第116階層
とえあえずオレは後ろの方に居た、
「絵が下手でも……ですか……」
などを呟いていた少年を引き抜く。
絵は自分では書けないので、助手が必要だ。
あと、少年とばかり思っていたら少女だったでござる。
もうほんと、止めてください、そう言うのは……
見ただけで男か女か判断が付くようなスキルとかないだろうか?
もう一度、異世界転生して神様からスキルをもらえるなら、そんなスキルを要望するかもしれない。
とりあえずハーキャットさんが主人公だった、前世のゲームのストーリーを元に組み上げる。
記憶喪失の主人公を軸に、世界を旅しながら記憶を少しずつ取り戻していくストーリーだ。
実はハーキャットさんはパラレルワールドからやって来た存在で、そのパラレルワールドは邪神によって消滅していた。
パラレルワールドでその邪神と最後まで戦っていた戦士の一人がハーキャットさんで、この世界で旅をする事により、パラレルワールドで起きた悲惨な状況を少しずつ思い出していくと言う物。
最後に全てを思い出したハーキャットさんは邪神に成り代わってしまう。
ハーキャットさんは邪神が送り出した、別の世界を支配するための種だったのだ。
ともに旅をしてきた仲間たちは、そんなハーキャットさんと戦う事を躊躇う。
そんな中、ハーキャットさんは内側からあふれる邪神の意思を押さえつけ、仲間たちに、自分を殺してくれと懇願する。
だが、仲間たちは最後の最後で剣を取り落とす。
そうハーキャットさんを討つことができなかったのだ。
あふれる邪神の意思に飲み込まれそうになった時、ハーキャットさんは一つの決断をする。
邪神の力を利用して滅んだ世界へ逆転移しようとしたのだ。
それは成功し、何もなくなった、滅んだ世界で邪神と対峙するハーキャットさん。
だが、仲間たちはそんなハーキャットさんを見捨てていなかった。
戻って来られる保証もないのに、全員がハーキャットさんを追って滅んだ世界へ転移してくる。
そんな仲間たちと手を取り合って邪神に立ち向かっていく。
一人、また一人と倒れていく仲間たちを背に、最後の一撃を邪神に加える。
全てが決着した時、そこにはハーキャットさんしか残っていなかった。
何もない真っ暗な空間で、一人ポツンと取り残されたハーキャットさん。
しかしてその時、突如、暗闇から光があふれ始める。
その光の中心から一人の女性が現れる。
その女性は言った、自分は創造神だと。
邪神に封じられて今まで眠っていたのだと。
その女神はさらに言葉を重ねる。
私を救ってくれたあなたの、思うがままの世界を作り上げてあげましょうと。
そこでハーキャットさんは答える。
そんなモノは要らないから、仲間を蘇らせて元の世界に戻してあげて欲しいと。
だが、女神は首を振る。
女神は世界を作る事はできるが、邪神の様に世界を渡る力はないのだと。
しかし、私は世界を作り出す事が出来る。
例えばあなたの仲間がいた世界を、そのままそっくり作り出す事が出来る。
例えばあなたが生まれた世界を、邪神に滅ぼされる前の世界を復活させる事も。
だけれども、作り出せる世界は一つだけ。
どちから片方か、あるいはまったく違った世界か。
ハーキャットさんの出した答えは――――――
「ううっ、そんな……ハーキャット様にそのような悲しい過去がぁ!」
滂沱の涙を流して紙に書きなぐる少女。
いや、これ空想上の話だから。
そんな過去はありませんから。
とにかくダイジェストではあるが、ざっと描いてもらった。
絵が下手だと言う割には結構なお手間である。
マンガ調のキャラクターだからか、うまく書けている。
この子は現実を正しく描くのが苦手なだけで、決して絵が下手な訳ではないのだろう。
それを持ってバーセルク兄上の元へ赴く。
そこで弟子希望者を集めて今回のマンガを見せる。
「な、なんて事だ……あのような明るい表情の裏にはこのような出来事が潜んでいたとは……」
「ハーキャット様…………可哀想……」
「ああ、これは皆さんに広めて、少しでもハーキャットさんの境遇を知ってもらわないと。こんど、美味しい料理を差し入れに行きますわ」
キャロウェイさんまで涙目でそんな事を言う。
バーセルク兄上もそっと目じりを拭うと、我が家の資産をどんだけ使っても良い、腹一杯食べさせてあげてくれ。などと言っている。
いやだから、これ空想上のお話ですから!
分かっていますか皆さん?
しまったな…………漫画の影響と言う物を過小評価しすぎていたかも知れん。
小説と違って、誰でも気軽に読むことができ、絵のおかげで感情移入もしやすい。
前世でも、昭和の時代にマンガに影響された事件がどれほどあった事か。
確か殺人事件にまで発展した事すらあったはず。
コレはフィクションです、って言っても、理解しきれていない人が多数。
この漫画はお蔵入りさせた方が良いかと思ったのだが。
皆さん、この漫画の内容をそれぞれアレンジして描いてみたいと言い出す。
まあ、せっかくやる気も出ている事だし。
数も増えればどれが真実か分からなくなるだろう。
と思って許可を出したのだが。
どいつもこいつも悲劇的なストーリーばかり組み上げてくる。
ああ、そういや前世でも、一つ良いの物が出れば、それと似た様な物が氾濫したっけかなあ。
一つの泣きゲーがブレイクしたら、泣きゲーばかりになった時代もある。
ハーキャットさんは誰も彼もが自分を同情的な目で見てくるので、首を傾げているでござる。
ごめんよぉ、こうなるとは予想ができなかったですわ。
まあ、たぶん害はないから良いよね?




