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第97階層 熱狂の後に

 オレは何度か手を開いたり閉じたりを繰り返す。


 なんだったんだあの感触。

 メイクィースさんの手を握りしめた時、一瞬、体が軽くなった気がした。

 そしてそれ以降、体の動きが、思った感じとブレる様な気がする。


 まるで体を新調されたかのような……まさかな……


「………………」


 そんなオレをジッとオキクさんが見つめている。

 何やっているんだろうな、とでも思っているのかな?

 今日は飲んできたのか、顔が少しだけ赤い気がする。


 未だに、どんちゃん騒ぎは収まらない。


 オキクさんも、今日はぼんやりとしている。

 皇帝陛下ですら、平民と肩を組んで声を張り上げて歌っていたほどだ。

 出会った頃の青白くてヒョロガリだったのが、今じゃガタイの良い、パワフル爺さんになっている。


 オキクさんも最近、忙しくて来れなかったそうだが、彼女まで虜にしていたのかな、あの人工衛星プロジェクト。


 やがてウトウトと船を漕ぎ出すオキクさん。

 耐えられなくなったのかオレのベッドで横になる。

 オレも人(女王陛下)の事は言えないかもしれない。


 オレはそっと、その上に布団をかぶせる。


 その時、グィッとオレの手が取られる。

 そしてそのまま布団の中に引き込まれる。

 ちょっ、力つよっ!


 もしもし、オキクさん、ちょっと離してくれませんかね?


 オキクさんはオレを抱きしめるようにして眠っている。

 どうしたものか、人に見られたら一発アウトなんだが。

 ファリスさんに助けを求めようと部屋を見渡してみたが、なぜか居ない。


 そういう、気の利かせ方は止めてほしい。


 腕を解こうとしてもビクともしない。

 むしろ、解こうとすればするほどキツくなっている気がする。

 イカン、このままでは落とされそうだ。


 あ……段々、意識が遠くなって…………


 その翌朝の事、何やら体がスースーする。

 目を覚ましてみると、なぜか素っ裸。

 そして隣には――――――同じく素っ裸のオキクさんが、膝をすり合わせてモジモジしている。


 さらに、シーツには赤いシミが。


 えっ!?

 昨日、あの後、何があったの!?

 イヤイヤイヤ、記憶にございませんよ?


 なんで!? どうして!? どうなるの!?


「あ~、やっちゃいましたね、イース様」


 ファリスさんが入って来るなりそんな事を言ってくる。

 そう言って、テキパキとオキクさんの服装を整える。

 オレは、その様をぼうぜん自失の状況で見守る。


「ご心配なさらずとも、この事は、わたくしファリスの胸の内に秘めておきますので、大丈夫ですよ」


 ホントに?

 ホントに大丈夫?

 イヤイヤ、大丈夫な訳ないだろ!?


 ヤっちまった…………


 オレはがっくりとうなだれる。


「いい加減、服を着てくれませんかね?」


 シーツの洗濯の邪魔ですよ。などと言ってくる。


 シーツの洗濯どころじゃないだろ?

 いやでも、さっさと証拠隠滅が必要か?

 混乱してうまく考えがまとまらない。


 とりあえず服を着て、オキクさんの前に立つ。


 彼女は俯いて、真っ赤な顔をしている。

 ずっと無表情だった、その表情も崩れている。

 これは、もう駄目な奴だ。


 あっちはあっちでねんごろだし、腹をくくるしかない。


 ソッと肩に手を置いて、


「責任は取る」


 ぐらいしか言えない。

 それでは女王陛下に頭を下げてくるか。

 ケジメは必要だろうと、アクレイシス女王に話してみたのだが。


「ああ……うん、なんだ、それぐらい気にしなくても良いよ」


 などとおっしゃる。


 マジかこの陛下。

 オレの事など気にも留めないと言うのか?

 いやまあ、男同士なんだ、そりゃそうか。


 きっと前国王様が言っていたのも、オレを焚き付けようとしていただけだろう。


 仮に元から女性だっとしても、オレが誰とねんごろになろうが興味はない、という訳だ。

 だからこそ、TS薬などと言う、嘘をついたのかもしれない。

 まあ、女王陛下にはクレスフィズ皇子が居る。


 二人の子供なら、王国と帝国のハイブリッドだ。


 これ以上、望むべくもない血筋。

 最終的に、王国が帝国に飲み込まれるかもしれないが、それもまた時代の流れだろう。

 まあ、最近の帝国貴族の動きを見るに、悪い様にはなるまい。


 それにオレはどうやら、帝国本国の人にも嫌われている様だし。


 オレとアクレイシス女王の子が国を継ぐより、クレスフィズ皇子との子が国を継いだ方が何かとうまくいきそうだ。

 今が引き際なのかも知れない。

 そう思っていたオレの元に一通の手紙が届く。


 そこには帝国の旧皇都の地図と共に、二人きりで話がしたい、と言う旨の文章が綴られている。


 差出人はクレスフィズ皇子。

 向こうも決着をつけに来たか……

 ずっとオレの事を見張っていたのだ、オキクさんとの事情も知っていよう。


 オレも、クレスフィズ皇子がアクレイシス女王の事をどう思っているか知っておきたい。


 前回は曖昧な笑顔で誤魔化されたしな。

 今回は向こうから振ってきたのだ、誤魔化しはしまい。

 問題は……皇子がどんな要求をしてくるか、か。

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