表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/121

第59階層

 じゃあ私は誰なんだって話ですが……ただの一平民でございます。


 皇子が亡くなった事がバレたら首が飛んでしまう、と慌てた皇子の担当医師が家に駆け込んで来て、容姿が似ている私を偽の皇子様にしたて上げた。

 いや、マジで勘弁してください。

 そもそも私、女性なんですが? 女性らしさは少ないかもですがね……


 どうしてそれでうまく行くと思っているんだ、あの医師様。


 父さんと母さんも呑気げに笑っていたし。

 唯の平民の私が、皇子様のフリなんて出来る訳ないじゃな~い?

 ホント、意味が分からないですよ。


 ああ、胃が痛いわ~。


「本当にカーラード王国から、わずか一日で我が国まで帰って来たと言うのか?」

「正確には半日ですね……とんでもない速度、さらに百人以上が同時に、かつ、それだけの重量がありながら、一切の揺れがありませんでした」

「宿泊施設も我が国の技術を圧倒しています」


 手をかざすだけで自動で開く扉。

 しかも手の形を識別して、本人しか開かなくなるセキュリティもある。

 風呂もトイレも各部屋に設置され、風呂などは一日中、温水が循環している始末。


 さらには、まるでダンジョンの中に居るかのように、天井の壁から光が降り注ぎ、部屋の中ではオンオフすら可能。


「移・食・住、全てにおいてカーラード王国が勝っているとでも言うのか……」


 はえ~、そんな国なんてあるんだ。

 世界で一番進んだ街はここだと思っていたんだけど、世界は広いよね~。

 まっ、私の知ったこっちゃ無いけど。


「カーラード王国で提供された麦はどうであった?」

「小麦と言う品種を加工した物を頂きましたが……かつてない程の美味しさで、少量でも満腹感を感じ、主食を肉から変えても反発は決して起きないと思われます」

「出発前に、自生している麦を食べましたが、えぐみが凄くて食べられた物ではありませんでした」


「しかし提供された物は、ほんのりとした甘味まで感じられるほど美味でございました。さらに、米と言う品種に至っては、麦とはまったく違った物であると言わざるを得ません」


 それほどか……と呟いて、暫く黙り込む皇帝陛下。

 これがぐうの音も出ないって奴かな、と眺めていたら、陛下と目があってしまう。

 サッと目を反らすも後の祭り。


「クレスフィズはカーラード王国をどう思う」


 と、そんな事を言われる。


「え……えっと、そんな凄い国なら一度は行ってみたいな、とは思います」

「ならば、最初に言った通り、お前をかの国へ派遣する」


 えっ!? そんな事を言ってたの? 聞いてなかったよ!?

 あっ、でもそっちの方が良いかも。

 宮殿で居るよりはバレる可能性が減るよ、やったね!


「麦や米は、いずれその技術を盗むことは出来ましょう、ですが……」

「リニアモンスターカーとやらか……」

「はい、カーラード王国がどこまで技術を公開して頂けるか……」


 書簡であのような条件を出したのは不味かったかも知れんな。と陛下が呟く。


「調査に第一皇子を派遣するのです、それなりの誠意は向こうも感じるでありましょう」


 書簡で結構、無茶な事を書いて要求したらしい。


 それについては、未だ返答もないそうな。

 まあ、怒っているんでしょうね。

 えっ、私、そんな所へ行くの? マジぇ~?


「皇子と共に何人か向かわせる、それで状況を確認してみよう」

「ハッ、人選は?」

「宰相よ、口の堅い人物を平民から幾人が呼び出せるか?」


「当たってみましょう」


 そう言って宰相が部屋から出ていく。

 続いて兵士達も部屋から出ていき、皇帝陛下と二人きりになってしまう。

 しまった! 一緒に出て行くんだったよ~!!


「お前は、これまでの暮らしで幸せだったか?」


 突然、皇帝陛下がそんな事を聞いてくる。

 そんな事を聞かれましても……皇子様の暮らしなんて知りませんよ?

 私自身は今絶賛、不幸でございますが!


 回答に困って首を傾げていると、


「いや、良い、先ほどの事は忘れてくれ」


 そう言って、部屋から退室するように言われる。

 よし、今回もやりきったゼ!

 帰ったら医師様におやつを強請ってやるからな!


 と、部屋から出て通路を歩いていると一人の女性と鉢合わせする。


 そして、その女性が私を見て一言。


「ふむ……どうして男装しているのかね?」


 えっ、バレた!?

 なんで!?

 私、自慢じゃないが胸は薄い。


 なので、女だとバレるような恰好はしていない。


「おや、つついたら駄目な事だったかな。こりゃ困ったね」


 困ったのはこっちですよ!


「いや、私もね、長い間、男装していたから分かるんだよ」

「そうなんですか?」


 あっ、私、そうなんですか、なんて言って認めちゃっている。

 おっほ、だから無理だって言ったんですよ。

 助けて医師様! オラ道づれにすんぞ!! あっ、されたのは私の方だった。


「心配しなくても誰にも言わないよ。こう見えても口は堅いんだ」

「本当ですか?」


 本当だよ、と言って人差し指を口に当ててウィンクする。

 うっは、こんな美人さんがそんな仕草をすると絵になるわ~。

 良し! まだ大丈夫、まだいける。


 うん、


「アクレイシス女王、お一人で歩き回られては危険ですよ。我がカーラード王国とグランサード帝国は、まだ、どのような関係になるか分からないのですから」


 廊下の向こうから走って来た女性が、目の前のお方に向かってそう言う。


 ……アクレイシス……女王?

 そして……カーラード王国?

 それって、さっき話に上っていた私が向かう国じゃない?


 あっ、これはやっぱ駄目かもしんない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ