第65階層
「おい、イース」
「どうしました、ボルヴェイン兄上?」
「ようやく準備が整ったぞ」
何の?
「女王直轄の桜花騎士団の結成だ」
そういや忘れていた、女王陛下の親衛隊を作るって言う事業を。
兄上にぶん投げたままだったな。
「募ってみたら女性でも騎士になりたい、と言うのが結構おってな」
そこから選抜試験をして、これまでダンジョンのトレーニングルームで訓練を積んでいたらしい。
バランスの良い食事と、24時間戦えますか? と言うトレーニングを行い、ようやく兄上の納得のいく形に出来たそうだ。
随分と無茶したなあ……人間は24時間戦える様には出来ていませんよ?
「いや、あの栄養ドリンクとかいう奴か? あれのおかげで眠気も吹っ飛び、疲れもあっという間にとれる」
ドーピングじゃん!
大丈夫、その騎士団?
皆、目が逝っちゃたりしていない?
これからはホワイトな環境を目指そうと思って、女王を連れて騎士団の元へ赴く。
「女王陛下に、敬礼!!」
オレ達がトレーニングルームに入って行くと、兄上の奥方であり、この騎士団の団長を務めるシオンさんが号令を掛ける。
そこには8名ほどの女性が並んでいた。
凛々しい顔つきで、体にはしっかりとした筋肉が付いている。
まだ儀礼服は用意出来ていない様で、皆、トレーニングウェアだ。
「最初はこの数倍は居たんだがな……」
そりゃ、そんなスパルタ訓練すりゃ、皆、辞めて行きますよ。
まあ、逆に言えば、その厳しい訓練を勝ち抜いた選りすぐりの精鋭だと言えない事もない。
例え小麦争奪戦が始まっても、立ち向かってくれる、そんな女性達が必要なのだ。
「…………女性騎士団と言えば、もっと花があるモノだと思っていた」
かなりガチな女性達を見て、女王様は大変困惑されているがな。
「うん、何はともあれ、私の初めての騎士団だ! 君達にこの命を預ける事になる、よろしく頼む!」
そう言って、一人ずつ握手していく。
そんな気さくな女王様に、皆様は感動の面持ちでそれに答える。
人心を掌握するのだけは上手いんだよなコイツ。
「よし! 騎士団結成のお祝いにパレードを行おう」
また何か言い出したぞ。
いや、悪い案件でもないのか?
女王様の精鋭騎士団、ココにあり、と見せしめるには良いかもしれない。
後は、実力のほども公開出来れば言う事はない。
「兄上」
「なんだ?」
「彼女達の実力なら、どのレベルのモンスターまでヤレますか?」
「また悪い顔をしているなお前」
と、言う事でパレードです!
旧王都の王宮から中央道を通って、街の正面玄関がある大門までの行進。
事前にビラを配って、桜花騎士団の皆様にはハーキャットさんの日替わり衣装を参考にした先鋭的な鎧と衣服を身に纏って貰いました。
ほんと、前世のゲームっていったい幾つの衣装があるんだ?
一説には、たった一つのゲームの女性用衣装だけでも千を超える物があったとかなんとか。
漫画まで合わせたら、億は超えるデザインがあるのではないだろうか。
女性らしい、ちょっと露出多めでなおかつ機能的。
先鋭的な見た目には評価が分かれるかと思ったが、市民の歓声は鳴りやまない。
世界初の女性騎士団と言っても良い、初めての試みに、国民の熱狂は収まらない。
ついでなんで、この騎士団の誕生を祝って、超大国グランサードから第一皇子がお祝いに掛け付けた。
と、クレスフィズ皇子様の紹介も一緒に行う。
忘れてたよ、大国から皇子様を招いているのに、市民に紹介するのを。
さらに、リニアモンスターカーを利用して、各国からも王やそれに連なる人達もやって来る。
そっちは、呼んでないんだがなあ……
これ、唯の一騎士団のパレードだよ?
いや分かるよ?
女王就任の時と同じように、お土産が目当てなんでしょ?
分かるんだけどね……毎回、パレードの時に押しかけられたらどうしよう。
日帰りで帰れるから、時間さえ合えばお手軽にここまで来られる。
なんだったら、ダンジョンホテルに泊まって帰っても良い。
さすがにお客様にまで無料で提供する訳にいかないが、一定の料金を頂ければ、食べ放題付きでお泊りも可能にしている。
食べ放題の理由は、料金を払って提供するシステムが整っていないからだが。
とある国の貴族など、もうずっとダンジョンで暮らしている人も居る。
まあ、おかげで学園都市計画は順調に進んでいる。
各国から、是非とも我が子をここで勉強させたいと言ってくる。
子供と一緒に自分達も移住したい、などと言う人達も居る。
なので留学期間に限り、家族の移住も認める予定にしている。
偶にハーキャットさんが教室にやって来て、妙な図式のスタンプを出しては、生徒たちの度肝を抜いている。
言葉は喋れなくとも、絵やイラストで表現できる分、立派な教師の一員である。
ちなみに生徒達からは学園長と呼ばれている。
いつの間になっていたの学園長?
学園の体制については、オレも女王陛下も口を出さず、教師陣に任して置いてはずだが。
ええんかお前ら、それで?
さて、いよいよパレードも終点に近づく。
女王陛下とその騎士団が街の城門に近づいたその時だった。
突如、轟音と共に門が吹き飛ぶ!
さらに付近の壁が崩れ始める。
「さて、騎士団のお手並み拝見といきましょうか」




