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第50階層 食事会

「ええ、男性の心を射止めるのは料理から。と言われていますし!」


 キャロウェイさんが、あの、女にまったく興味を示さなかった兄上のハートを料理で射止めた、と夜会で話題になっているらしい。


 そこで我こそは、と手作りの料理を振る舞うのがブームになっているそうだ。

 なお、被害者多数の模様。

 それまで蝶よ花よとして育てられた深窓の令嬢達が作るのだ、まあ、まともなモノは……うん、悪くは言うまい。


 なお、今日提供される料理は、キャロウェイさんのオリジナル料理だとのこと。


 オレから教わったモノではない、一から自分で考えた料理を振る舞ってくれるそうだ。

 一抹の不安はある。

 だが、悪くは言うまい。


 そう決心して、ここに挑んでいる。


「さあ、どうぞどうぞ召し上がってください」


 ご飯に真っ黒なヘドロが乗って…………いや、悪くは言わないんですよ?

 食べられるなら、ですが。

 皆に配膳された料理、ご飯の上に真っ黒でドロドロとした泥の様な物がぶっ掛けられている。


 スプーンで突くと、ネバっとした何かが糸を引く。


 く、食えるのだろうか、コレ?

 そっと皆様の表情を伺う。

 誰も口に入れようとしていない。


 そりゃなあ……


「フッ、さすがのイースも腰が引けるか」


 そう言って笑いながら、それをスプーンですくって口に入れる、バーセルク兄上。


「まあ、見た目はな、しかし、ちょっとピリッとするが、癖になる味だぞ」


 ピリッとして癖になる味はダメな奴なのでは?

 シオンさんが覚悟を決めた表情でバーセルク兄上と同じようにして口に入れる。

 勇気のある女性だ。


 ほら、ボルヴェイン兄上も奥方に毒見をさせては男が廃りますぞ。


「お前なあ……」

「うっ……!」


 シオンさんが思わず唸る。


「美味しい!?」


 えっ?


 シオンさんが何やら狸に化かされた表情で料理を注視する。

 その後、恐る恐る二口目を口にする。

 目をまん丸にさせて、次々と口に入れていく。


「しゃ~ねえ、食うぞ、ほら、イースも」


 覚悟を決めて一口目を口に入れる。

 ピリッとした辛さが口の中に広がる。

 慌てて飲み込もうとしたのだが……ふむ……


 二口目を口に入れる。


 おっ、コレは……ネバっとした辛みが強いルゥがご飯を包み込み、ほんのりと甘味があるご飯の味を引き立て…………つって、コレ、カレーやないけ!!

 見た目も匂いもまったく違うが、ちょっと辛めのカレーに山芋でとろみを足した感じ。

 これに野菜やお肉を足せば、前世のカレーより美味しいかも知れない。


 食べ終わった我が家の食卓では、皆、狐につままれた様な表情だ。


「どうだ、中々のモノだったろう」


 その中で唯一人、ドヤ顔のバーセルク兄上がそう言う。


「えっと私はその、この見た目だったので……皆様にお出しするのはどうかとは思ったのですが、バーセルク様の強い要望がありましたので」


 申し訳なさそうな顔でそう言う、キャロウェイさん。

 いやでも、コレは凄いですよ!

 きっと売れる。と言いたいが、米が無い事には……いや、本場インドでは米じゃなく、パンの様なナンが中心だったし、うどんのルゥにしても良い。


 特にうどんのダシは作成に難儀していたようだから、コレを持って行けば喜ばれるんじゃないだろうか。


「えっ、コレをうどんにですか……はい! 是非試してみたいと思います!」


 シオンさんもそう言ってくれているし。


「キャロウェイ嬢、このレシピを売って頂くことは可能でしょうか?」

「えっ、レシピですか?」

「どうでしょうバーセルク兄上、これはきっと売れますよ」


「お前は本当に金にがめついな、貴族が商売をしてはならぬ事を忘れたのか?」


 まあまあ、そんなお堅い事を言わずに。

 コレを乾燥させて粉末状に出来ませんかね?

 そしてキャロルゥとして売りに出すのですよ。


 そうすれば、兄上の愛しのキャロウェイさんの名が歴史に残る事になりますよ。


 とまあ、そう言われれば兄上も悪い気はしない。

 さすがにこの見た目で貴族向けはないだろうと、商会経由で費用を抑え庶民向けに売りに出して貰ったんだが、かなりの大反響を呼んだ。

 何は無くともあの見た目。


 インパクトは上場。


 食べてみればあら不思議、見た目に反してとても美味しい。

 まるで、この世界でオレが初めて肉料理を食べた時の様な感想だな。

 はっきりと差別化される事により、あっ、コレはキャロルゥだね。って言うのがすぐに分かるのも良い。


 これまでも色んな新商品が出ては消えていったが、見た目が同じなら、味が少々変わっても気づかない。


 しかし、キャロルゥならそれが無い。

 そして一度食べれば、他には無い、はまってしまう美味しさ。

 ルゥを水に溶かして沸かすだけ、というお手軽さもある。


 さらにそこへ色んな素材を突っ込めば、あっというまにオリジナル料理が。


 そのお手軽さが受けて、貴族社会にも普及する。

 これで被害が減ってホッとした男性も少なくはない。


「私もこんな料理を作れないとダメなんでしょうか?」


 と、シオンさんも尋ねてくる。

 ボルヴェイン兄上には適当に肉焼いて食わしとけば大丈夫ですよ。

 なんでしたら、この焼き肉のタレと、しゃぶしゃぶのタレを持って帰りますか?


 とまあ、久しぶりの商売ネタで盛り上がっていたのだが。


「イース様、ファミュ将軍より王宮に来るようにお達しが来ていますよ」


 等とファリスさんから言われる。

 …………また何かやらかしたのだろうか、あの女王様。

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