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第52階層 恋するアクレイシス・カーラード

 ガーネット・ゼロワン。


 とある商会の会長をしている少女の名前。

 見た目はまだまだ幼く見えるが、その行動力は侮れない。

 初めて会った日も、遠くと通信が出来る魔道具を、豪邸が建つほどの価値がある魔道具を、キランと空の彼方に放り投げるぐらいだ。


 唖然としている私の手を取ったかと思うと、すぐに街を出て、国で最も影響の大きい貴族であるパスティーニ公爵とアポを取り付け、公爵が真っ青になるほどの交渉を行い味方につける。


 さらに、女性と言う本来デメリットであるはずの点を、少しの演説でメリットに変えてしまう。

 気が付けば、私は王冠を被っていた。と言う摩訶不思議現象。

 しかも、その間、僅か数日という、とんでもない行動力。


 そんな彼女とは、とても気が合いそうだ。


 そう思い、目下の悩み事を相談しに来た。

 彼女は私のその嘆願を聞くと手を止めて、かけていた眼鏡を外す。

 そして、訝しそうな表情で問いかけてくる。


「もしかして、まだ昔から女性であったと打ち明けていませんの?」

「実はそうなんだよ!」

「胸張って言う事じゃありませんことよ……まったく、私からその立場を奪っておきながら、そんなんでは困りますわ」


 そう言って立ち上がるガー様。


「まあ、一度言いそびれると、ズルズルといってしまう気持ちも分かりますわ」

「分かってくれるなら、ありがたい!」


 そうですね……私も恋愛経験は……あまりありませんし……

 そう言ってブツブツと呟きながら部屋の中をウロウロする。


「ここは一つ、フィクサーに頼ってみましょうか」

「おおっ!?」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「で、なんで俺の所に来るんだよ? 主従揃って、何かと言うと俺を巻き込もうとするのは一体なんなの? ほんと勘弁してくれよ……」

「だってあなた、マフィアのボスだったんでしょ? でしたら、女性なんてとっかえひっかえでしたでしょうに」


 ガー様が元マフィアのボスだったという、ウドゥにそう問いかける。

 ウドゥは頭を掻きむしりながら、そんなこたぁねえし、それが何の関係があるのかもまったく分からん、と呟く。

 そこで私は、イース君に未だに女性扱いして貰えず、夫婦の関係となった今も、まったく進捗が無いのがおかしい、と訴える。


「はあ……? なんで仮面夫婦みたいになってんのお前ら? えっ、まだ自分の事を男だと思っている? うっそだろぉ、おい」


 嘘のようなホントの話なんですよ。


 おっぱいまで見せたのに、信用しやがらないのですよ。

 まあ、その後の話が、アレだったんだけどさ。

 一体どっから出てくるのよ、その発想。


 なんでこの世の中に、TS薬? 男女の性を交換するような薬があるって言うのさ。


「まあ、アイツも変わっているからなあ……ダンジョンに住もうなんて突拍子もない事を思いつくのはアイツぐらいだろうな」


 だったら、そんな薬があるって信じていても不思議ではねえか、などと変な納得をする。


「俺はなあ、若い頃に女関係で酷い目にあってなあ……基本、寄って来る女は信用してないんだわ」

「あら、ハーレムとか夢見ていたりしませんの?」

「ハーレムなあ、アレなあ……男の夢かも知れないが、現実は酷いもんだぜ」


 マフィアの中にはそういう女を囲ってハーレム等とやっていた奴はそこそこ居る。

 だが、決して長続きはしない。

 いつかどこかで刃傷沙汰になる。


 過去を見渡してみても、ハーレムがうまくいった試しはない。


「結局のところ、四六時中、嫉妬という大罪に侵されて、正常な精神を保っていられる奴は居ねえんだよ」


 そして嫉妬という感情が生まれないのであれば、それはもうハーレムじゃねえ、唯のセフレだわ。などと言う。


「まあそう肩を落とすな、恋愛経験云々はともかく、イースの野郎に女って思われれば良いんだろ」


 だったら良い案があるぜえ、と悪い顔で答える。

 さすがはマフィアのボス、頼りになるぅ!

 ガー様がフィクサーと呼ぶだけあるわぁ。


「要は出会いが悪かったんだ、男として出会ってしまったから、男だと思い込まれているんだ」


 だったら、出会いからやり直せば良い。と、さらに悪い顔をする。


「あら、面白そうなお話ですわね」

「ふむ……それは一体……?」

「変装をして別人としてアイツに接近しろ、そして惚れさせろ」


「おお……!」


 何たる天啓!

 それって浮気にならないかしら、と隣で首を傾げているガー様、可愛い。

 大丈夫、同一人物だから浮気じゃないのよ?


「それでどうやって彼に接近するのだね?」

「アイツの傍に護衛役が居るだろ、しかも女性の。という事はだ、そういう役もあるって事だ」


 どういう役?


「男だからな、どうしても溜まる物がある、そしてそれを処理する必要もある」


 傍に護衛の女性が居るなら、ソレで済ますだろ?

 そして、その役に、おめえも混ざり込めば良いんだ。

 等と言う。


「ほうほう……えっ、ヤってんの? 正妻である私をほったらかしにして!?」

「あ……まあ、そのなんだ、とにかくほら、ファリスだったか? 彼女に詳しい事を聞いてみたらどうだ?」

「ああ、コレは……血の雨が降らなければ良いですわね」

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