第112階層
ああ…………どうしよう。
さすがにコレは言い訳のしようがない。
クレスフィズ皇子の件で女王陛下を責められないどころか、即離婚&慰謝料を請求されても文句は言えない。
ファリスさんからそれとな~く、女王陛下に伝てくれないかなと言ってみたが、にべもなく断られる。
今回の件はあまり大っぴらにする訳にもいかない。
貴族がメイドを孕ますこと自体は、まあ、良くあると言えば良くあるのだが。
それが既婚者の場合は、大抵、お金を握らせて放逐となる。
素性がしれない平民などが相手だと、子供は貴族として認められない。
特に、オキクさんは戸籍自体がどこにもない状態。
生まれて来た子がカーラードの氏をもらえないのはもちろんの事、クライセスの氏も継げない。
このままこっそり生んで、バーセルク兄上かボルヴェイン兄上のどちらかの子だった事にしてもらえないかな。
実は、二人の奥さん、キャロウェイさんとシオンさんにも、おなかに子供が居る事が判明したそうだ。
なので生まれる時期も近くなる。
生まれたのが双子だったとかにして、そのうち一人をオレが引き取ったという形にできれば一番だ。
それなら口裏を合わせておくだけで済む。
問題は、兄上達に浮気をした事を説明しないとならない。
…………気が重いなあ。
そうやって悩んでいたところ、オレの部屋にクレスフィズ皇子がやってくる。
今日は本物か?
そのクレスフィズ皇子が腰を下ろして口を開く。
「今日はサラサフィルの事で相談に来たんだ」
「サラサフィルさんがどうかしました?」
「イースさん――――彼女と子を作る気はないかい」
「は……?」
何を言っているのだ、この馬鹿皇子。
馬鹿は一人で、もうたくさんだぞ。
そして浮気で悩んでいる人に、さらに浮気を進めるのは止めてください。
あと、隣に座っているオキクさんがギリギリとオレの腕を締めつけてきて痛いです。
「皇帝陛下がね、帝国にも直系の子が欲しいと言っているのだよ」
「それなら帝国の貴族のどなたかにお願いすればよろしいのでは?」
「そうはいかないよ、サラサフィルが私の双子の妹だと打ち明けられないからね」
いや、普通に結婚して子供を産めばいいと思うんだが。
そんな、いつまでも影武者でいられる訳でもないだろうし。
「それに、サラサフィルさんの気持ちもありますし」
「サラサフィルが良いと言ったら考えてくれるんだね」
何やら食い気味にそう聞いてくる。
そうは、言っていませんよ?
いだだだ、なんでオキクさんが抓って来るのですか?
「イース様!」
その時、ファリスさんが胃の辺りを押さえながら走り寄って来る。
「実はお伝えしたいことがありまして!」
ふむ、何々……さっそく第一回の日本円ダンジョン連邦会議が開かれたそうだが、そこでとある議題が持ち上がった。
というのも、現在、この日本円ダンジョンは、カーラード王国、グランサード帝国の首都、という事になっている。
その他の国はあくまで間借りしている状態。
ただ、今回正式に国境が引かれたのなら、その場所については我らも首都として構わないかと。
なるほどな、それは確かに重大事項だ。
でもそんなに急いで走って来なくても良いんじゃね?
えっ、何? 私の胃を労わるためにも、あまり3人でお話しされないでくださいだって?
ファリスさんもクレスフィズ皇子とお話したいのかな。
うわっ、冗談です、そんな鬼の様な形相で見ないでください。
ふう、最近のファリスさんの沸点が良く分からない。
まさかファリスさんまで妊娠して情緒不安定になっている訳じゃなかろうに。
しかし、世界中の国の首都が集まるダンジョンか……
とんでもない場所になって来たな。
「それに伴い、各国の王族もこちらへ引っ越して来たいそうです」
「まあ、首都ですしね、王様が居ない訳にはいかないですよね」
首都にしたかったのが先か、自分たちが住みたかったのが先か、怪しいところだな。
わがカーラード王国は後者だしな。
帝国は前者だが。
「そこでですね、帝国からの提案で、各国の王族が集まるのを記念して、桜花騎士団の時の様にカーラード王国の旧王都でパレードを行わないかという話になったそうです」
ふむ、アクレイシス女王は何と?
オレがそう問いかけると、ファリスさんはオキクさんの方へ視線を投げかけながら、
「今回は病欠でお休みされていまして……」
と答える。
決定はオレに任せる、との事らしい。
まあ、良いんじゃないかパレード。
懇親会も大事な事だ。
ギスギスより仲良くしてもらえるに越したことはない。
互いに飲んで歌えば、理解も早まると言うもの。
皇帝陛下が提案されたとすれば、帝国さんへのヘイトも多少は収まりもするだろう。
言い出しっぺが帝国なら、準備の方も帝国が仕切ってくれるだろう。
うちは場所だけ貸出すれば良い。
城門もこないだ新調したばかりだ、それほどみすぼらしい訳でもなかろう。
前世の万博みたいに、いろんな国から訪れる人で街も潤う。
うん、良い事尽くめではないか。
「パレードかぁ、いろいろな催し物もあるのだろうね」
どうだね、一緒に回らないかと、クレスフィズ皇子から言われる。
そうですね、皇子との親睦も深めるべきですかね。
えっ、こっそりサラサフィルさんと入れ替わって来るから楽しめば良いって?
それは要らぬおせっか・・いだだだ。




