡した転生元王女。ただし転生冒険者は現在副業中  作者: 剣崎月
第三章・正義の亡霊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/20

【04】

 侯爵が調査しようとしていた過去の事故。


 覚書の情報だけでは調査のしようもないので、捜査資料を探して、本当にそんな事故があったのかどうかを確認し、それ以外の下調べもしてから調査に向かうとしよう。


「十年前の事故死の資料だが」


 資料室の職員に、場所と名前と死因を告げる。

 機関所属の調査官は、資料室の資料全てを閲覧できる権限を持っているが、資料に自由に触れることはできない。

 棚に収まっている調査資料に触れることができるのは、資料室の職員だけ。職員たちは何時、閲覧者がきたのかを記載し、資料のリストを見て、棚の資料を探し出し手渡す。

 

 資料室の職員であっても内容を確認できない資料は多数ある――魔法で封がなされているのだ。


「そうだ、この二件の捜査資料をも頼む……そうだ、この三件のうちのどれか一件でも、わたしの前に誰が閲覧したか調べて欲しい」


 今回わたしが調査を任された事故は、資料室の職員でも内容を閲覧することができるもの。


「少々お待ちください」


 メモを書き写した職員が去り、わたしは入り口側の閲覧ブースで待機する。


**********


『ウィルトゥースの死神の奴、元気そうだな』

『あれ元気じゃないこと、ないだろう』

『それはそうだけど。で、捜索依頼なんだが』

『なんだよ。またバベルの塔の下位層で、全員死亡か?』

『その通り。あの死んだ発明女の商会が、自らの隊商と同行する商品(パック旅行)を売り出した結果、冒険者がバビロンに来やすくなったから、流入が激しいんだわ』

『流入して即死んでりゃ世話ねえなあ。分かった、それで今度は何人パーティーだ』

『八人。そうそう、俺の分体だが――』


**********


「お待たせしました、エリニュス主幹」

「さほど待ってないよ」


 分身を使って、故郷の迷宮を探索していたから、本当に体感的にまったく待ってない。


「こちらが三件の事故資料になります」

「やはり誰でも閲覧可能な事故だな」

「そしてエリニュス主幹の前に、この三件を閲覧したのはロテルシト男爵です」

「ロテルシト男爵?」


 どこかで聞いたことがあるな。ここに来られるってことは、罪は犯していないはず。ということは……


「二代前の長官です」


 侯爵は二代前の長官に、捜査資料の確認を依頼したのか。


「三件とも?」

「はい。三件の他に七件の事故についても、閲覧していました」

「七件?」

「はい」

「そっか。ところでロテルシト男爵は、よく事故資料室に来るのか?」

「いらっしゃいます。もちろん権限の範囲内の資料しか、お渡ししていません」

「責めているわけでも、疑っているわけでもないから。ロテルシト男爵が閲覧した七件についても、日時と、閲覧した資料のリストを作ってくれ。そして、それらの資料全てを追加で閲覧したい」

「分かりました。少々お待ちください、エリニュス主幹」


 歩いてゆく職員の後姿を見ながら――


 二代前の長官ロテルシト男爵か。

 わたしの人生にかすりもしないから、全くのノーマークだったが、元長官でカラブリア貴族なら、侯爵に協力していても不自然じゃない……けど……。


 経歴調査を資料室に依頼してみるか?

 でも、元上級調査官権限で、資料室に顔を出せるんだよな。

 頻繁に来るらしいから、疑っているのを、資料室の職員から感じ取られたりしたら厄介だな。

 顔には出さなくても、感じ取れるくらいの能力はあるだろ。


 誰か聞けるヤツいないか。


 まず長官は駄目だろ。あの人は他の国の貴族だし。申請を出せば出頭命令は出してくれるだろうが…………長官は止めておこう。

 参事官はこの国の貴族だから、知ってそうだけど、侯爵殺人事件の調査で余裕なさそうだし。


 あの二人が一緒なのが、捜査の進捗を妨げているような……


 オルタナはわたしと同じくよそ者だが、わたしより機関在籍は長い。けれど、機関に入った時は先代長官だから、その前の長官のことなんか知らないだろ……多分。

 となると、オルタナを採用した前の長官に聞くのが、一番よさそうだな。


 わたしは前の長官にも会ったことはないけど、事件の責任を取って引退して以来……どこにいるんだろ?



 待てよ、捜査線上に上がっている怪しいやつって、もしかしてロテルシト男爵か?



 先入観を持ちたくないから”怪しいやつ”に関しては聞かなかったけど、ユセリラルダ侯爵と関わり合いがある貴族……情報提供を求めていたんだから、当人は犯罪をおかしてはいない……のか?

 あーなんとなくだが、この一件をオルタナ、そしてわたしにふられた理由が分かった。カラブリア貴族が絡んでるからだ。


 参事官はカラブリア貴族だし、部下も全員同じくカラブリア貴族だから、調査途中で貴族のつながりで、情報が漏れる可能性を考慮して。

 長官はカラブリア貴族に対して厳しいけど、長官の下にもカラブリア貴族は数名配置されている。だから同じことが起こる可能性が捨てきれない。


 そこで、貴族とのつながりがない、わたしが選ばれたわけだ。


「エリニュス主幹。資料になります」

「ありがとう」


 山と積まれた資料……になれば良かったんだが、目の前には「週刊少年〇〇」ってタイトルの雑誌くらいの厚みしかない紙の束が置かれた。

 十件の事故資料全部でこれかー。

 資料を読むのは好きじゃないし、書くのも嫌いだが、過去の事件を漁るとなると、充実した資料が欲しいと思ってしまうのは……我が儘なんだろうな。


「わたしが目を通したあと、これを複製して第四室の秘書官に届けて欲しい」

「分かりました」


 複製って簡単に言ったけど、全部書き写しだからな。ほんと、苦労をかける。

 でも十件でその程度の厚みなら……事件によっては、広辞苑並の厚さの資料が五千冊分とかあるから、今回は頼みやすい。

 侯爵もコピー機には手をつけなかった。

 コピー機は手を付けてほしかったなあ。未だ活版印刷だからなあ。


 わたしは資料に目を通し、調査を命じられた感電死事故の要点を抜き出して、資料室をあとにして現場に向かった。


 該当の番地までやってきた――被害者は雨の日、帰宅路の街灯に不具合があり感電し倒れた。

 雨が強かったため、人通りはなく、街灯の電気は途切れることなく雨を通して被害者に供給され続け、被害者は黒こげになった……とさ。


 それが十年前の出来事。その頃と変わらず、街灯はそこにあった。同じ街灯かどうかは知らないが。


「事故後、すぐに引っ越したよ」


 事故現場から程近い、被害者の自宅に向かうと、すでに家族は引っ越していて、別の人が住んでいた。

 現在の家主――家主というか、借家なので店子というべきか? とにかく現在の家主は詳しいことは知らないが、昔から住んでいる人を紹介してもらい、話が聞けることに。


「運が悪かったんだろうね」

「そうですね」

「今になって、機関の人が話を聞きに来るとは思わなかった」


 さっきの家主もそうだけど、話を聞きに行ったらかなり驚いていたところから考えて、侯爵は調査はしていなかったみたいだな。

 それとも、最初から引っ越した家族の元か、もしくは街灯の整備不良を問われた人物のところに向かったか。


 侯爵の邸にこの一件の調査資料がないから、調査はしていないような気もするけど、資料が殺害で吹っ飛んだとも考えられるしなあ。


 それはそうと機関の調査資料を読んでも、当時の話を聞いても事故死で間違いなさそうなんだけど、侯爵が調べているのだから、なにかしらあるのか?

 可能性としては街灯の整備不良を問われた人か、その関係者が調査依頼をしたのか。


 整備不良の濡れ衣を着せられた……他にあるとしたら、この被害者と思われている人物が別人。死んだと思われた人間は、どこかで別人として暮らしているくらいか。


 おや、考えてみたら結構あるな。


 整備不良の責任を負わされた人の身元調査をするとして……こう……情報が足りないよなあ。

 死因を占え? 占って死因が出たとしても、機関はそれを証明しなくてはいけないから、下手に死因とか知らないほうがいいんだよ。あと長官にばれたら、調査官辞めさせられてしまう。

 使うとばれるの? 使ったらばれる誓約を、長官に一方的に刻まれているので、使ったら即座に長官にばれるよ。

 誓約をかいくぐれない訳ではないけど、そんな危ない橋は渡りたくない。このお仕事楽しいから! 副業最高! 規則に則って、楽しませてもらうんだ!


「よし!」


 侯爵の邸に行ってみよう!


 侯爵の私室は爆破されてしまったが、寝室に三件のリストが残っていたように、他の部屋になにかヒントになるものが、残っているかもしれない。

 なにより侯爵の事件に携われと言われたのだから、現場をもう一度確認しておこう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ