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第53階層

「ヤっていませんよ、そんな事」


 護衛のファリスさんを問い詰めた所、そんな事実は無いと言われた。

 なんだよウドゥ、驚かせやがって。

 思い詰めて、イース君の首を絞める所まで想像したよ。


「えっ、お前マジで呼ばれた事がねえんか?」

「……まあ、その胸ではねえ」

「なんだとコラ」


 なお護衛さん達は何やら喧嘩を始めている。


「しかしそれじゃあ、計画の練り直しだな」

「計画とは?」


 私は護衛の3人に、別人としてイース君に接触しようとしている事を話す。


「面白そうな計画ですね」

「偶には、こちらからイース様を驚かせるのアリですね」

「お前ら二人も良い性格しているな」


 ファリス嬢は変装のお手伝いならお任せください。と胸を叩く。

 なんでもその筋のプロな腕前があると言う。

 他の二人も陰ながらサポートしてくれるそうだ。


「しかし、護衛として雇うにはちょっと無理がありますね」

「別に護衛じゃなくても構わないでしょ。そもそも、イース様もメイドの一人や二人、付けるべきだと思いますよ」

「確かに、なんでも自分でやっているが、普通の貴族は違うよな」


 そういう訳なんで、私をメイド役としてイース君に紹介してくれると言う。

 なるほどメイドか……メイドと主の淫らな関係……うむ、良いかもしれない。

 メイドの真似事なんか出来るのか? とウドゥが聞いて来るが、大丈夫だ問題ない、メイドのやっている事ならいつも見ている。


 たぶん何とかなる。


「何とかなるかねえ……まあ、その先の事は俺の知ったこっちゃねえが」


 後の問題は……キャラ決めですわねっ、とガー様が言う。

 キャラ決めって何?

 なるほどキャラ決めですか、とファリス嬢も答える。


 何やら私の分からない世界で二人がお話しされている。


「変装だけじゃダメなのかね?」

「ダメに決まっていますわ! あなた様の様に、アクが強くてバカっぽい言動ではすぐにバレてしまいますわっ」


 アレ? 結構、酷い事を言われていない、私。


「そうですわね……下手に口を開くと地が出るでしょうし…………ここは一つ、無口な鉄面皮キャラとかどうでしょうか?」


 どうでしょうか、と言われても、その、無口な鉄面皮キャラって何?


「あら、良い案だと思います」

「無口って言うのは分かるが、なんだその、鉄面皮ってのは?」


 ウドゥが私の代わりに聞いてくれる。


「鉄面皮と言うのはですね、一切の表情を顔に出さない事ですわ。どんなに可笑しくても笑ってはダメですし、どんなに苦しくても表情を歪めてはなりません」


 それ、私がやるの?

 さて、それでは特訓が必要ですわねっ、と言って、手をワキワキさせながらにじり寄って来る。

 逃げようと後ろに下がろうとした所をファリス嬢にガシッと抑えられる。


 ふむ……これは、ちょっと、ガー様に相談したのは早まったかもしれない。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「はぁ……メイド、ですか?」


 ある日、護衛のお三方からメイドを雇いませんか、と話が上がって来た。

 なんでそんな事をオレに聞くのか?

 面接なら家宰に話を振れば良いのに。


「違いますよ、イース様の専属メイドです」

「専属……?」

「はい、身の回りの世話から下の、コホン、兎に角、イース様も色々と忙しい身の上、他の人が出来る仕事であれば、任せていくべきです」


 ふむ……秘書の様なものか?


「はい、それがですね、ちょっと曰く付きな人物でして……イース様の手元に置いておくのが良いと思われるお方を見つけまして」


 なんでも、記憶喪失で彷徨っている所を確保したそうだ。

 ここいらでは見かけない、奇妙な服装をして、言葉もあまり流暢に喋れない。

 平民にしては礼儀正しいので、きっとどこか遠くの貴族か王族が逃げ落ちてきたのではないかと。


 そこまで言うのならと、会ってみる事にした。


「…………初めまして旦那様、私、オキクと申します」


 そこには和装メイドの美女が45度のキッチリとした礼をして立っていたのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 えっ、何この分厚いマニュアル?


 ガー様から厳しい特訓を受け、さらに宿題として、分厚い本を幾つか預けられた。

 そこに書かれていたのは、日本という国の言葉や習慣、それにまつわる様々な事柄が書かれていた。

 なんでもイース君の一言一句を書き漏らさず、それを本にして置いてあるそうだ。


 その中から必要そうな物事を書き出して、持って来てくれたという。


 えっ、何それ? 怖くね? ストーカーでもそこまでしないよ?

 とにかく、彼の興味を惹くにはこれしかないと、日本から来た記憶喪失の美少女、という設定で押し進めようとなった。

 そこで日本語やら何やらを覚える事になったのだが、これがまた大変。


 ここまでする必要が本当にあったのだろうか?


 確かに効果はバツグンであった。

 黒目、黒髪にして、和装とかいう謎の服装を身に着けて彼の前に立つと、劇的な反応があった。

 あんなに驚いた顔を見たのは初めてだ。


 ふふっ、それだけでもこの格好をしただけの事はある。


 さすが、ガー様だ、さすガー様だな。

 ただなあ……私、無口キャラだよね?

 だったら、こんな分厚い日本語マニュアル要る?


 イース君が日本語を呟いたら反応しろって言われても……いや、弱気はいかん! やるなら徹底的に、だよね!

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